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愛媛 不服申立書

最終更新時間:2005年02月27日 17時54分40秒

愛媛県警の現役警察官である仙波敏郎さんが愛媛県警の長年にわたる裏金作りの実態を実名告発し、報復的な人事異動の処分を受けた事に対し、2005年2月23日、愛媛県人事委員会に対して人事異動の取り消しを求める不服申立書を提出しました。以下不服申立書。PDFはこちら


不服申立書

                      2005(平成17)年2月23日

愛媛県人事委員会 御中 

申立人    仙 波 敏 郎      印


第1 処分を受けた者

  • 氏  名    仙 波 敏 郎
  • 生年月日    昭和24年2月14日生

第2 処分を受けた当時の職及び所属

第3 処分を行った者の氏名

第4 処分の内容

拳銃の取り上げ及び愛媛県警察本部生活安全部地域課通信指令室(企画主任) への配置転換(以下「本件処分」という)

第5 処分を受けた日

  • 平成17年1月20日(拳銃の取り上げ)
  • 平成17年1月27日(配置転換)

第6 処分のあったことを知った年月日

  • 平成17年1月20日(拳銃の取り上げ)
  • 平成17年1月27日(配置転換)

第7 処分に対する不服の事由

 1 申立人の任用の経過

申立人は次のとおり,愛媛県警察官に任用されてきた。

  • 昭和42年3月,松山東高校卒業
  • 同年   4月,愛媛県警察学校入学(愛媛県巡査拝命)
  • 昭和43年3月,松山西警察署(住吉交番)
  • 昭和44年4月,機動隊
  • 昭和45年4月,松山東警察署(一番町交番他)
  • 昭和47年7月,   〃  (巡査部長昇任試験1次合格《学科》)
  • 昭和47年8月,西条警察署(駐在所)
  • 昭和48年7月,  〃  (巡査部長昇任試験合格)
  • 昭和48年9月,三島警察署(巡査長昇任《港交番主任》)
  • 昭和49年4月,  〃  (巡査部長昇任)
  • 昭和50年4月,  〃  (駐在所)
  • 昭和51年4月,東予警察署(駐在所)
  • 昭和54年8月,宇和島警察署(城北交番)
  • 昭和57年8月,今治警察署(駐在所)
  • 昭和58年8月,松山東警察署(駐在所)
  • 昭和62年8月,伊予警察署(砥部交番)
  • 平成元年 4月,   〃  (駐在所)
  • 平成3年 4月,八幡浜警察署(港交番)
  • 平成8年 4月,   〃  (駐在所)
  • 平成9年 4月,松山南警察署(石井交番)
  • 平成11年2月,警察本部生活安全部地域課鉄道警察隊(第3分隊長)
  • 平成16年4月,       〃         (第2分隊長)
  • 平成17年1月27日,愛媛県警察本部生活安全部地域課通信指令室(企画主任)

 2 捜査協力費領収書の作成依頼とその拒否

申立人は,県警から以下のとおり捜査協力費領収書の作成依頼を受け,これを拒否した。

ア 昭和48年7月に巡査部長の昇任試験に合格し,同年9月に三島署(港交番主任)に巡査長に昇任して勤務するようになった際,同署の会計課長から,3人分の住所(町名のみで番地のないもの)と氏名を記載したメモを渡され,約4×10cmの領収書(ザラ紙に手書きで3000円とのみ記入されていた)に書き写すように指示された。申立人が「これは何ですか。」と質問すると同課長は「組織のためだ。」と答えた。しかし,申立人は,裏金作りに使われる領収証であることがわかったので,「私文書偽造になるから書きません。」と拒否した。

