これは、全国民の自治会・町内会への加入率を表した数字です。
自治会・町内会に対する住民の関与は様々ですが、実に国民の8割以上、単純に計算すれば一億人近い人々が名目であれ自治会・町内会に参加しているということになります。
戦前、戦争協力の動員に利用されたことから、GHQに半封建半官組織として廃止されたにもかかわらず、占領の終結とともに自治会・町内会は復活し現在に至っています。
もっとも、自治会・町内会自体は、法律上明確な地位を与えられているわけでなく、地方自治法上の特別な規定を利用する場合を除いて、いわゆる任意団体であり、法人格すら持っていません。
そのような団体が、日本全体を見れば、実は日本の地方自治の陰の主役を担っているということになります。これはあまり意識されていないことですが、この事実がわたしたちの議論の出発点になると思います。
言い換えると、自治会・町内会の問題、その不正や腐敗が日本の民主主義全体の質に直結していると言えます。
しかしながら、自治会・町内会問題は、その重要性に比して、学者・研究者によっても十分に議論されてきたとは言えません。
冒頭に挙げた数字からうかがわれる影響力にもかかわらず、自治会・町内会は、巨大なブラックボックスとなっているのです。
自治会・町内会は、果たして住民を代表していると胸をはって言えるほど、民主的に運営されているのか、自治会・町内会の会計は適正になされているのだろうか、行政の御用機関になっていないか、一部の理事者らの利権と化してないか、そもそも自治会・町内会は必要なのか、全国の市民オンブズマンの各地報告においても、ちらほら取りあげられ、議論されていたことですが、この巨大なブラックボックスは、今まで全国大会で統一的なテーマとして取りあげられることはありませんでした。
今回、全国市民オンブズマン大会において、はじめの試みとして、自治会・町内会問題を取りあげます。そこで、自治会・町内会とは何だろう?という議論からはじまって各地の問題、問題意識をもちよって議論することで、自治会・町内会に対する理解と、この問題に関心のある市民の間での交流を深めていきたいと考えています。
以上
第1 町内会とは
・自治会、町内会、区会等名称は様々。
大阪市内では、「地域振興会」と呼ばれる。
・学術上も確立した定義、呼称はない。
第2 町内会の性格
1 地縁性
・組織階層
世帯
組(班)(10~20世帯)
町内会(加入世帯数全国平均230。中央値107)
連合自治会 小学校区(半径4キロメートルの地域)~中学校区(半径6キロメ ートルの地域)
・全国298,700団体(2013)
2 開放性(誰でも参加できる建前)
国民の8割以上が加入
ただし、加入率が著しく低い組織もある。
→一般的に「地縁的な住民自治組織」と言われる理由。
「包括性」、「唯一性」が強調される
3 任意団体
法人格はない。なお、地方自治法上の認可地縁団体。
非強制加入団体
加入率の低下傾向
また都市部は低い
←朝日新聞アンケート(2015)
自治会・町内会は必要か?
必要 557
どちらかといえば必要 332
どちらでもない 107
どちらかといえば不要 295
不要 676
→ 組織規範が確立していない。
・団体として権利義務の取得が難しい。不正会計問題
・第2町内会
・非民主的運営
第3 行政と町内会の相互依存
1 町内会の歴史(京都市の場合)
・応仁の乱(1467~77)
隣保団結の地縁組織としての「町」
・16世紀末 織田信長
行政組織の末端組織化(犯罪人の取締、租税の取立)
・江戸時代
・明治30年
行政事務が市に吸収される一方で、公同組合が学区単位に作られる。
・満州事変(昭和6年)以降
「公同組合(町内会)の組織が、国防献金、慰問袋、防護団、防空演習など戦時 態勢下に利用されるようになり、公同組合(町内会)の活動と戦争を切り離して 論じることはできなく」なってしまう。そして、「昭和15年、内務省訓令第17 号により、町内会の官製化が行われた」。(岩﨑信彦ほか「町内会の研究」)
・戦後(占領期)
GHQは、「封建的半官組織」として、公同組合(町内会)を解体(昭和22年
政令15号)。
しかし、たとえば、大阪では、「赤十字奉仕団」として生き延びる。
・対日講和条約
政令15号の失効。町内会の解禁。
→今日の町内会へ。
2 相互依存(行政協力)の理由
・行政連絡(保健衛生上の通知・ゴミ通知等)
・地域住民からの情報収集及び統括(地域とりまとめ)
例 公共工事 国民体育大会
・歴史性
・行政投資の引き出し、影響力の行使
・ステイタス・シンボル
→ 癒着問題
第4 各地報告等の事例紹介
以上