文書通信交通滞在費

国会議員個人に対して支給される文書通信交通滞在費(1人当たり月額100万円)について、 (1)使途基準を明確に定めること(2)使途報告書ならびに領収書を各議院に提出した後、WEB等で市民に容易に公開すること(3)余った際は各議院に返還すること を求めています。
国会旧文通費 2025年8月支給分から領収書の写しを議長に提出も、課題山積
100万円。毎月、無税。しかも領収書は国民には見せない——
こんなお金が国会議員に支給されてきました。
つい先日まで、旧文通費(文書通信交通滞在費、現 調査研究広報滞在費(調研費))は「領収書を国民に公開しなくてよい」仕組みでしたが、ようやく国民が領収書を見ることができるようになります。
しかし、課題も多々あります。
国会の透明性は進んだように見えて、実は形だけ。①領収書ネット非公開、②基準の甘さ、③違反時のペナルティなし——これが現実です。

★「調研費」法改正の概要
「国政に関する調査研究、広報、国民との交流、滞在等の議員活動を行うため」として、国会議員には毎月100万円、歳費とは別に無税で支給されています。
2025年7月までは報告書、領収書の写しをどこにも提出する必要がなく、仮に余ったとしても返還義務はありませんでした。

国民の批判を浴び、「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律」が改正され、国会議員は調研費の報告書ならびに領収書の写しを2025年8月支給分から、各議院議長に提出することになりました。
2025年12月末に締め、2026年5月末までに収支総括表と支出項目別金額の内訳、1万円超の一覧を議長に提出し、2026年11月末までにネットで公開します。
領収書は情報公開請求が必要です。
法律、規程概要、規程は以下です。
・国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律
・調査研究広報滞在費の使途の報告及び公開並びに残額の返還に関する規程 概要
・調査研究広報滞在費の使途の報告及び公開並びに残額の返還に
 関する規程
(令和7年5月15日官報 号外107号)

①領収書ネット非公開 — 市民は事実上アクセス不可

領収書は提出されても、ネットで見られない——つまり、市民の監視は事実上不可能です。

★公開度の概要をまとめました。
・毎年12月末で締め、翌年5月末までに報告書、領収書を議長に提出
・報告書には、総額ならびに項目別で1万円超の支出先氏名、住所、目的、金額、年月日を記載(人件費を除く)
・領収書を徴しがたい事情がある支出は支出目的書でも可
・報告書は11月末までにネット公開(3年間のみ)
・領収書等の写しは、情報公開請求が必要(1万円超、1万円以下を明記) 
 原則30日以内に開示。事務処理上困難な特別な事情があるときは31日以上60日を超えない範囲で延長
・写しを受ける場合、事務総長が定める費用が必要
・残額は返還
・情報公開請求は、報告書が公開された日から3年間請求可能 1人につき300円の手数料

★領収書等開示の詳細は「今後決める」
 分からない点を2025年7月24日に衆議院庶務部議員課に電話で聞きました。
・規程第12条「写しの開示は、各議院の事務総長が定める方法」の詳細はいつ決まるのか?
 →2026年11月末までには決める
・領収書等の写しは電磁的記録で提出されることとなっているが、紙で開示か?電磁的記録で開示か?
 →決まっていない 
・だいたい領収書の枚数は何枚あるか?
 →事務局ではわかりかねる。ただ、任意ですでに公開している議員がいるので参考になるのでは
・支出項目別金額の内訳、経常経費(人件費を除く。)の内訳などは、紙をスキャンして提出するのか?エクセルで提出するのか?
 →電磁的記録で提出することになっているが、スキャンかエクセルかは決まっていない
・使途項目の具体的な内容について、詳しいことが分かるのはなにかあるか?
 →令和7年5月15日官報 号外107号 PDF版に少し詳しく記載がある

★参議院は「公開システム」を公募開始
 その後、参議院が公開システムを入札にかけていたことが判明しました。
 仕様書によれば、報告書及び領収書等のデータはネット経由でシステムに入力し、3年間はシステム内で保存するとのこと。
 参議院は、報告書10ページ、領収書月20枚程度を想定しているようです。
 ・令和7年8月4日 参議院
  参議院調査研究広報滞在費使途公開システムの設計・構築・導入及び運用・保守業務(一般)(PDF)  
  調達ポータル
 

