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2005.6.30 宮城申し入れ

最終更新時間:2005年07月05日 11時53分38秒

仙台市民オンブズマンは2005年6月30日、6月21日の仙台地裁判決をふまえて、県知事に対し、関係文書の引渡しを求めて法的手段を行使することを求める申し入れを行いました。申し入れには知事が直接応対しました。監査委員にも特別監査の実施についての申し入れを行いました。申し入れ文書の全文は以下の通りです。


県警犯罪捜査報償費に関する申し入れ

2005年6月30日

宮城県知事 浅 野 史 郎 殿                                       仙台市民オンブズマン                                      代表 坂 野 智 憲

 1、県警捜査報償費予算執行停止について

まず知事が県警捜査報償費(以下報償費という)の予算執行停止を決断したことに敬意を表します。

仙台市民オンブズマンは、平成12年度の報償費の返還を求めて住民訴訟を提起し、本年6月21日、仙台地裁において判決がなされました。裁判所は、報償費の使い切り、不自然に平均的な執行状況、鑑識課の報償費支出について実例を示せないこと、鑑識課の報償費が短期間で配分されなくなったこと、警視庁における不正疑惑、北海道警の不正、宮城県情報公開審査会の答申内容、宮城県による定期監査と知事要求の監査に対する県警の対応、知事の提出要求を拒否する県警の対応などについて詳細に検討した上で、「総合すると、平成12年度の宮城県警本部の報償費の支払いの相当部分が実体がなかったものと推認する余地がある。」「鑑識課の平成12年度の報償費の支払いのすべて(総額123万円分)について、実体がなかった疑いが強いというべきである。報償費の支払いとしてその実体を欠く支出がされたとすれば、これによって宮城県に損害を与えたことはいうまでもない」と判示しました。

裁判所が内部告発者の証言や報償費支出に関する内部文書などの直接証拠がないにもかかわらず、状況証拠の積み重ねによってここまで踏み込んだ判断をしたことは極めて異例のことです。

しかしかかる判決が出されても、県警は「残念」というのみで何ら不正疑惑を払拭するための説明をしようとしません。知事が報償費支出の執行停止を決めたことは誠に当然と言うべきでしょう。

知事は執行停止解除の条件として報償費支出文書の提出を挙げています。県議会において議員から「執行停止は県民の安心・安全の確保に問題があるのではないか」との指摘がなされているようですが、その指摘は説明責任を全く果たさず、支出文書提出を頑なに拒んでいる県警本部長にこそ向けられるべきものです。批判は覚悟の上の決断と思いますが、県警が支出文書を提出し、それに基づいて実際に捜査協力者と面談して支払の事実が確認されるまでは、断固として執行停止を続けることを望みます。

 2、報償費支出文書提出要求について

知事は県警に対し、報償費の支出文書の提出を再三申し入れたようですが尽く拒否されてきました。上記仙台地裁判決はこの点についても注目すべき判断を示しています。

すなわち、「宮城県財務規則89条、財務規則の施行に関する細則7条1項2号によれば、債権者の請求書、債権を証する書類、領収書などは、宮城県出納局長が保管する権限と義務があるとされる。」「宮城県出納局長は、犯罪捜査報償費の債権者の受領書等関係書類の保管に関する特認について(承認)により、宮城県警本部長の申請を承認したこと、承認は監査に当たっての証拠書類の提示などを不要とすることまで決めたものではなかったことが認められる。これによれば承認は単に宮城県出納局長が宮城県警本部長に保管の代行を許しただけのものであり、宮城県出納局長は、必要があればいつでも書類を自らの保管に移すことが可能であると解する余地がある。」「そのことは宮城県警が挙げる情報提供者・協力者保護の必要性、情報提供者・協力者との信頼関係の維持、捜査上の秘密の保持を理由として宮城県知事側に書類の提示を拒むことを財務規則に予定していないことの顕れというべきである。」と判示しました。

知事の実地調査権についても判決は、「宮城県知事には予算執行権があり、地方自治法221条1項により実地調査権が認められており、財務規則30条の3では総務部長にも予算の執行状況についての調査権が認められている。そして宮城県警本部長は、財務規則2条4号により調査対象となり部局長である。」「宮城県警本部長は宮城県知事の再三に渡る捜査員からの聴取調査の要請を拒否した。これについて宮城県警は情報提供者・協力者保護の必要性、情報提供者・協力者との信頼関係の維持、捜査上の秘密の保持を理由として挙げるが、宮城県知事の実地調査権を拒む十分な理由となるものではない。」と判示しています。