イ 昭和49年3月,同様に会計課長から領収書の作成依頼があった。同課長に「この住所氏名はどうしたのですか。」と質問すると同課長は「電話帳から抽出したものだ。」と答えた。作成を求める同課長に対して申立人は「昨年9月にも断っています。私を犯罪に巻き込まないで下さい。」などと応酬してかなり激しい口論になった。同日,署長室に呼び出され,署長から「組織のためには交際費が必要なのに,君は協力しないのか。」と協力を求められた。申立人は,「他のことは協力しますが,犯罪はしたくありません。」と拒否した。署長は,退職前の上司である会計課長に対しての申立人の言葉が過ぎたことは注意したが,それ以上は協力を求めなかった。

ウ 昭和50年3月,同様に会計課長から領収書作成依頼があったが,拒否した昭和51年4月に東予署(駐在所)に転勤していたが,昭和52年3月,会計課長から同様に依頼され(メモ用紙などは上記同様),拒否した。

エ 昭和54年7月,同様の依頼があったが,拒否した。

オ 昭和54年8月に宇和島署(城北交番)に転勤になっていたが,昭和55年4月,会計課員から領収書の作成を依頼され,拒否した。

カ 昭和62年8月に伊予警察署(砥部交番)に転勤していたが,平成元年3月,会計課員から領収証の作成を依頼され,拒否した。

キ 平成3年4月に八幡浜署(港交番)に転勤となっていたが,平成4年3月,会計課員から領収書の作成を依頼され,拒否した。

 3 捜査協力費領収書作成拒否による不利益な取り扱い

申立人は,上記2の捜査協力費領収書の作成を拒否したこと等により,以下のとおり不利益な取扱を受けた。

ア 昭和48年10月に香川県善通寺市に所在する四国管区警察学校に入校し,同年12月に卒業したが,同校に愛媛から出向していた警備担当の警部教官から,「来年4月に警備課の作業班に来ないか」と声を掛けられていた。昭和49年12月,同教官から,「来年の人事異動で本部警備課作業班に来ないか」と電話があった際,申立人が「警備は嫌いですし,捜査費の領収書は書かないけどいいですか。」と言ったところ,その教官(警部)は「そうか。この話はなかったことにするからね」と言って電話を切った。

イ 昭和50年4月,三島署の港交番から駐在所に転勤(転居を伴う)となったが,これは,同年3月の拒否に対する報復として行われたものであった。

ウ 昭和54年8月,東予署(駐在所)から宇和島署(城北交番)に転勤となったが,これは,同年7月の拒否に対する報復として行われたものであった。

エ 昭和55年7月,警部補昇任試験一次(学科)は合格し,二次試験(面接)の際にも試験官から「学科試験は良く出来ている。」と言われた。試験終了後,次長(今の副署長)との間で,以下のようなやり取りがあった。

  • 次長「試験はどうだった」
  • 申立人「学科試験は良く出来ていると言われましたから,合格すると思っています」
  • 次長「君は通らんよ」
  • 申立人「どうしてですか」
  • 次長「君は領収書書いてないだろ」
  • 申立人「私は○特(マル特)ですか」(○特とは,特別対象者のことで,組織に対し批判的,反抗的な者,その他不祥事多発者等で,昇任や人事異動に特に注意を要する者のこと。誰が○特であるかは,管理職間の引継事項で,正式な規定に基づくものではない)
  • 次長「そういうことだ」
  • 申立人「それでは,試験は今後も通らんですね」
  • 次長「いやいや,君が領収書さえ書けば来年の昇任試験に間に合うよ」
  • 申立人「犯罪者が通って,犯罪を起こさないものが通らないということは間違っているでしょ」
  • 次長「君がトップになって変えれば良いじゃないか」
  • 申立人「犯罪を犯さないとトップになれないのなら,定年まで今の巡査部長のままで良いです」

オ 昭和57年7月,飲酒運転者による重傷事故の取扱に関して,宇和島署長ら幹部の不正を追求したところ,同署警備課長(同郷の先輩)から,「黙って転勤してくれないか」と再三再四の依頼があり,同年8月,今治署(駐在所)への異動が発令された。

