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協力者について

最終更新時間:2005年08月08日 11時06分15秒

原田宏二本会代表が、2005/8/3の「宮城県警報償費不正支出問題を考える緊急市民集会」で話す際の予定原稿を掲載致します。当日は、時間の関係で原稿どおりの話は出来なかったことを付け加えておきます。


協力者について

H17・8・3 仙台緊急集会

原田宏二

 1 警察の協力者とは

 道警本部長は、議会で警察の協力者について「警察の行う各種犯罪捜査活動において、犯罪の解決に直接・間接に結びつく情報を提供した人、聞き込み、張り込みなどの捜査活動に協力してくれる人」と定義している。こうした人への謝礼の支払い基準について「情報の価値、協力度合いなどによって、個々具体的に決定しており、決済権者は警察署長」と答えた。

(1) 協力者は存在するか

* 警察の現場には、協力者の定義等を明らかにした内規はなかった。 例えば、犯罪の被害者はどうか、110番通報した人はどうか、事件の目撃者はどうか、警察の許可対象業者はどうか、覚せい剤やけん銃の情報を提供する暴力団関係者はどうか、過激派の情報を提供する労働組合員はどうか、汚職情報を提供する公務員はどうか、協力とはどんなことを指すのか、などの多くの疑問が湧く。こうした定義を明確にしない限り、協力者が存在するかしないかの論議は意味がない。つまり、霞みたいな物の存在の議論をしている。

* こうした協力者と警察との関係は、現場の捜査員との個人的な人間関係で成り立っているのがほとんどである。したがって、秘密が漏れることによって危害が及ぶ恐れのある協力者は組織に報告されないことが多い。具体的な事件に関する情報の提供者は、捜査書類上も秘匿されるし、組織として裁判でも偽証させてまでも秘匿する。協力者は、組織が管理しているのか、個人が管理しているのかを明確にすべきである。

(2)謝礼は、支払われているか

* こうした、協力者に支払われているとされるのが謝礼である。その予算が、捜査費(国費)、捜査用報償費(県費)がある。先の道警内部調査によるとH10〜15年度の総額は、約22億7900万円、うち国費16億4900万円(72%)県費6億3000万円(38%)で国費は圧倒的に多い。そして、国費の裏金率41%県費61%である。国費と県費の区分は警察法にあるが、簡単に言うと、重要な事件と都道府県の境界を跨ぐ事件が国費、それ以外が県費である。警察には、金を使って仕事をするという発想自体がない。これまで協力者への謝礼のほとんどは捜査員の自腹で賄われてきた。

*道警の場合では,H12年までの捜査用報償費の裏金率は実に99.1%である。それがH13年度以降3.9%に激減している。これは捜査用裵雑費と称して、現場の捜査員に小額の捜査費をあらかじめ渡しておくとする制度を導入したためだと説明されている。これは、交通費、ケイタイの通話料、手土産代などに使われているようだ。

* まとまった金額の捜査用裵雑費以外の捜査費等はどうなっているのか。提供された情報の価値や協力者の協力度合い、金額を判断できるのは、現場の警察官であり、警察署長ではない。協力者に金を渡すタイミングも難しい。断られると大変なことになるケースもある。こうした実態に見合った内部規定はなかった。あるのは会計上の手続きの規定である。その決済権者が署長なのだ。現場で警察官が署長に報告して許可を取るのか。事実上は不可能である。現場の捜査員は、あらかじめ直属の上司に報告して現金を受け取っておき、あるいは立替払いをするのが本当だろう。そうした具体的な内部規定が必要なのだ。それはあるのか。この部分は依然としてヤミの中にある。

 2 捜査費等の予算はこのままでよいのか

こうした予算は、北海道をはじめ全国的に国費、県費共に予算額自体が激減しているなかで、執行額も減少している。 ここ宮城県の捜査用報償費の予算は、H10年度以降3600〜700万円で、その執行率は90%台であったものがH15年度は78%に激減している。H16年度はどうなのか。予算やその執行率の激減に関しての合理的な説明もない。

この6月には、仙台地裁が捜査用報償費に関して「相当部分に支払いの実態がなかったと推認する余地がある」とその実態に疑問を投げかけている。予算執行の責任者である知事が、県警の予算執行に疑問を持つのは当然であり、むしろ当たり前のことである。

さらに言うならば、この予算が果たして本当に必要なのか、今一度検討する必要があるのではないか。北海道では、前年度予算の決算が議会で不認定になった。各県ともに県予算が厳しい状況にある中で、不認定になるような予算費目は0査定から見直すべきではないかと思う。