このように法律家の目から見れば、県警本部長が知事の支出文書提出要求を拒否したり実地調査を拒んだりすることは明らかに違法なことなのです。しかし県議会では、県警本部長は捜査協力者保護を言い、質問した議員は両者の歩み寄りを求めるというまたもや昨年同様の議論が繰り返されています。この問題は政策の適否の議論ではなく、法律上の権限の問題ですから、歩み寄りで解決されるべき事柄ではありません。

例えば県有地を借りた者が期限を過ぎても返さず、不法占有を続けているとします。もちろんまずは話し合いによる返還を求めるでしょうが、どうしても返さない場合には明け渡しを求める訴訟で解決することになるでしょう。占有している者が嫌だと言えばそのままにせざるを得ないということでは、もはや法治国家ではありません。知事が1年以上粘り強く提出を求めたにもかかわらず県警がこれを拒否し続け、しかもそれが自らの不正の隠蔽の意図によってなされている疑いが濃厚なわけです。もはやこれ以上違法状態を野放しにしておくことはできないはずです。

本来このような場合には県警を管理する公安委員会が責任ある対応をなすべきなのです。県公安委員会は警察法38条3項により県警を管理する権限と義務を負い、同法43条の2第1項により警察の事務について必要があると認めるときは第38条第3項の規定に基づく指示を具体的又は個別的な事項にわたるものとすることができるとしています。つまり宮城県公安委員会が必要と認めれば県警本部長に対して報償費支出文書を知事に提出するよう指示することが可能なのです。言うまでもなく県公安委員会は宮城県の治安に対して最終的な責任を負うべき機関であり報償費予算執行停止という事態を傍観していてよい機関ではありません。しかし残念ながら仙台地裁判決を受けて知事が報償費予算執行を停止し、監査委員が特別監査を行うことを決めたにもかかわらず、県公安委員会は何もしません。

 3、具体的な方策

本日の報道によれば県警は監査委員の報償費支出文書全面開示の要求を拒否する方針を固めたとされています。事ここに至ってはもはや法的手段によって強制的に報償費支払文書の引渡を実現する以外方法はありません。

知事としては直ちに宮城県出納局長に対し、県警本部長に対する上記「特認」を撤回し、宮城県財務規則89条、財務規則の施行に関する細則7条1項2号に基づき、報償費支出文書の引渡命令を出すよう指示すべきです。そして県警本部長がこれに従わない場合には、裁判所に対し文書引渡の本訴を提起するかあるいは仮処分を申請すべきです。 上記のとおり法的手段によって現在の違法状態を是正する途があるわけですが、残念ながら県民一人一人にはこのような法的手段をとることはできません。かかる権限を有するのは県の代表者である知事ただ一人です。そしてこの権限は県民から付託されたものであり、行使するもしないも知事の自由というものではありません。知事には自らの権限を行使して違法状態を是正する義務があると考えます。

 4、最後に

本来県警を管理する公安委員会が機能していれば、警察自らの手でこの問題を解決できたのです。

しかし公安委員会は単なる名士の集まりに形骸化し、議会も警察問題には踏み込まない、マスコミも警察発表が頼りなので遠慮がち、そのような中でいつの間にか警察は、アンタッチャブルな存在になってしまいました。自分が見せたくないと思う情報は知事であれ監査委員であれ誰にも見せない。内部監査もおざなり。公安委員会をコントロールして情報公開審査会の答申も無視する。裁判所の判決も気にしない。このような誰の批判も受け入れない傍若無人の姿勢は、自らをアンタッチャブルな存在と位置づけているとしか考えられません。

検察庁は調査活動費について同じように裏金疑惑を指摘されました。表向きこれを否定はしましたが、実際には調査活動費を10分の1以下に減らして裏金作りをやめたようです。しかし警察はこれだけ全国的に裏金が発覚したにもかかわらずなお裏金作りをやめようとはしません。警察の裏金問題は正に警察の体質の問題なのです。