カ 昭和58年4月に上記オの不正に関与した交通課長が今治署交通課長に異動してきたが,同年7月,本部勤務の警視から次のように言われた。

  • 警視「交通課長から,君が今治署にいると針のむしろだから,何とかしてくださいと泣きつかれたので,すまないがこの夏の異動で替わってくれないか」
  • 申立人「8月に異動すれば,小学校2年の次男は,早くも3つ学校を替わることになるのに,替わらないといけないですか」
  • 警視「君の希望する所へ異動させるから」
  • 申立人「今回は希望はないですが,異動を拒否しても替えるでしょ?次の異動は私の希望を聞いてもらいますよ」と異動をやむなく了解した。

キ 平成元年4月,伊予署の砥部交番から駐在所に転勤となったが,これは,同年3月の拒否に対する報復として行われたものであった。

 4 捜査協力費不正支出問題

ア 北海道警静岡県警福岡県警の捜査費不正支出が次々明るみに出ていたなか,平成16年3月15日,愛媛県警の中平常友総務室長は,愛媛県議会警察経済委員会において,「(愛媛県警の)会計処理は万全で,不正支出はないと確信している。」と断言し,捜査費の執行状況についても,「会計監察室(5人)が内部監査し,県の会計監査員による監査も行われている」と説明し,再調査する考えのないことを述べていた。

イ ところが,同年5月31日,大洲警察署の元警察職員が偽造領収書を使用した裏金作りの実態と捜査費の不正支出を告発するや,愛媛県警は急遽,大石亘総務室長を責任者とする調査班を編成し,内部調査を開始した。

ウ これに対しては,長年に亘り警察幹部が関与して組織的に行われてきた疑惑のある捜査費不正支出問題の解明を警察自身の内部調査に委ねたのでは,事実の全容解明は到底期待できず,証拠隠滅のおそれさえあるとの強い批判が沸き起こった。

エ さらに同年6月9日には,県警内部に警察庁の会計監査に備えた想定問答集まで作られていた事実も判明したが,愛媛県知事加戸守行は内部調査の結果を見守るという姿勢に終始した。

オ 内部調査の最終報告書は同年9月17日に提出されたが,その結果は,告発によって暴露された大洲警察署以外の警察署においては不正は認められず,また大洲警察署についても偽造領収書を使用した不正会計処理は認めたものの,捜査費の執行自体は捜査協力者との飲食代等として適正に執行されており,不正支出は認められなかったというものであり,到底県民の納得を得るものではなかった。

カ 同年10月6日,県議会は県民世論を背景に特別監査の実施を県知事に申し入れ,同年10月7日,県知事もやむなく県警の捜査費不正支出問題について特別監査を請求するに至った。

キ 特別監査は平成16年10月14日から開始され,平成17年3月末をめどに監査結果をまとめる予定とされているが,県警は,監査委員に対して捜査上の秘密保持や捜査協力者の保護を理由に会計資料の全面開示を拒否し,捜査員からの聞き取り調査に対しても上司を立ち合わせたり,会計課員を同席させるなど,非協力的な対応を繰り返している。そのため,監査は難航し,事案の真相解明は期待できない状況で推移していた。

 5 実名での記者会見を決意するに至った理由

上述した捜査協力費不正支出問題の経過を見て,申立人は,次のような理由から,実名での記者会見を決意するに至った。

ア 申立人は,32年前から捜査協力費不正支出のための領収書作成依頼を拒否してきたが,これは,警察官たるものが犯罪に手を染めるようなことは絶対にあってはならないという信念に基づくものであった。

イ また,警部補以下の現場の警察官がこのような不正の根絶を願っていることを知っていた。

ウ ところが,総務室長の県議会での上記答弁が,全く事実に反したものであり,愛媛県における民主主義の根幹をなす県議会の権威を踏みにじるものであると考えた。

エ 内部調査の結果が,余りにも実態からかけ離れた空疎なものであった。

オ 特別監査の結果に期待できないことが心配された。

カ 特別監査が終わってしまうと,この問題に終止符が打たれることとなり,警察の再生を図る機会が失われてしまうと思われた。

キ 領収書の作成依頼を拒否している現職の警察官は,申立人の知るところ県下で2名しかおらず,他の殆どの警察官は,自らの犯罪の発覚と不利益取り扱いを恐れて,告発に踏み切ることは出来ないだろうと考えた。