★地方議会「政務活動費」は領収書までネット公開が約69%
 地方議会議員に支給される、調査・研究にしか使えない「政務活動費」は、都道府県・政令市・中核市全129議会中27都府県、13政令市、49中核市の合計89議会(約69%)がすでに領収書等をネット公開しています。
 (2024年8月 全国市民オンブズマン連絡会議調べ)
 どうして、国会では領収書をわざわざ情報公開請求しないと見ることができないのか、理解に苦しみます。
 

★衆参合わせて領収書は年間約17万枚以上?少なくとも年間約21万円かかる
 参議院の想定では、1国会議員あたりの領収書は年間約20×12=約240枚です。
 参議院議員が約250名なので、年間約60000枚の領収書になる計算です。
 衆議院は約465名なので、約111600枚の領収書になる計算です。
 すでに電磁的記録として各議長が保有する合計約17万1600枚の領収書を、わざわざ国民が情報公開請求しないといけないのでしょうか。
 (費用については現時点では不明です。開示手数料が1人当たり300円かかるということなので、最低でも年間(250+465)×300=214,500円はかかります。
  仮に紙でしか開示されないとした場合、年間約171万円以上かかる計算となります!)

税金の使途をチェックできないということは、不正や浪費が見逃されるということです。

②基準の甘さ — 支出チェックはザル

「規程」では「人件費」「水光熱費」など10項目に分かれていますが、それぞれ1-7行のみの解説にとどまっており、事実上何にでも使えてしまいます。
★使途の概要をまとめました。
・選挙運動に充ててはならない
・国会議員が、その者が代表者である資金管理団体に対し調査研究公報滞在費を寄附(資金移動)した場合においては、当該資金管理団体が調査研究公報滞在費を充ててした支出も含めて報告書に記載しなければならない
・使途基準は各項目数行のみ。

これは私たちの税金です。透明性は形だけです。
 

★政務活動費「使途基準マニュアルランキング」を調研費であてはめると?
全国市民オンブズマン連絡会議は、2024年8月に「政務活動費使途基準マニュアルランキング」を発表しました。
 身内に支出していないか、実費にしているか、飲食は許さないか、などを評価項目としました。
今回、調研費に対して上記「政務活動費使途基準マニュアルランキング」の評価項目をあてはめてみます。
2025年10月25日(土)26日(日)、ドーンセンター(大阪)で開催する、第32回全国市民オンブズ 大大阪大会で発表予定です。

③ペナルティなし — 違反してもお咎めなし

上記法律、規程に決定的に足りないのは、「使途基準違反」をしたらどうなるかが全く記載がないことです。

政務活動費は、どの議会でも「必要に応じ議長の調査を行う」「議長が必要があると認めるときは、是正等の措置を講じるよう指導、勧告、措置を命ずることができる」「首長は返還を命じることができる」とあります。
 ・政務活動費 マニュアルリンク集
地方自治体の違法・不当な支出については、市民は住民監査請求・住民訴訟という手段で返還を求めることができます。
残念ながら、国の支出に対しては、国民は返還を求める法的な対応を行うことができません。
※参考:全国市民オンブズマン連絡会議 「国民訴訟」創設を! 

法律は変わっても、国会の透明性はまだ“形だけ”。本当の改革は、これからです。
上記課題①②③は、法改正・規程改正をしなくてもよいもの、規程改正を要するもの、法律改正を要するものがあります。
今後、全国市民オンブズマン連絡会議として国会両院に働きかけを行う予定です。

★あなたにできること
地方議会の透明性は、声を上げた市民が動かしてきました。
このままでは3年間しか記録が残りません。次はあなたの番です。
①地元の国会議員に、法・規程改正をするか聞こう
②本記事を拡散しよう
③全国市民オンブズマン連絡会議にカンパを
 今後公開のための働きかけや、可能であれば領収書開示請求に使います。

【参考】
・参議院の動き
 調査研究広報滞在費に係る有識者からの意見聴取
 
・令和6年11月22 日 国立国会図書館 調査及び立法考査局 政治議会調査室・課
  調査報告書 調査研究広報滞在費の歴史的経緯
 

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全国市民オンブズマン連絡会議 文書通信交通滞在費ページ
中日新聞に旧文通費問題についてインタビューが載りました
22/7/17(日)中日新聞 田内建一
国会議員 旧文通費問題 国民の税金 使途を示せ
・市民目線でチェック
・訴訟制度の新設必要
全国市民オンブズマン連絡会議事務局長の新海聡弁護士と、事務局の内田隆のインタビューが掲載されています。

