最終更新時間:2024年12月18日 22時11分13秒
「明るい警察を実現する全国ネットワーク」は「Kさんの“職務質問”体験/警視庁蒲田警察署」を発表しました。https://www.ombudsman.jp/policedata/241218.pdf
Kさん(50代女性)はベテランの舞台大道具職人です。Kさんが警視庁蒲田警察署管内にあるホームセンターの駐車場で体験した“職務質問”の様子とその後の経過を詳しく紹介します。違法な職務質問の雰囲気を実感してください。
2024年11月20日夕方4時過ぎ、私は母の入院している病院から車で羽田空港近くのホームセンターコーナンに向かいました。私はホームセンター4階フロアに直結している駐車場に車を停めて、2階まで下りて母の部屋の暖房効率を上げる為のカーテンやカーテンレールなどを買って、一旦車の助手席に積み込み、今度は1階まで下りて母の部屋の床の補強用の木材などを買って、4階の駐車場に戻って車に積み込もうとしていると、4,50代くらいの男性警察官と20代くらいの新人に見える女性警察官の二人組が近づいて来て、男性警察官が「ちょっと良いですか?お姉さん、車にたくさん荷物を積んでいますね。何しに来たのですか?」と聞いて来ました。私は「まもなく要介護5になる母が、もう少ししたら退院してくるので、部屋の真ん中に介護用ベッドを入れるために、床を補強したりなどのリフォームをしないといけないので、材料を買いに来ました」と答えました。すると男性警察官がまるで犯人に聞くように「要介護5とはどのような状態なのだ?」と聞いてきました。私は「体が全く動かせない状態ですから、私一人で介護するには部屋の真ん中に介護用ベッドを置く必要があるのです」と言ってスマホに保存していた家のリフォームの写真を見せました。しかし、男性警察官は写真を見ようともしないで、「運転免許証を見せてください」と言いました。私が透明ケースの中に入れてある運転免許証を見せると、「ケースから出して見せてください」と言うので、出して渡しました。男性警察官はチラッと見ただけで、同行している女性警察官に手渡しました。女性警察官は両手で受け取っていました。男性警察官が「職業は何ですか?」と聞いて来たので、「舞台のセットを組むなどの大道具方や技術監督などをしています」と答えると、「最近もそうなのですか?」と聞いて来たので、「コロナ後は現場の仕事は少なく、大道具業界の為に技術書を書いて出版したりしています」と説明しました。男性警察官が「ノコギリは持っていますか?」と聞くので、「仕事柄、当然持っていますよ」と答えたら、「見せてください」と言われたので、車の後ろの扉を開けて積んである工具箱を見せました。男性警察官は「今日はプライベートで来ていますよね。プライベートのDIY(Do It Yourself)ではノコギリを携帯しているのは銃刀法違反です」と言いました。私が驚いて「私は40年くらい今の仕事をしていますし、ホームセンターにもよく来ていますが、今までそのようなことを言われたことは一度もありません」と言っても、「プライベートの時は家に置いて来ないとダメなんです。法律で決まっていますから。銃刀法でノコギリは刃物であると決まっています。所持している正当な理由が無く携帯していると銃刀法違反です」と言い張りました。私は納得できなかったので、「何条の何の法律ですか?都会の住宅事情では工具を家に全部下ろせません。家の前におろして盗まれたり何かの犯罪に使われたりしたら、お巡りさんが責任を取ってくれるのですか?」と聞いたら、「屁理屈言うな!法律で決まっているのだから納得してもらうしかない」と言いました。「私の会社の仕事で車を使っていて、都会の住宅事情で車を倉庫がわりにも使っています。だから車に工具は常に積んでいます。今まで買い物に来て一度も言われたことがないです。「そんなのおかしいです」と言うと、「車の所有権は誰ですか?」と質問を変えたので、「私です。会社に私の車を貸し出している形になっています」と答えました。すると今度は「ナイフを隠し持ってないですか?」と、また違う質問をして来たので、「今日は持っていません。仕事で使う工具なら車に常にたくさん積んでいます」と工具箱の引き出しの一つを開けて見せると、「見て良いですか?」と言うので、「どうぞ」と呆れながら言うと、男性警察官は引き出しの中身を乱雑に手でかき回してナイフを探していました。持って来てないのですから見つかるはずがないのにと思っていると、今度は私が首から下げていたスマホ用のポーチを指差して「隠し持ってないですか?」と聞くので、苛立ちながら「持っていませんよ!」と言ってポーチの中を見せると、今度は「運転席を見せてください」と言いました。呆れて「どうぞ!」と言うと、男性警察官は私の車の運転席を開けてゴソゴソと探し始めました。