ク 申立人自身が仮に不利益な取り扱いを受けるとしても,申立人が捜査協力費不正支出問題の実態を明らかにしなければ,他にする人はいないのではないかと思われた。

ケ 私腹を肥やした警察幹部の責任を明らかにし,北海道警察の場合のように国や県に流用金を返還させ,警察の膿を出し切って,これから志を持って警察官を拝命する若い人が思う存分活躍できる警察にすべきであると考えた。

 6 記者会見妨害工作

ア 2005(平成17)年1月13日,申立人は,その上司である県警本部生活安全部地域課長(参事官)木下弘明(以下,「木下課長」という)から夕食に誘われ,その際,「総務室長の大石から,先程電話があって,『仙波がオンブズえひめの人と何かを発表するらしいから,止めてくれないか』と要請された。」と言われ,「もしおまえが発表するなら,事前にわしに連絡してくれ。」と言われた。また,その際,木下課長は,「近々(春の定期異動の)ヒアリングがあるが,おまえは(鉄道警察隊に)おるようにして,◎◎は出すけんのう。」と言っていた。

イ 同月19日午前10時30分頃,オンブズえひめが,マスコミ各社に対し,「20日午後1時30分から,愛媛弁護士会館において,捜査費の問題でオンブズえひめが記者会見を行う」旨連絡していたところ,その19日から20日の記者会見の直前にかけて,木下課長ら県警本部の幹部等から,20日午後1時30分から予定された記者会見について,露骨な妨害工作を受けたが,その中で,木下課長は,申立人に対し,「(春の定期移動の)ヒアリングでもおまえを鉄道警察隊に残すことにしたんだから,記者会見を止めてくれ。」と言った。

 7 記者会見における証言内容

2005(平成17)年1月20日午後1時30分から,愛媛弁護士会館において,申立人は,オンブズえひめのメンバーである弁護士5名とともに記者会見を行ったが,その際,申立人は概略次のような内容の証言を行った。

ア 申立人は,1973年(昭和48年)から1995年(平成7年)にかけて自分の所属した県内7署の全ての警察署で偽造領収書の作成を依頼されたことを明らかにし,偽造領収書は裏金作りの手段であったと証言した。

イ 偽造の手口も,電話帳から抜粋した住所氏名を書いたメモを会計課長らに渡され,そのとおりに領収書に書き写すものであったと具体的方法を明らかにし,同じ筆跡のものが多数あると疑われるので1回につき3枚がめどとされていたと証言した。

ウ さらに,これらは架空の捜査協力者をでっち上げたものであるから,捜査協力者への実際の支出は皆無であると証言した。

エ また,偽造領収書の作成は,警察官が昇任する際の「踏み絵」として半ば強制されており,これを書かない限り上級へ昇任することはできない仕組みとなっていると証言した。

オ 偽造領収書の作成を拒否し続けた申立人は,巡査部長から警部補へ昇任することなく30年を経過し現在に至っている。偽造領収書の作成を拒否し続けている警察官は,県内には申立人を含めて2名しかおらず,もう1名も巡査部長である。

 8 拳銃の取り上げと,配置転換の内示と辞令交付

申立人は上記7の記者会見の結果,以下の報復(本件処分)を受けた。

ア 平成17年1月20日午後4時頃に上記記者会見が終わったが,午後5時過ぎ,木下課長から申立人の携帯電話に電話があり,「申立人の拳銃はすでに同課長が預かった」旨連絡があった。申立人が,「明日からの勤務をするのに支障がある」と抗議すると,木下課長は,「自殺防止のためだ。」と答えた。