 3 最近の捜査の現場

私は、この問題が発覚してから現場の捜査員から話を聞く機会が何度もあった。北海道だけではない。県によって時期と金額にばらつきがあるが、現場に何がしかの金が下りて来るようになったのは事実のようである。早い県でH13年度からである。ところが、現場では何が起きたか。元来、金を使って仕事をする発想がない現場に、上から突然金を使え使えと指示されるようになった。どうして使っていいか判らない。金を渡す相手がいない。諸雑費の使った後の処理が煩雑だ。使えないので金を返した。はした金をもらって後から問題になるのは嫌だ。金がなくても仕事はできる。そんな声がある。裏金疑惑の噴出に苦慮した上層部が、とにかく捜査費を使った実績を作ろうとしているが、現場は、金を使ったことも技術もない、相手もいない。明らかに現場は混乱しているのである。知事や監査委員が秘密を守る条件で現場の捜査員から事情を聞く機会を認めるとこれまでの現場の実態が全て明るみに出てしまう。県警には、そんな強い危惧感があると思われる。

 4 捜査上の支障とは

 警察の捜査費等や旅費の情報開示請求や今回の浅野知事の要求への警察対応の理由とされる「捜査上の支障〜協力者の保護」とはいったい何なのか。

(1) 裏金システム隠蔽に利用された捜査上の秘密

捜査が秘密裡に行われるべきことは、刑事訴訟法の規定からも当然である。現在、警察は、捜査協力者の身の安全を図るために、全ての協力者に関してどんな相手にも会計書類は開示できない、という主張をしている。協力者に直接確認するなどとんでもない。つまり、治安に維持のためには、たとえ、税金であっても警察の捜査活動に必要な経費は絶対的なアンタッチャブルの領域だとの主張である。この警察の主張が、真っ赤なウソであったことが明らかになったのは、警視庁の銃器対策課の捜査費、旭川中央署の捜査用報償費である。受け取ったとされた人物は、すでに死亡していたり、金を受け取った事実も協力した事実もなかったことが明らかになった。裏金システムの隠蔽に利用されたのが、捜査上の秘密というベールなのだ。

(2) 法益のバランス

 1歩譲って、協力者が存在し、謝礼も渡されているとしよう。その場合、旅費を含めて捜査活動の経費はアンタッチャブルでいいのか疑問が残る。税金の使途の透明性と治安維持とのバランスを取るための制度は存在している。予算執行の責任のある知事、国会や県議会、県の監査委員、会計検査院の制度、警察を管理する公安委員会である。こうした制度が健全に機能したなら警察の裏金システムがこうも長くは続くはずがないのだ。それがなぜか機能しない。となると、警察はやり放題ということになる。

今、全国で唯一、宮城県の浅野知事が予算執行の責任者としてその機能を発揮しようとしている。すると、警察庁長官が「言語道断」であると突然言い出した。都合が悪いことがあるからだろうと勘ぐられても仕方がない。

(3) 全ての協力者に危害が及ぶのか。

 協力者にもいろいろあることは話した。ところが、マスコミに登場する協力者も沢山いる。裁判の証人になる人もいる。私は、道警の覚せい剤捜査の協力者なる女性に直接面接したことがある。彼女は、実際に捜査に協力して謝礼を受け取っていた。ところが、別の名前で領収書を書かされたり、金額のない領収書を書かされたりした。裏金つくりに協力させられていたのだ。それが嫌になり私に告発してきた。彼女は監査委員にも話した。先日は、週刊誌に捜査費を受け取った男性が登場した。写真まで出ていた。関係者が見ればどこの誰かはすぐわかる。先日は、私の知り合いが交通事故を目撃して警察に話したらお金を貰った、びっくりしたと言っていた。話せる協力者はいるし警察に協力して危害が加えられると考える人だけではないのだ。仮に、危害が及ぶ恐れのある協力者が存在するとの主張が正しいのなら、厳格に区別するべきだろう。その責任は税金を使う警察側にある。そのためにも協力者は全て組織が管理するシステムを作るべきである。

(4)会計書類からは秘密は漏れない。

日本人の多くは、警察に協力するのは善良な市民の義務だと考えている人が大半だ。だから、これまでも金を貰わなくても警察に協力してきた。そうした人たちに危害が及んだと言う話は聞いたことがない。危害が加えられるのは金を警察から受け取ったからではなく警察に協力したことにあるはずだ。捜査の秘密が漏れるのは警察内部の関係者の口からであって会計書類から漏れたということは一度もない。そもそも、会計書類には抽象的な事件名と捜査費を渡した捜査員と情報提供者の名前が記載されているのみで具体的な協力内容は記載されてはいない。こうした書類は会計課の職員が保管しており関係のない職員が見ることはない。むしろ、捜査書類よりも管理は厳重である。捜査書類は、他の警察官も見る、検察庁にも、裁判所にも行く。私は、会計書類から捜査上の秘密がもれる恐れがあるとするのは警察のまやかしだと思っている。捜査上の秘密は裏金上の秘密に過ぎない。

 5 裏金システムはなくなるか

 何時から始まったかも不明な警察の裏金システムは、北海道、宮城県など多くの県で発覚した。その実態は解明されないまま、警察庁はこれを地方の問題として幕引きを図っている。警察をチエックするべき機関が機能せず、鉄のピラミッドとも言われる警察の病理体質は変わらない。今、警察は現場に金を使わせるという事実を作り、過去の事実を消し去ろうと躍起になっているのだ。ほとぼりが冷めたら再び裏金システムが動きだす条件は温存されていることを忘れてはならない。

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