千葉県オンブズ 両院議長に旧文通費制度の再検討を求める申入れ
22/5/26に、千葉県市民オンブズマン連絡会議は衆参両院議長に対し「調査研究広報滞在費(文書通信交通滞在費)制度の再検討をするよう申し入れを行いました。

<要望事項>
1 使途基準を法律で明確に定めること。
2 領収書の写し、出納簿、活動報告書など収支の証拠書類を電子データで議長に提出すること。
3 議長は提出された電子データを国民に公開すること。
4 政党、政治団体、公職の候補者への寄付を禁止すること。
5 年度ごとに残余は国庫に返還すること。
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・【動画】あなたは、国民の88%が改善すべきと考えている国会議員の特権を知っていますか?
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千葉県市民オンブズマン連絡会議

国会議員 「文書通信交通滞在費」制度 各政党に制度再検討を求める申入れ

「全国市民オンブズマン連絡会議」は、国会議員に支給される文書通信交通滞在費が調査研究広報滞在費に制度改正されたことを受け、「『文書通信交通滞在費』制度の再検討申入書」を2022年5月6日付けで衆参議長、各政党党首あてに郵送しました。
http://www.ombudsman.jp/data/220506.pdf


「文書通信交通滞在費」制度の再検討申入書

2022年5月6日 
全国市民オンブズマン連絡会議
衆議院議長 細田博之殿 参議院議長 山東昭子殿 
各党 党首 様

1 私たちは2002年から、地方議会議員に支給される政務調査費(後の政務活動費)(以下総称して「政務活動費」と言います。)について、情報公開度の調査や住民監査制度、住民訴訟などを通じて使途の透明化と支出の適法性のチェックを継続してきました。2002年には、使途公開によって議員活動が制約される、と言う理由で、領収証の公開すら、ほとんどすべての地方議会で実施されていませんでしたが、現在は全ての都道府県議会において領収証が開示されるほか、開示の程度にバラツキがあるとしても、使途情報も公開されています。ところが、国会議員個人に対して支給される文書通信交通滞在費(1人当たり月額100万円)、会派に対して支給される立法事務費(1人当たり月額65万円)については、過去に目的外使用や使途不明金、繰越金が問題視され、その不透明さが国民の批判の対象となっているにも関わらず、領収書の開示も使途の報告も開示されず、日割り計算もしないまま満額が支給される運用がまかり通っていました。当然、目的外使用への罰則もありません。

2 ところが、在職期間が1日でしかない議員にも1ヶ月分100万円が支給されることが明らかになった2021年10月31日の第49回衆議院議員総選挙後、文書通信交通滞在費は議員の特権でしかないのではないか、という厳しい批判が寄せられました。当団体も、文書通信交通滞在費の透明性と使途基準を明確化することを求め、2021年12月6日付けで両院議長と各政党党首に「文書通信交通滞在費 使途基準明確化、領収書添付と使途公開の義務づけを求める申入書」を送付しました。2022年4月15日になってやっと改正法が可決成立しましたが、内容は名称を「調査研究広報滞在費」にあらためるほか、新人議員のみ日割り計算にするという改正に止まりました。しかし私たちは、これが前述の国民の批判に応えたものと見ることは,到底できません。

3 そもそも、文書通信交通滞在費の問題の根幹は、使途の不透明さと表裏の関係にある、本当に必要な経費なのか、という国民の疑義です。これにより、国民は党派を問わず、国会議員に対する不信感を持ち、この不信感が政治的無関心や投票率の低下につながっていく、と考えます。
 すなわち、この制度に対する国民の疑念は、新人に1ヶ月分支給するような制度がけしからん、というところに中心があるのではなく、「そもそも文書通信交通滞在費は必要なのか」というところにあり、経費を受領している国会議員自身にその説明を求めているのです。こうした国民の疑義に応えないままの改正は、政治不信を助長するだけであると考えます。

4 一部報道では、各党は今国会中に使途基準や公開、返還について結論を出す意向ということですが、私たちは、文書通信交通滞在費の支出目的の再検討と検討結果を踏まえた使途基準の明確化を定めることこそが、それぞれの国会議員が今おこなうべき説明責任にあたると考え、再度、以下の申入をする次第です。

(1)本来許されるべき支出を再検討し、1ヶ月100万円の支給が相当と考える理由を国民に説明すること。
(2)(1)の検討結果に基づいて明確な使途基準を作成、提示すること。
(3)各議員において使途報告書を作成するとともに領収証を保管し、現金出納簿を作成すること。
(4)使途報告書、現金出納簿、領収書を各議院に提出し、提出資料をWEB等で市民に容易に公開すること。
(5)余った際は各議院に返還すること。
以上