イ 同年1月24日午前9時30分ころ,上甲保男生活安全部長より同部長室に呼ばれ,「ただ今をもって通信指令室への人事異動を内示します。」と伝達された。申立人が異動の理由を質問すると,初めは「言う必要はありません。」と応答したが,なおも質問すると「3月に指令室員に退職予定者がいて手薄になるから即戦力として行ってもらいたい」と応答した。申立人が指令室の業務に全く精通していないこと,退職予定者は鉄道警察隊にも7名中,3名もいて応援がほしいのは鉄道警察隊であることを指摘すると,同部長は「あなたの記者会見での発言の中で,自殺を仄めかす内容が見受けられたので,自殺防止のためです。」と応答した。申立人は「記者会見では自殺をするといった事実はありません。有形無形の圧力に対して頑張ろうとする気持ちを表しただけです。自殺することはありませんから拳銃を返して下さい。」と求めたが,同部長は「もう決まったことだ。今から12時まで残務処理をして午後から指令室で勤務して下さい。」と指示した。申立人は「納得がいきません。」と答えた。

ウ 同日午後0時20分に再度,同部長室に呼ばれた。同部長は申立人に「それでは正式に通信指令室への人事異動の内示をします。」と告げた。「異動は何日付ですか。明日ですか。1ヶ月後ですか。」と質問すると「分からない。発令権者である木下参事官が休暇を取っているので,出勤してから指示します。」と答えた。「発令権者である木下参事官が不在なのに内示の発令ができるのですか。」と質問すると「木下参事官の上司である生活安全部長の権限により内示します。」と答えた。

エ 1月27日8時50分から,県警本部地域課において辞令交付式があり,木下課長から辞令「通信指令室企画主任を命ずる」を交付された。通常,辞令の交付の際に理由を告げることはないが,その際,同課長は7,8名の課員の前で,異動の理由を次のように申立人に告げた。?申立人は旅行等で県内各地の地理に精通しており,緊急配備箇所等の見直しに適任であること,?拳銃を取り上げているため,署外勤務(制服時)をさせることができないこと,?今までの申立人の言動から,自殺及び他人を傷つける可能性があると判断し,そういった行為に拳銃を使用するのを防ぐ必要があること。

 9 本件処分の不利益処分性と違法性

(1) 不利益処分性

地方公務員法49条は、職員は「その意に反すると認める不利益な処分」を受けたときは、人事委員会等に対して不服申立て等が出来る旨定めるが、その要件とされているのは、?職員の意に反して行われたものであること、?職員に不利益を与えているものであることの2つである。  申立人は当初から本件処分について異議をとなえており、本件処分が申立人の意に反するものであることは明白である。従って、以下には、本件処分が、「不利益な処分」に該当することについて述べる。同条にいう「不利益な処分」に該当するか否かは、当該処分が公務員の身分,俸給等において異動を生ぜしめるものであるか否か、客観的または実際的見地からみて、勤務場所、勤務内容等において何らかの不利益を伴うものであるか否かによって判断するのが相当であると解されている(最高裁昭和61年10月23日第1小法廷判決、労判484号7頁、判例地方自治34号22頁、神戸地裁平成14年9月10日判決、労働判例841号73頁)。