私が大声で「もう、免許証を返してください!」と言うと、女性警察官が私に歩み寄ろうとしました。免許証を返そうとしたのだと思います。すると男性警察官が無言で女性警察官を手で静止して、私の免許証の返却を阻止しました。どうしても私を逮捕したいと決めているらしく、不審者に見えるはずのない私の車の中をサイコパスの様な執念深さで捜索し続けていました。ナイフは最初からないのですから見つかるはずがありません。男性警察官はやっと諦めて、女性警察官が持っていた私の免許証を私に手渡しながら、「法律で決まっているのですから納得してもらうしかない」と言いました。私が「納得出来ません!」と答えると、再度同じ事を言ったので、「納得出来ません!」と言ってそっぽを向いて購入した材料を無言で車に積み込んでいたら、男性警察官は黙って立ち去って行きました。その後をついて行った女性警察官は振り向いて頭を下げて去って行きました。こうして私は逮捕を免れやっと解放されました。実際の時間は20分間くらいだったようですが、その時は1時間くらいの長さに感じました。
私は、車に材料を積み込んでから、買い物かごを持って3階にあるスーパーに向かいました。2人の警察官は私が最初に見かけた時と同じ駐車場中央の位置に立っていましたが、私が2階のスーパーで買い物をして4階駐車場に戻って来た時にはいなくなっていました。
家に帰る車の中で、あまりの理不尽さに怒りと悲しみと、母の退院後、またこの様な不当な職務質問をされて、いつもは工具箱に入っているロープを切断する為のナイフやベニヤやパンチカーペットを切る為のカッターナイフを所持していることに目を付けられて不当逮捕され連行されたら、私がつきっきりで介護しなければ生きられない母が死ぬことになりかねないと思うと恐怖を感じ、不安になって車の運転できる精神状態で無くなってしまいました。
私は家に帰り着くとすぐにホームセンターコーナンに苦情の電話を入れました。ホームセンターの方ではすぐにホームセンターの上の方の役職らしい人に代わって、「蒲田警察署が巡回をしたいと言って来たので、断れなくて駐車場の巡回を許可しただけなので、蒲田警察署に苦情を言ってください」と言われました。ホームセンターの人も「ノコギリやナイフを販売しているホームセンターでなぜそのような不当な職務質問をしたのか、不思議だ」と困っていました。
その電話のすぐ後に蒲田警察署に苦情の電話を入れました。電話に出た警察官は私がノコギリを所持していたのは正当な理由があったと理解できますと言ってはくれましたが、その日から不安で悪夢も見て眠れなくなってしまいました。
11月25日に行きつけの自律神経を整える治療院の先生に目が腫れている理由を説明すると、先生から「職務質問に関する苦情を聞いてくれる警視庁の部署にその警察官の名前を書いた手紙で苦情を言った方が良い」と言われました。私が「その男性警察官は3回ほど名前を名乗りましたが、その日は母の退院が決まってこれからどのように私一人で介護して行けば良いのか思い悩んでいた時だったので、人と会話することが辛くて名前まで覚えていません」と涙ぐみながら答えると、治療院の先生は私の体調を心配してくれて、蒲田警察署に電話をかけ、男性警察官の名前を問い合わせてくれました。電話に出た警察官は「蒲田警察署の警察官でなかったかもしれないし、日時と場所と警察官の特徴だけでは誰だったのか特定できないので教えられない」と言われてしまいました。
治療院の先生から「職質に関する苦情を聞く警視庁の部署に手紙を出した方が良い」というアドバイスを貰った私は、手紙を書く時間が取れなかったので、警視庁に苦情の電話を入れました。なかなか電話がつながりませんでしたが、やっと繋がって「不当職質の苦情を言いたい」と伝えると、厳しい口調の対応をされましたが、状況の説明をすると、「蒲田警察署から電話をさせますから電話番号を教えてください」と言われたので、教えました。するとその日の夕方頃に蒲田署から私の携帯電話に電話がかかって来て、「本日は担当者がいないので、明日電話します」と言われ、次の日の夕方4時少し前に私に職質をした上司だと言う男性警察官から電話がありました。その時私は母が入院している病院から車で帰宅する途中だったので、「1時間後に家に帰り着きます」と伝え、上司の警察官から「夕方5時に電話します」と言われ、夕方5時頃に電話を受けました。私が「今後、ホームセンターコーナンに買い物に行けるのでしょうか」と聞くと、上司の警察官は「今まで通り買い物に言って大丈夫です。上司として責任を持って指導します」と言ってもらえました。
