2026年版包括外部監査の通信簿 優秀賞に神戸市包括外部監査人
全国市民オンブズマン連絡会議は2026年9月7日、『2026年版 包括外部監査の通信簿』を発表した。あわせて、包括外部監査に自治体がどう対応したかを評価する「自治体の措置評価」も行った。
発表は同日16時30分、愛知県政記者クラブで行った記者会見による。会見には、包括外部監査評価班事務局長の福島正人(弁護士)と、同評価班員の濵嶌将周(弁護士)が出席した。
記者発表資料はこちら(PDF)
https://www.ombudsman.jp/houkatsu/2026kekka.pdf

—
「通信簿」は二つの評価から成る
包括外部監査とは、平成11年度の地方自治法改正により、中核市以上の自治体(都道府県・政令指定都市・中核市)に義務づけられた、弁護士や公認会計士など外部の専門家による監査である。この外部監査人が市民のための自治体の「お目付け役」となるのか、それとも従前の監査委員の「屋上屋」や「税の無駄遣い」になってしまうのかは、それを視る市民自身の監視の力によるものと考え、当会は平成11年度分の報告書を対象に、平成12年から毎年「通信簿」を作成してきた。
「通信簿」は、性格の異なる二つの評価で構成されている。ここを取り違えると結果を読み誤るので、はじめに整理しておきたい。
| | 何を評価するのか | 誰への評価か | 対象年度 |
|—|—|—|—|
| 第1部 監査報告書の評価 | 公表された監査報告書そのものの中身 | 包括外部監査人 | **令和7年度** |
| 第2部 自治体の措置対応の評価 | 監査の指摘・意見に自治体がどう対応し、市民にどう公表したか | 自治体(行政当局) | **令和5年度** |
前者は監査人の仕事ぶりへの評価であり、後者は自治体の仕事ぶりへの評価である。対象とする年度も、評価される相手も異なる。したがって「優秀な監査を受けた自治体」が「監査を活かしている自治体」であるとは限らない。
評価の対象と規模
(1)監査報告書の評価
令和7年度に包括外部監査を実施した全自治体、すなわち132自治体(47都道府県、20政令市、62中核市、3条例制定自治体)の全監査報告書133テーマを対象とした。
(2)自治体の措置対応の評価
令和5年度に包括外部監査を実施した133自治体の監査報告書136テーマに対する、実施自治体(行政当局)の措置通知等(原則として令和8年3月31日までに公表されたもの)の対応状況を対象とした。
誰が評価しているのか
評価にあたったのは、全国市民オンブズマン連絡会議に加盟する各市民オンブズマンのメンバー有志21名からなる「包括外部監査評価班」である。弁護士・公認会計士・税理士・市議会議員・市民オンブズパーソンで構成している。
個々の監査報告書は担当班員が精読して一次評価を行い、これをもとに評価班全体で再検討したうえ、全員の意見で最終的な評価を決定している。
—
評価結果(1)令和7年度の監査報告書
各自治体の監査テーマと評価の全一覧は、記者発表資料の「令和7年度 監査テーマ・評価一覧表」([PDF 4〜6頁](https://www.ombudsman.jp/houkatsu/2026kekka.pdf)のとおりである。
内訳は、優秀賞1自治体1テーマ、活用賞16自治体16テーマ、改善要望5自治体5テーマであった。
優秀賞 松谷卓也氏(神戸市包括外部監査人)
テーマは「地域包括ケアシステムの構築、深化・推進」。監査人は弁護士で、報告書は本文214頁、概要書26頁、委託報酬額は17,351,000円である。
福祉に関する監査であることを踏まえ、弁護士資格だけでなく社会福祉士資格も有し、他の自治体職員として福祉実務を担当した経験もある補助者を選定している。その効果もあり、福祉部局だけでは解決できない高齢者に関わる課題について、部局間連携の必要性という視点から横断的に監査されている。また全項目が「概要」「監査の結果明らかになった事実」「指摘事項及び意見」という構成で整理されており、論点が追いやすく活用性の高い報告書となっている点を評価した。
オンブズマン大賞は該当なし
毎年、優秀賞の中でも最も優れた報告書に対し「オンブズマン大賞」を授与しているが、今回はこれに相当する報告書がなかった。
活用賞 16自治体16テーマ
