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橋梁談合-住民監査請求の意義

橋梁談合-住民監査請求の意義  

更新日 2006/11/22

橋梁談合-住民監査請求の意義

大川 隆司


 国土交通省と旧日本道路公団が発注した鋼鉄製橋梁建設工事(鋼橋工事)をめぐる談合で、東京高裁が11月10日、メーカー23社に対し、総額64億8000万円の罰金を言い渡した。

 これより先、各地のオンブズマンは工事現場のある県と政令市に対して、談合でつり上げられた工事価格に相当する損害賠償を、メーカー側に請求することを求める監査請求に、7月以来取り組んでいる。

 かながわ、よこはまの両オンブズマンも9月に参加した。旧公団発注分は別として、国交省発注工事については、道路法の規定により工事費の3分の1は地元県または政令市が負担するので、談合の被害は直接の発注機関のみならず、県・市に及ぶからである。

 県・市の各監査委員は、私たちの請求に対して、「棄却」の結論をこのほどあい次いで下した。理由はいずれも、国交省自身がメーカーに対して違約金を請求済みであり、その回収後は県・市にも配分する予定であるから、県・市が直接請求するには及ばない、というものである。

 
 「棄却」という結論ではあったが、この監査請求に取組んだことは有意義だった、と私は考える。

地方自治体が発注する契約について、談合があれば、住民訴訟を通して損害賠償をさせることができるが、国が発注する場合は、(日弁連が提唱している)納税者訴訟制度がないので、指をくわえて見ているほかはない-というのが、これまでの常識だった。

 しかし、調べてみると国の「直轄工事」でありながら地方自治体が費用を負担する仕組みになっているものが橋梁、道路、ダム、堤防、港湾など、いろいろある。いま公正取引委員会が検査をすすめている林道設計業務(緑資源機構の発注)の費用も、北海道、東北各県などにツケがまわるものだ。

 国と地方が費用を共同負担する、これらの工事や業務についても、談合の被害は必ず回復させる-今回の請求は、そういう状況を切り拓く端緒になったと思う。

06.11.16発行 かながわ市民オンブズマン広報誌記事