上司の警察官の言葉に少し安心しましたが、私に職務質問をした男性警察官の執拗な態度からすると、この男性警察官はこれまでも私にしたのと同じようなことを多くの人にして来たのだと思います。私が今後再び同じ男性警察官の職質被害に遭わずに済むか不安はまだありますし、ほかの人が被害に遭うかもしれないと心配しています。
【解 説】
はじめに
場面場面でKさんは男性警察官にいいように翻弄され言いなりにされ劣勢に回っているようにみえますが、法的には全体を通して男性警察官のデタラメぶりが際立っています。
そこに2人の警察官がいること自体がすでにあやしいホームセンター4階の駐車場。犯罪取引の場所として警察が目を付けていたわけでもなく、ホームセンターから頼まれたわけでもないのに、4,50代の男性警察官の判断で新人らしい若い女性警察官を連れてきていることからして、最初から、人気の少ないところで一人でいる人に声を掛けて威圧的な態度で脱法的な職務質問をして軽犯罪法違反検挙ができればいいと考えていたのだと疑われます。周りにたくさんの買い物客がいるところで、Kさんが「納得できない!」を繰り返していたら、男性警察官はKさんの車に対して執拗な物色行為などできなかったでしょう。新人警察官にとっては百害あって一利なしです。
ノルマとしての職質検挙
日本の映画やドラマでは警察官に声を掛けられると誰もが当たり前のように対応しています。職務質問が法律に定められた一定の場合にしかできない職務行為だということを多くの人は知らないのではないでしょうか。Kさんもそんな一人だったようにみえます。しかし、これは大きな間違いです。警察官が職務質問できる場合は警察官職務執行法2条1項で規定されていて、警察官はこれに該当しない人に対しては職務質問できないのです。「警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者を停止させて質問することができる。」
要するに、犯罪に関係していそうな人に対してしか職務質問はできないという規定になっています。この規定を分解すると、
I 異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して
II 何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者
III 又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者
とありますから、〔I+II〕か〔I+III〕に当てはまる人だけが警察官の職務質問の対象になるのです。
Kさんはホームセンターに買い物に来ただけの人ですから、〔I+II〕にも〔I+III〕にも当てはまりません。男性警察官もKさんが〔I+II〕か〔I+III〕に当てはまるとはみていなかったはずです。だから、〔I+II〕か〔I+III〕に当てはまるのではないかという疑いをもった質問をしていません。男性警察官は違法な職務質問だとわかっていてKさんに声を掛けているのです。
Kさんは不当な職務質問だと頭の中で考えていたようですが、それをはっきり言葉にしていません。こういう時には、警察官に対して「これは警察官職務執行法2条1項で規定する職務質問ですか」と質問すればよいのです。警察官職務執行法2条1項という条文をはっきり言うことで、警察官は対象者が警察官職務執行法2条1項の条文を知っている人だと気づいて、いい加減なことは言えないという緊張感を抱くことになります。警察官が「そうだ」と答えたら、「私のどこが条文に当てはまるのですか」と問い質してください。軽犯罪法違反でとにかく検挙する(ノルマを挙げる)と決めている警察官でなければ、最初からKさんに声を掛けないか、掛けても、「失礼しました」とすぐに立ち去るはずです。警察官が警察官職務執行法2条1項の条文を言わず、対象者が条文のどれに当てはまるのかふつうに説明できなければ、何を言われても対応を断わることです。
一言答えればすぐに解放されるものだと思い込んで、簡単に答えるだけならいいだろうと軽く考えて対応してしまうと、何も犯罪の嫌疑があるわけでもないのに、あれも答えろ、これも答えろとなり、あれも見せろ、これも見せろとなり、終わりがありません。途中で断ろうとすると、後ろ暗くないなら答えていいはずだ、見せていいはずだと言い返され、後ろ暗くないから答えなくては、見せなければと、警察官のペースに戻ってしまいます。男性警察官は自分が期待しているもの、小型ナイフを見つけ出すまで終わりにする気はなかったのですから、Kさんがいくら「ありません」と言っても無駄でした。
警察官職務執行法2条1項の規定に自分は当てはまらないと自信のある人(ほとんどの人がこれに当たります)は、最初から職務質問に応じないことです。
運転免許証の提示要求