青森県、広島県、山口県、大阪府、八戸市、福島市、富山市、福井市、吹田市、明石市、西宮市、鳥取市、福山市、下関市、宮崎市、那覇市
改善要望 5自治体5テーマ
逆に、欠点が目立ち是非とも改善してほしい監査には「改善要望」を出すこととしている。今回の対象は次の5自治体である。
| 自治体 | 監査テーマ |
|—|—|
| 宮城県 | 子ども・子育て支援事業に関する財務事務の執行について |
| 福島県 | 保健福祉事業の財務事務の執行及び事業の管理 |
| 盛岡市 | 出資等法人に係る財務に関する事務の執行について |
| 奈良市 | 子ども・子育て支援事業に係る財務事務の執行について |
| 東京都荒川区 | リニューアルオープン後のあらかわ遊園の管理運営について |
オンブズマン功労賞 2名
3年間、同じ監査人が続けて優秀賞または活用賞を受賞した場合には「オンブズマン功労賞」を贈っている。令和5年度から令和7年度まで3年連続で活用賞以上を受賞したのは、次の2名であった。
– 村田 治子氏(山口県包括外部監査人)
– 久保井 聡明氏(吹田市包括外部監査人)
—
評価結果(2)令和5年度に対する自治体の措置対応
監査で指摘を受けた自治体が、その後どう対応し、それを市民にどう公表しているか。これを評価したのが第2部である。
評価は、①自治体ホームページでの措置報告へのアクセス性、②一つひとつの指摘事項・意見に対応した措置の内容の明確性(措置対応度)、③市民に対する説明責任を果たしている程度、の3点に注目して行った。このうち③は、市民に対する説明責任という価値づけにおいて①②の3倍の重みがあるものとして、総合評価を導いている。
総合評価は5段階である。
| 評価 | 意味 |
|—|—|
| A | 良 |
| B | 普通(さらに改良が望まれる) |
| C | 改善を要する |
| D | **抜本的に改善を要する** |
| E | **ゼロ評価、最悪で失格** |
各自治体のA〜E評価の全一覧は、記者発表資料の「包括外部監査について自治体の活用度評価一覧表(令和5年度)」([PDF 9〜12頁](https://www.ombudsman.jp/houkatsu/2026kekka.pdf)のとおりである。
措置Aランク 18自治体
青森県、埼玉県、東京都、石川県、福井県、静岡県、徳島県、新潟市、浜松市、盛岡市、水戸市、岐阜市、豊田市、豊中市、東大阪市、松江市、福山市、宮崎市
過年の通信簿では、先進的に措置対応が優れたものに「措置模範賞」を、外部監査への措置が同年内で最高(第一位)とみられたものには「オンブズマン大賞」ないし「措置模範大賞」を贈った。今回は、措置模範賞はなかった。
措置 イエローカード2自治体、レッドカード3自治体
2018年版のイエローブックから、措置が形ばかりで内容が乏しいのは首長の政治責任を伴うとして、**2年にわたりD・E評価のものについては首長自身に対しイエローカード、3年にわたるものにはレッドカードを宣する**こととしている。今回、これに該当したのは次の自治体である。
| | 該当自治体 |
|—|—|
| イエローカード(2年連続で総合D以下) | 名古屋市、広島市 |
| レッドカード(3年連続で総合D以下) | 仙台市、八王子市、明石市 |
評価班は、この5自治体の首長に対し、改善を求める要望書を送付する。
—
「良い監査人」と「活かさない自治体」のねじれ
冒頭に述べたとおり、二つの評価は対象も年度も異なる。その結果、同じ自治体名が正反対の位置に現れることがある。
– 明石市 — 令和7年度の監査報告書は活用賞。一方で、令和5年度の措置対応は3年連続でD以下となり、レッドカードの対象となった。
– 富山市 — 令和7年度の監査報告書は活用賞。一方で、令和5年度の措置対応はD評価であった。
– 盛岡市 — 令和7年度の監査報告書は改善要望。一方で、令和5年度の措置対応はAランクであった。
このねじれこそが、私たちが二つの評価を並べて公表している理由である。優れた監査人が優れた報告書を書いても、自治体がそれを受け止めて動き、市民に説明しなければ、税金をかけた監査は紙の束で終わる。逆に、監査報告書に厳しい注文がついた自治体でも、その後の対応次第で市民への説明責任は果たしうる。監査は受けた時点ではなく、活かされた時点で価値になる。