ア けん銃取り上げについて

  • ? 警察法67条は,「警察官は,その職務の遂行のため小型武器を所持することが出来る。」と規定して,警察官の拳銃の所持を認めている。
  • ? また,警察官は,制服を着用して勤務するときは,けん銃を携帯するものとされている(警察法施行令第13条,国家公安委員会規則13号第11条1号本文)。そして,その例外は,警察官が室内で勤務するとき(同規則11条1項1号),けん銃を携帯することが職務遂行上特に支障があると所属長が認めたとき(同9号)などの場合に限定される。
  • ? 警察官であるにもかかわらず,拳銃の所持が認められず,また,上記例外事由に該当しないのに,人事管理権者が警察官の意に反してけん銃を取り上げる措置をとることは,当該警察官の職務の遂行を困難にすることであり,著しく不利益な行為である。
  • ? 上記記載のとおり,申立人の記者会見の直後,申立人が保管するけん銃を取り上げる措置がとられたが,これは粟野県警本部長が自ら指示し,またはその承認のうえでなされたものである。
  • ? しかし,この措置は警察官であるにもかかわらず拳銃の所持を認めない措置であると同時に,前記例外事由のいずれにも該当しない違法な措置である。
  • ? およそ職務を遂行する警察官にとってけん銃を携帯することは職務上の義務であるだけでなく,第一線の現場で身体を張って暴力から市民の安全を守るという職業上の矜持の象徴であり,支えでもある。
  • ? 従って,警察官の職にある者に対し,人事管理権者がけん銃を一方的に取り上げることは,警察官の職務を遂行する適格性がないと評価して処遇する不利益な取り扱いといわなければならない。
  • ? 申立人は,1月20日から同月27日に辞令の交付を受けるまで,鉄道警察隊員として制服を着て職務に従事したが,申立人はただ一人,拳銃のない丸腰の状態で職務に従事しなければならなかった。
  • ? 申立人は拳銃を取り上げられ,現在通信指令室において勤務しているが,同室に勤務する警察官も各人拳銃を所持しており,愛媛県下2324名の警察官の中で,拳銃を所持していない警察官は申立人ただ1人である。
  • ? この措置を事前に何らの弁明手続を経ないで行うことはそれ自体,手続上,違法であるばかりか,捜査費不正支出問題について公益目的から報道機関を通じて県民に通報する行動をとった申立人に対して,申立人は警察官としての適格性がないと組織の内外に表明したに等しく,その行動に対する陰険な報復,見せしめをしたものと客観的に評価されるものである。
  • ? また,上述したように,1月27日の辞令交付の際,木下課長は,申立人に対し,「今までの申立人の言動から,自殺及び他人を傷つける可能性があると判断し,そういった行為に拳銃を使用するのを防ぐ必要がある」旨発言したが,これは,申立人の人格をあからさまに傷つける発言であって,到底許されるものではない。

イ 配置転換について

  • ? 上述のとおり、記者会見の直後にけん銃を一方的に取り上げ,警察官たる鉄道警察隊員としての職務の遂行を困難とさせたうえ,4日後の内示,7日後の辞令交付によって室内勤務に配転した経過から明らかなとおり,本件配転命令はけん銃の取り上げ措置と連動した不可分一体の措置としてなされたものである。
  • ? 1月13日ならびに19日に,木下課長は,申立人に対し,春の定期異動においても申立人は異動しない旨発言しているとおり,申立人の異動は当面ないことが県警内部においてまさに内定していたもので,春の定期異動に先立つ異例の本件配転命令が,申立人の記者会見に対する措置としてなされたものであることは明らかである。
  • ? また,鉄道警察隊の2月の勤務表は既に出来上がっており,申立人の鉄道警察隊での勤務が記載されたものが、木下課長によって1月15日頃には決済済みであった。他方,通信指令室の2月の勤務表も既に出来上がっており,当然のことながら,その勤務表には申立人の名前は存在しなかった。このことからも、申立人の異動が全く予定されていなかったことが明白である。
  • ? 通信指令室企画課主任の職は1月26日に急遽つくられたものであり,組織上の必要性・合理性がないにもかかわらず、申立人を異動させるために設けたポストである。
  • ? そのポストは,実際の仕事がほとんどないポストで,鬼北,内子,野村署が3月末に廃止統合されることから4月1日以降にその3署の無線機を引き揚げることが予定されているだけである。それ以外に,緊急配備する箇所を見直してもらうと言われているが,申立人には勤務の経験のないところばかりで,申立人が適材であるとは到底いえない。
  • ? 通信指令室の人員は十分足りており,他方鉄道警察隊の方は人員の補充を要する状態であった。
  • ? 申立人は、鉄道警察隊から通信指令室への配置転換によって、警乗手当や超過勤務手当などが不支給又は減額となり、少なく見積もっても月額約5万円が減額する見込みであるなど給与面においても多大の不利益を被っている。
  • ? 本件配置転換の理由について,県警本部の説明は、以下のとおり変遷しており、その必要性、合理性を欠くものである。
    • 鄯 県警本部は当初は「告発会見とは切り離して考えている。(中略) 所属長が本人の実績,経歴等を踏まえて適材適所,効率化を考えた。」と説明していたが,その後,県警本部がホームページなどで本件配転命令の理由を公表したところによると,第1に「本人の発言等や会見後の状況から,自傷のおそれのほか,県民と日常的に接触し,武器を携行して単独で職務執行を行う鉄道警察隊勤務に支障が生じるのではないかとの疑念が払拭できない」ことをあげるにいたった。しかしながら,県警本部の説明には,明らかな変遷がある上,自傷のおそれを認めるべき事情は存在しないし,「鉄道警察隊勤務に支障が生じる」云々は意味不明であると言わざるを得ない。
    • 鄱 また,上記ホームページでは,第2の理由として,会見における発言内容等に関する聞き取りをスムーズに行うことができ,本問題の解決にも寄与することをあげている。しかし,聞き取りのためには配転を必要とせず,現状のまま聞き取りをすることで支障は考えられない。「本問題の解決に寄与する」との点はこれも意味不明である。
    • 鄴 さらに,第3に,通信指令室において当面の業務量が増えていることをあげているが,前記のとおり通信指令室企画係の主任という職は平成17年1月26日に新設されたことからすると,申立人を原職から外すために新設したものにすぎない。実際,同時に新設された「企画課長補佐」の職にも人員の配置はなされていないのである。