男性警察官はKさんに運転免許証の提示を求め、Kさんはこれに応じていますが、男性警察官には運転免許証の提示を求める権限がない場合なので、Kさんは応じるべきではありませんでした。ここもKさんが法律を知らないことに付け込まれています。
運転免許証の提示義務がある場合は道路交通法95条2項で規定しています。「免許を受けた者は、自動車等を運転している場合において、警察官から第67条第1項又は第2項の規定による免許証の提示を求められたときは、これを提示しなければならない。」
車に買った物を運び込んでいるKさんは「自動車等を運転している場合において」に当てはまらないので、67条1項や2項の規定をみるまでもなく、提示義務がありません。念のため、条文をみてみると、67条1項「警察官は、車両等の運転者が第64条第1項(無免許運転)、第65条第1項(酒気帯び運転)、第66条(過労運転)、第71条の4第3項から第6項(大型自動二輪車等の運転制限)まで又は第85条第5項から第7項(第2号を除く。)(運転制限)までの規定に違反して車両等を運転していると認めるときは、当該車両等を停止させ、及び当該車両等の運転者に対し、第92条第1項の運転免許証又は第107条の2の国際運転免許証若しくは外国運転免許証の提示を求めることができる。」これは無免許運転などをしている運転者の場合です。
同条2項「前項に定めるもののほか、警察官は、車両等の運転者が車両等の運転に関しこの法律(第64条第1項、第65条第1項、第66条、第71条の4第3項から第6項まで及び第85条第5項から第7項(第2号を除く。)までを除く。)若しくはこの法律に基づく命令の規定若しくはこの法律の規定に基づく処分に違反し、又は車両等の交通による人の死傷若しくは物の損壊(以下「交通事故」という。)を起こした場合において、当該車両等の運転者に引き続き当該車両等を運転させることができるかどうかを確認するため必要があると認めるときは、当該車両等の運転者に対し、第92条第1項の運転免許証又は第107条の2の国際運転免許証若しくは外国運転免許証の提示を求めることができる。」これは法律に違反して処分を受けたり人身事故などを起こしている運転者の場合です。
Kさんが運転免許証を提示しなければならない法的根拠を問えば、男性警察官は答えられませんでした。
車の中の物色
男性警察官は好きなようにKさんの車の中を物色しています。好きなように物色している点では、捜索範囲や捜索対象が裁判官の出す捜索差押許可状で限定されている場合よりはるかに勝手なことをしています。職務執行法2条1項は「質問することができる」と規定しているだけですから、この規定から当然には車の中の物色はできません。警察官職務執行法2条4項では「警察官は、刑事訴訟に関する法律により逮捕されている者については、その身体について凶器を所持しているかどうかを調べることができる。」と規定しています。Kさんは逮捕されていませんし、そもそも職務質問の対象になる人ではありませんから、男性警察官にはKさんの車の中を物色する権限はありませんでした。
男性警察官は工具箱の中を物色したり、運転席を物色したりする前にKさんに承諾を求めています。Kさんは「私の車の中を物色されなければならない法的根拠は何ですか。それがないのであれば、断ります」と言って、物色を断わるべきでした。そうすれば、男性警察官は物色することができませんでした。Kさんは男性警察官の物色行為が終わる頃になって「納得できない!」と言っていますが、本心では最初から嫌だったはずで納得していなかったはずです。このことを国家賠償請求訴訟で違法だと訴えると、理不尽な物色なのに、裁判所は「あなたは拒否しなかったんですよね。だから警察官は物色できたのではありませんか」と警察官の肩を持つ(物色は適法!)判断をします。裁判所も救ってくれないことが予測できることを考えれば、最初からはっきりと拒否することです。拒否することは犯罪ではないので逮捕されることはありません。
警察官のデタラメな法解釈その1/銃刀法違反
男性警察官は、Kさんの車に入れていたノコギリをみて、銃刀法違反だと断定しました。これまでどこでも警察官にそのようなことを言われたことがないKさんが驚くのは当然です。ノコギリが銃刀法で取締りの対象としている「刀剣類」に当たるかどうか考えてみる必要があります。銃刀法2条2項では、取締り対象となる「刀剣類」について規定しています。「刃渡り15センチメートル以上の刀、やり及びなぎなた、刃渡り5.5センチメートル以上の剣、あいくち並びに45度以上に自動的に開刃する装置を有する飛出しナイフ(刃渡り5.5センチメートル以下の飛出しナイフで、開刃した刃体をさやと直線に固定させる装置を有せず、刃先が直線であってみねの先端部が丸みを帯び、かつ、みねの上における切先から直線で一センチメートルの点と切先とを結ぶ線が刃先の線に対して60度以上の角度で交わるものを除く。)をいう。」ノコギリは刀、やり、なぎなた、剣、あいくち、ナイフ、どれにも当たりません。この規定からするとノコギリは銃刀法で規制対象にしている「刀剣類」に当たりません。だから、Kさんがノコギリを車に積んでいることは銃刀法違反として問題になりません。しかし、例えば静岡県警のホームページでは、刃体の長さが6cmをこえる「包丁、ナイフ、カッターナイフ、なた、おの、のこぎり等」の携帯が銃刀法で禁止されていると説明しています。