—
監査人の報酬は長期的な低落傾向にある
包括外部監査には、当然ながら公費が投じられている。令和7年度の包括外部監査人報酬額は、東京都の3,834万4,000円が最高、鳥取市の713万円が最少であった。平均報酬額は、都道府県1,430万5,532円、政令市1,556万3,610円、中核市1,168万7,147円、条例自治体893万6,767円、全体平均1,314万4,285円である(評価班調査)。
そして、この報酬額は明らかに、長期的な低落傾向にある。このことは、包括外部監査を充実させるためには大きな障害である。
安ければよい、という話ではない。報酬が下がれば投入できる時間も補助者の人数も削られ、実地調査は薄くなる。監査の質は、最終的にそこに跳ね返ってくる。
27年で3,967テーマ
包括外部監査は、25の中核市と条例による任意実施の2市を含む計86自治体で始まり、令和7年度は132自治体で実施されている。令和7年度分までに取り上げられたテーマは、累計で3,967テーマにのぼる。
私たちは毎年、包括外部監査の実情を調査し、監査報告書が自治体に提出されたのち半年以内にその報告書を読み、その出来・不出来を評価してきた。これが「包括外部監査の通信簿」である。2009(平成21)年からは、全国の実施自治体の「措置報告」を点検し、指摘事項や意見に各自治体がどう対応し公表しているかを分析して、「外部監査の活用度の通信簿」として発表してきた。今年で27年目となる。
—
9月13日(日)全国オンブズ大会で「議会で活かす包括外部監査分科会」を尼崎会場とWEBで開催
2026年9月12日(土)・13日(日)に尼崎会場とオンラインで行う「第33回全国市民オンブズ 兵庫・尼崎大会」にて、結果発表を行う。
大会2日目の2026年9月13日(日)9時〜11時10分には、「議会で活かす包括外部監査分科会」を開催する。監査報告書やイエローブックを使った一般質問の事例を、包括外部監査を実施している自治体の議員と、実施していない自治体の議員の双方の視点から取り上げるほか、田上智子・元八尾市・元堺市包括外部監査人による「監査人が考える監査報告書の活かし方」などを行う。どなたでも参加できる。
大会の詳細・申込みはこちら
https://www.ombudsman.jp/taikai
—
冊子を販売している
上記評価の詳細を記載し、全包括外部監査報告書を収録したDVDを付録に付けた冊子を、1冊6,000円(税込・送料込)で販売している。2023年度からは、DVD単体でも販売をはじめた(3,000円)。
外部監査人だけでなく、役所をチェックする議員や、市民オンブズマン、研究者、マスコミからも好評を得ている。ぜひ購入して、他自治体でのチェック項目を、自分が住む自治体のチェックに活用していただきたい。
– 資料申し込みフォーム https://pro.form-mailer.jp/fms/9dedb63d354279
– 資料チラシ・申込書PDF https://www.ombudsman.jp/houkatsu/260725.pdf
– FAXでの申込み 052-953-8050
クラウドファンディングにご支援いただいた皆さまへ
評価班はボランティアで運営されているが、班員の交通費や印刷代などは冊子の販売費だけではまかなえず、赤字が続いていた。そのため、評価班の解散も検討された。
状況を改善するため、今回もイエローブック製作にあたり、インターネットで支援金を求めるクラウドファンディング「READYFOR」の協力を得て広く市民に支援を求めたところ、READYFOR以外も含めて**合計39名、695,000円**もの支援をいただくことができ、冊子の発行が可能となった。感謝申し上げるとともに、寄付者の氏名を巻末に掲載した。
私たちは補助金を受け取らない。だからこそ、どの自治体にも遠慮なく点をつけられる。
—
全国市民オンブズマン連絡会議 包括外部監査の通信簿
https://www.ombudsman.jp/houkatsu
第33回全国市民オンブズ 兵庫・尼崎大会
https://www.ombudsman.jp/taikai
お問い合わせ:全国市民オンブズマン連絡会議(TEL 052-953-8052/FAX 052-953-8050/office@ombudsman.jp)