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国会議員 「文書通信交通滞在費」制度 各政党に制度再検討を求める申入れ

「全国市民オンブズマン連絡会議」は、国会議員に支給される文書通信交通滞在費が調査研究広報滞在費に制度改正されたことを受け、「『文書通信交通滞在費』制度の再検討申入書」を2022年5月6日付けで衆参議長、各政党党首あてに郵送しました。
http://www.ombudsman.jp/data/220506.pdf


「文書通信交通滞在費」制度の再検討申入書

2022年5月6日 
全国市民オンブズマン連絡会議
衆議院議長 細田博之殿 参議院議長 山東昭子殿 
各党 党首 様

1 私たちは2002年から、地方議会議員に支給される政務調査費(後の政務活動費)(以下総称して「政務活動費」と言います。)について、情報公開度の調査や住民監査制度、住民訴訟などを通じて使途の透明化と支出の適法性のチェックを継続してきました。2002年には、使途公開によって議員活動が制約される、と言う理由で、領収証の公開すら、ほとんどすべての地方議会で実施されていませんでしたが、現在は全ての都道府県議会において領収証が開示されるほか、開示の程度にバラツキがあるとしても、使途情報も公開されています。ところが、国会議員個人に対して支給される文書通信交通滞在費(1人当たり月額100万円)、会派に対して支給される立法事務費(1人当たり月額65万円)については、過去に目的外使用や使途不明金、繰越金が問題視され、その不透明さが国民の批判の対象となっているにも関わらず、領収書の開示も使途の報告も開示されず、日割り計算もしないまま満額が支給される運用がまかり通っていました。当然、目的外使用への罰則もありません。

2 ところが、在職期間が1日でしかない議員にも1ヶ月分100万円が支給されることが明らかになった2021年10月31日の第49回衆議院議員総選挙後、文書通信交通滞在費は議員の特権でしかないのではないか、という厳しい批判が寄せられました。当団体も、文書通信交通滞在費の透明性と使途基準を明確化することを求め、2021年12月6日付けで両院議長と各政党党首に「文書通信交通滞在費 使途基準明確化、領収書添付と使途公開の義務づけを求める申入書」を送付しました。2022年4月15日になってやっと改正法が可決成立しましたが、内容は名称を「調査研究広報滞在費」にあらためるほか、新人議員のみ日割り計算にするという改正に止まりました。しかし私たちは、これが前述の国民の批判に応えたものと見ることは,到底できません。

3 そもそも、文書通信交通滞在費の問題の根幹は、使途の不透明さと表裏の関係にある、本当に必要な経費なのか、という国民の疑義です。これにより、国民は党派を問わず、国会議員に対する不信感を持ち、この不信感が政治的無関心や投票率の低下につながっていく、と考えます。
 すなわち、この制度に対する国民の疑念は、新人に1ヶ月分支給するような制度がけしからん、というところに中心があるのではなく、「そもそも文書通信交通滞在費は必要なのか」というところにあり、経費を受領している国会議員自身にその説明を求めているのです。こうした国民の疑義に応えないままの改正は、政治不信を助長するだけであると考えます。

4 一部報道では、各党は今国会中に使途基準や公開、返還について結論を出す意向ということですが、私たちは、文書通信交通滞在費の支出目的の再検討と検討結果を踏まえた使途基準の明確化を定めることこそが、それぞれの国会議員が今おこなうべき説明責任にあたると考え、再度、以下の申入をする次第です。

(1)本来許されるべき支出を再検討し、1ヶ月100万円の支給が相当と考える理由を国民に説明すること。
(2)(1)の検討結果に基づいて明確な使途基準を作成、提示すること。
(3)各議員において使途報告書を作成するとともに領収証を保管し、現金出納簿を作成すること。
(4)使途報告書、現金出納簿、領収書を各議院に提出し、提出資料をWEB等で市民に容易に公開すること。
(5)余った際は各議院に返還すること。
以上