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平成19年度包括外部監査の通信簿 結果発表

“全国市民オンブズマン連絡会議 
包括外部監査評価班
代表 弁護士 井上 善雄

1.「通信簿」の目的

 平成11年度の地方自治法改正により、中核市以上の自治体に、弁護士や公認会計士など「外部監査人」による「包括外部監査」が義務づけられた。 この外部監査人が市民のための自治体の「お目付役」となれるのか、それとも従前の監査委員の「屋上屋」や「税の無駄遣い」になってしまうのか、それを見る市民自身の「監査」の力によるものである。全国の自治体の財政をはじめとする行政の刷新と改善にどれだけ役立つのかを注目し、市民オンブズマンによる通信簿を作成した。

2.「包括外部監査評価班」について

全国市民オンブズマン連絡会議に加盟する各市民オンブズマンのメンバー有志12名。弁護士・税理士らで構成している。

3.評価対象

“平成19年度包括外部監査実施全自治体 113自治体(47都道府県、17政令市、35中核市、
  14条例制定自治体)の全監査報告書 153テーマ”

4.評価の手順と基準

包括外部監査は地方公共団体の事務の①真実性、②適法性、③有効性、④効率性、⑤経済性の調査と充実度の観点から監査することになっている。それら監査報告書を、相対比較、対象の難易度を含め、批判的に評価し、かつ各監査報告書を複数人が確認し、評価の客観化に努めた。そして、共通の対象テーマごとに相対比較も行った。

優れた監査報告書を選抜して「優秀賞」を贈ること、逆に「欠点や是非改善してほしい」監査には、「改善要望」を出すことにした。そして、有用性に注目した「活用賞」という評価もした。

5.優秀賞・活用賞・改善要望一覧

優秀賞7自治体7テーマ、活用賞20自治体21テーマであり、一方、改善要望15自治体24テーマであった。
青森県の倉成 磨公認会計士、岡山県の河村英紀弁護士 両監査人のものにオンブズマン大賞を贈る。



本年も無事「2007年度包括外部監査の通信簿」が完成致しました。
(a4版 198ページ)
購入希望者は、下記申込書に記入してfaxするか、郵便振替用紙に希望冊数を記入し(1冊5000円、送料無料)てお振り込み下さい。
申込書
記者会見:08/8/27(水)午後3時~ 愛知県弁護士会 3階会議室にて(報道関係者はどなたでも参加できます)


(isbn 978-4-904407-00-4 一般の書店では販売していません。本を置くことを検討してくださる書店関係者はこちらをお読み下さい。)

ネット書店「amazon」でも販売中です。



包括外部監査の通信簿について

外部監査制度のあらましはこちら(pdf)

1.監査委員監査(地方自治法195条~202条)の限界

 監査委員監査は地方自治法によって設けられた自治体の行財政を監査する制度です。行政から独立して財政・会計面を中心に適正な執行がなされているかを常に監査しうる組織ですが、監査委員には議員や自治体ob、地元有識者(弁護士、会社経営者、公認会計士、税理士)などが就任しており、監査委員監査が行政を是正する能力を発揮せず、ときには、監査委員・監査事務局自体が不当な公金支出の慣行に流されていることで市民の批判の対象となることもありました。

2.外部監査制度(地方自治法252条の27~46)の導入(平成9年改正、同11年4月実施)

外部監査は、住民・市民の立場に立って、外部の政治的、精神的に独立した外部監査人が自治体の監査を行おうというものです。

  • 都道府県・政令市・中核市は毎年包括外部監査契約をしなければならない。その他の自治体も条例を制定すれば包括外部監査契約をすることができる。
  • 外部監査人には弁護士・公認会計士・税理士・会計検査院・監査委員obのみなれる。
  • 同じ包括外部監査人とは連続3年(3回)を超えて契約できないよう定められている(地方自治法252条の36第3項)
  • 包括外部監査のテーマは、包括外部監査人が自由に選ぶことができる
  • 個別外部監査制度・包括外部監査制度のあらまし(表)

外部監査制度導入の意義は従来の監査委員による「内部監査」の不十分さを認めたところにあります。監査委員監査は、組織の内部に精通した者が行うことで不正や誤りを早期に発見するという建前も聞かれますが、最大の問題は、既成行政組織に取り込まれ、独立性を失っていくことであろう。日本は「外から言われなければ直らない」というように、外部からのチェックがないと厳正さが確保されにくいのです。

3.「包括外部監査」を評価する市民の取り組み

このような外部監査制度が導入されましたが、外部監査人が市民のための自治体の「お目付役」となれるのか、それとも従前の監査委員の「屋上屋」や「税金の無駄遣い」になってしまうのか、それは外部監査人の姿勢・努力によることはいうまでもありませんが、それを見る市民自身の「監視」の力にもよると考え、市民オンブズマンが「通信簿」を毎年付けています。
全国の自治体の財政をはじめとする行政の刷新と改善にどれだけ役立つのかを注目し、市民オンブズマンによる通信簿を作成しました。
制度導入当初は監査報告書本文が6ページしかない自治体もありましたが、現在では200ページを超える報告書も珍しくなく、しかも内容も充実しています。

4.「包括外部監査評価班」について

全国市民オンブズマン連絡会議に加盟する各市民オンブズマンのメンバー有志12名。弁護士・税理士・公認会計士らで構成している。

5.評価対象

“平成18年度包括外部監査実施全自治体 114自治体(47都道府県、15政令市、37中核市、
  15条例制定自治体)の全監査報告書 165テーマ”

6.評価の手順と基準

包括外部監査は地方公共団体の事務の①真実性、②適法性、③有効性、④効率性、⑤経済性の観点から監査することになっている。それら監査報告書を、相対比較、対象の難易度を含め、批判的に評価し、かつ各監査報告書を複数人が確認し、評価の客観化に努めた。そして、共通の対象テーマごとに相対比較も行った。

① 対象の選定は適切で監査結果は活用度があるか

 ⅰ 具体的な目的根拠があって対象が選定されているか。
 ⅱ 監査テーマと結果は首長(自治体)が採用する有効性を持っているか。
 ⅲ 行政の改善の方向が具体化されているか。
 ⅲ 専門用語などは解説・注釈があるか。
 ⅳ 表やデータが判りやすいものか。

② 監査が充実し、評価が適切であるか

 ⅰ 新しい問題意識・発見があるか。
 ⅱ 適法性の監査について充実・適切であるか。
 ⅲ 3e監査について具体的な対象への適用とチェックがあるか。
 ⅳ テーマの数だけでなく質の高さがあるか。
 ⅴ 行政結果の追認に終わっていないか。

③ 報告書・意見書は判りやすいか

 ⅰ 市民が読んで判る記述になっているか。
 ⅱ 問題点や意見要点が明確に指摘されているか。
 ⅲ 専門用語などは解説・注釈があるか。
 ⅳ 表やデータが判りやすいものか。

 
優れた監査報告書を選抜して「優秀賞」を贈ること、逆に「欠点や是非改善してほしい」監査には、「」を出すことにした。そして、有用性に注目した「活用賞」という評価もした。

7.包括外部監査の活用方法

包括外部監査は「市民の眼」「納税者の眼」から行財政のテーマに深くメスを入れるものである。1自治体当たり488.25万円~3528万円かけて作成した報告書は、必ずや自治体の問題解決に役に立つ。主権者として自治体の問題を追及する市民オンブズマンをはじめ、議員やマスコミらにとって、包括外部監査結果は「宝の山」である。活用方法をまとめてみたのでぜひ一読願う。