ウ 本件処分の不利益性以上のとおり,本件拳銃の取り上げと通信指令室への配置転換は、申立人が行なった実名での捜査費不正支出問題の証言に対する報復として行なわれた一連のものであり、一体として評価されるべきものである。本件拳銃の取り上げおよび配置転換は、いずれもその必要性や合理性が認められない不合理極まりないものであり、これによって申立人は、警察官としての適格性を否定され、また配置転換先でまともな仕事を与えられることもない状態に置かれるなど、本件処分によって多大の精神的・身体的苦痛を受けまた給与が大幅に減額されるなどの不利益を被っていることは明らかである。

(2) 違法性

公務員の労働関係において任命権者は所属する職員に対して人事管理権の行使として職員に対する配転命令などを行うことができるが,その行使は合理的な裁量権の範囲内においてなされることを要する。合理的な裁量権の範囲を逸脱するものか否かは,当該処分に組織としての業務運営上,客観的な必要性・合理性が具備されているかどうか及びその程度,当該処分による本人の不利益の有無とその程度を考慮して判定されるべきである。しかるところ、上記のとおり本件拳銃取り上げおよび本件配転命令は、それがなされた経過・理由などいずれにおいても,県警の組織の業務運営上,その必要性・合理性はまったく見出すことは出来ないものであり,本件処分によって申立人は上記のような多大の不利益を被っている。他方、本件処分は,その経過等から客観的に判断すれば、申立人が行なった捜査費不正支出問題の証言に対する報復であり、申立人が警察官としての適格性がないとの評価を組織の内外に表明して報復,見せしめの意味を有するものであると合理的に推認されるものであり,これらを総合して判断すれば本件処分は裁量権の濫用として違法というべきである。

第8 不服申立の内容

申立人に対する拳銃の取り上げと愛媛県警察本部生活安全部地域課通信指令室(企画主任) への配置転換の取消を求める。

第9 求める審理方法の種類

公開の口頭審理を求める。

第10 処分説明書が交付されなかった経緯

申立人は、本年2月2日に愛媛県警察本部長に対し、処分理由説明書の交付を求めたが、不利益処分ではないとして、同説明書は交付されなかった。

第11 添付資料

 1 辞令書(県警察生活安全部地域課長木下弘明作成)

 2 処分理由説明書を交付しないという内容の文書(愛媛県警本部長作成)

 3 代理人選任届及び委任状             

以上

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