ノコギリが「刀剣類」に当たるとしても、Kさんが仕事に使うために仕事用の車に積んでいたことは違法なのでしょうか。このことについて銃刀法22条では次のように規定しています。「何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、内閣府令で定めるところにより計った刃体の長さが六センチメートルをこえる刃物を携帯してはならない。ただし、内閣府令で定めるところにより計った刃体の長さが八センチメートル以下のはさみ若しくは折りたたみ式のナイフ又はこれらの刃物以外の刃物で、政令で定める種類又は形状のものについては、この限りでない。」条文には「業務その他正当な理由による場合を除いて」と書いてあります。Kさんは舞台の大道具作りの仕事のための工具の一つとして仕事用に使っていた車に他の工具と一緒にノコギリを載せていました。これは「業務」です。工具類全体をみれば明らかです。大道具作りの仕事がない日が続いていたとしても、仕事が入ればすぐに対応できるよう、積んだままにしていることは当たり前のことで何ら異常ではありません。Kさんがこれまで警察官から犯罪だという指摘をされたことがないのは当然です。男性警察官の「銃刀法違反だ」発言は法律をわかっていての脅しです。
警察官のデタラメな法解釈その1/軽犯罪法違反
男性警察官の法率解釈のデタラメぶりは、せっかく法定刑の重い銃刀法違反(2年以下の懲役又は30万円以下の罰金)のノコギリを見つけた(はずな)のに、それでKさんを検挙しようとしないで、法定刑の軽い軽犯罪法1条2号違反(拘留又は科料)の小型ナイフを懸命に探している姿にも表れています。軽犯罪法1条2号「正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者」小型ナイフは「刃物」に当たります。Kさんはふだんは仕事用の工具の一つとして小型ナイフを車に載せていました。この日はたまたま自宅で使うため自宅に置いていました。男性警察官がこれを見つければ、軽犯罪法違反だと断定して検挙しようとしたでしょう。しかし、小型ナイフを持っていただけでは軽犯罪法違反にはなりません。「正当な理由」がないこと、「隠して」携帯していたことも条件になっているからです。Kさんは舞台の大道具作りの仕事のための工具の一つとして仕事用に使っていた車に他の工具と一緒に小型ナイフを入れているのですから、「正当な理由」がありますし、「隠して」携帯しているのでもありません。軽犯罪法違反には当たりません。男性警察官が「ナイフを隠し持ってないですか?」と質問した時に、「持っていない」と答えるのではなく、「ナイフを持っていることは犯罪なのですか」と質問し返すべきでした。そうすれば、男性警察官は軽犯罪法1条2号の条文を言い、小型ナイフが「刃物」に当たるからだと答えるはずです。そうしたら、Kさんは「正当な理由」があるし、「隠して」携帯しているのでもないと説明すればよいのです。そしてその説明から一歩も引かないことです。持っていることが適法な物を警察官が物色することなど許されるはずがありません。男性警察官は小型ナイフの物色を強行できなくなったはずです。
任意同行
それでも、小型ナイフが見つかれば、男性警察官は「言い分は警察署で聞くから警察署に来るように」と言ったに違いありません。これに応じると、警察署の取調室で軽犯罪法違反の自白調書を作られ、被疑者として顔写真の撮影、指掌紋の採取、DNAの採取も強く求められ、応じれば、警察は本人が死亡するまでこれらの個人データを使い続けられることになります。逮捕されてない被疑者の顔写真の撮影などは法律に規定がないので、任意で行うしかありませんから、自由に拒否できます。拒否するとなかなか解放してもらえませんが、応じてしまうと、後日、このときの不当で屈辱的な扱いを国賠訴訟で訴えても裁判所は「任意に応じたのだから問題はない」と相手にしてくれません。そういう先々の展開を考えると、Kさんが小型ナイフを車に載せていて男性警察官に軽犯罪法違反だと言われても、「犯罪ではない」で押しとおりて、警察署に行くことは断固拒否したほうがよいでしょう。
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