話題の国会議員 文書通信交通滞在費(文通費)とは? 簡単におさらい(動画)

国会議員に支給される1人当たり月額100万円のお金(税金)である文書通信交通滞在費(文通費)について、現状と国会での議論の様子を動画でまとめました。

国会議員 文書通信交通滞在費 各政党に領収書公開等を求める申入れ 郵送

「全国市民オンブズマン連絡会議」は、現在国会で制度改正をしようとしている文書通信交通滞在費に関し、「使途基準明確化、領収書添付と使途公開の義務づけを求める申入れ書」を2021年12月6日付けで衆参議長、各政党党首あてに郵送しました。
https://www.ombudsman.jp/data/211206.pdf


文書通信交通滞在費 使途基準明確化、領収書添付と使途公開の義務づけを求める申入書

2021年12月6日 
全国市民オンブズマン連絡会議

衆議院議長 細田博之殿 参議院議長 山東昭子殿
各党 党首 殿

第1 要望の趣旨
 (1)文書通信交通滞在費について、使途基準を明確に定めること
 (2)文書通信交通滞在費の使途報告書ならびに領収書を各議院に提出した後、WEB等で市民に容易に公開すること
 (3)文書通信交通滞在費が余った際は各議院に返還すること

第2 要望の理由
私たちは、税金の無駄使いや行政の不正を追及する市民団体の連絡組織です。
さて、私たちは長年、地方議会議員に支給される「政務調査費・政務活動費」の使途の透明化と支出の適法性を求め続けてきました。
地方議会は、国会の会派に対する立法事務費を参考にして、平成13年から政務調査費を導入しました(その後平成25年に政務活動費と名称を変更)。制度が始まった平成13年には、都道府県議会・政令市議会で領収書を一部でも議会に提出・公開しているところは皆無でしたが、長年の地方議会への働きかけ・裁判の結果、平成27年から全ての都道府県議会・政令市議会で1円以上全ての領収書が議会に提出・公開されるようになりました。領収書については紙での公開だけでなく、平成23年函館市議会を皮切りにWEBでの公開も始まり、令和3年5月現在、47都道府県・20政令市・62中核市の合計129議会中、WEBで領収書を公開しているのは、22都府県・13政令市・45中核市の合計80議会(62%)にものぼります。
また、領収書や活動報告書等の公開に伴い、地方自治法の趣旨に反する支出が多数判明したため、各地の市民は返還を求める住民監査請求・住民訴訟を起こしてきました。これまで少なくとも10億円弱の政務調査費・政務活動費が住民監査請求で返還勧告をされ、また各地で少なくとも130件を超える住民訴訟が起こされています。
一方、国会議員個人に対して支給される文書通信交通滞在費(1人当たり月額100万円)、会派に対して支給される立法事務費(1人当たり月額65万円)については、領収書の各議院への添付義務も使途の報告義務も公開義務もなく、目的外使用への罰則もありません。過去複数回にわたり、目的外使用や使途不明金、繰越金が問題視されました。
同じ議員の「調査研究目的」のための税金にも関わらず、国会議員と地方議会の扱いがあまりにも違いすぎます。平成13年に「衆議院改革に関する調査会(瀬島龍三会長)」が『衆議院改革に関する調査会答申』を出し、「立法事務費及び文書通信交通滞在費の使途を明らかにする」と提言しましたが、以降20年間全く手がつけられていません。
現在、国会各会派は文書通信交通滞在費について日割り計算ができるように制度を見直そうとしていると報道されています。しかしながら、地方議会同様、国会議員に対する文書通信交通滞在費についても、使途基準を明確にした上で、領収書を添付して各議院に提出し、余れば各議院に返還し、領収書や活動報告書等をWEB等で市民に容易に公開する制度を創設すべきです。仮に非公開部分があるとすれば、当該部分のみ行政機関情報公開法に準じた基準で非公開にすべきです。
地方議会では、政務活動費を用いた調査研究の内容が透明化されることで、議会での議論が活発になりました。国会でも、まずは文書通信交通滞在費に関して透明化を図り、さらなる国会での論戦の活発化を望みます。
以上


「文書通信交通滞在費」と「政務活動費」比較してみました。
https://www.ombudsman.jp/data/211206-1.pdf