知事が全国に先駆けて報償費予算執行停止に踏み切った勇気に敬意を表すると共に最後までやり抜いて欲しいと願っています。


県警犯罪捜査報償費に関する申し入れ

                                       2005年6月30日

宮城県監査委員殿

                                       仙台市民オンブズマン                                       代表 坂 野 智 憲

 1、平成17年6月21日仙台地裁判決について

仙台市民オンブズマンは、平成12年度の報償費の返還を求めて住民訴訟を提起し、本年6月21日、仙台地裁において判決がなされました。裁判所は、報償費の使い切り、不自然に平均的な執行状況、鑑識課の報償費支出について実例を示せないこと、鑑識課の報償費が短期間で配分されなくなったこと、警視庁における不正疑惑、北海道警の不正、宮城県情報公開審査会の答申内容、宮城県による定期監査と知事要求の監査に対する県警の対応、知事の提出要求を拒否する県警の対応などについて詳細に検討した上で、「総合すると、平成12年度の宮城県警本部の報償費の支払いの相当部分が実体がなかったものと推認する余地がある。」「鑑識課の平成12年度の報償費の支払いのすべて(総額123万円分)について、実体がなかった疑いが強いというべきである。報償費の支払いとしてその実体を欠く支出がされたとすれば、これによって宮城県に損害を与えたことはいうまでもない」と判示しました。

しかしかかる判決が出されても、県警は「残念」というのみで何ら不正疑惑を払拭するための説明をしようとしません。知事が報償費支出の執行停止を決めたことは誠に当然と言うべきでしょう。

 2、県警犯罪捜査報償費の特別監査について

報道によれば宮城県監査委員は県警犯罪捜査報償費のうち、2000年度の鑑識課分と鉄道警察隊分について特別監査を検討しているとのことです。そのことについては上記判決を受けた速やかな対応であり、監査委員として誠に適切な措置と考えます。

しかしながら、前記仙台地裁判決は鑑識課と鉄道警察隊について強い疑惑を認定していますが、それにとどまらず「平成12年度の宮城県警本部の報償費の支払いの相当部分が実体がなかったものと推認する余地がある。」と認定しているのです。裁判所が内部告発者の証言や報償費支出に関する内部文書などの直接証拠がないにもかかわらず、状況証拠の積み重ねによってここまで踏み込んだ判断をしたことは極めて異例のことです。裁判所が「宮城県警本部の報償費の支払いの相当部分が」と認定している以上監査の対象を2000年度の鑑識課分と鉄道警察隊分に限定する合理的理由を見いだせません。従って2000年度については当然全ての捜査報償費を特別監査の対象とすべきと考えます。

また判決が直接触れているのは当然のことながら訴えの対象となった2000年度の報償費ですが、2000年度に実体の無かった報償費の支出が翌年から突然実際に支払われるようになったとは考えられません。判決の論理に従えばその後2004年度分までの全ての報償費が監査対象とされるべきと考えます。監査の対象が少数であれば監査逃れの隠蔽工作もしやすいが2000年度から2004年度までの全てを対象とすれば監査逃れが困難になることは理の当然と思われます。

もちろん監査に要する時間の関係上緊急性の高い2000年度の鑑識課分と鉄道警察隊分の特別監査を先行させて速やかに結果を公表し、引き続き他の報償費の監査を行うという判断はあってもよいと思いますが。

 3、監査方法について

報道によれば、県警に対し報償費支出文書の全面開示を要請したとのことです。

前記仙台地裁判決は、監査委員の監査に当たり支出関係書類の一部が目隠しとされて提出されたことについて、「地方自治法199条8項によれば監査委員は監査のため必要があると認める時は、関係人の出頭を求め、もしくは書類その他の記録の提出を求めることができるとされており提出を求める記録に何らの限定は付されていないから、宮城県警の上記の対応は法に則ったものとは言い難い。」と判示しています。

また宮城県警が情報提供者・協力者保護の必要性、情報提供者・協力者との信頼関係の維持、捜査上の秘密の保持などを総合的に判断して目隠しの措置をとったとの主張について、「しかしながら監査委員は職務上知り得た秘密を漏らしてはならずその職を退いた後も同様とされているから情報提供者・協力者保護の必要性を理由に上記措置を正当化することはできない。また情報提供者・協力者との信頼関係の維持、捜査上の秘密の保持もこれを理由とする目隠しの措置を容認すると、実質的に監査することのできない費目を作出することになりかねないからみだりに許容することはできない。」「会計検査院の検査と監査委員の監査とを別異に取り扱うことに首肯できる理由は見あたらない。」と判示しています。

この判示に照らせば監査委員の全面開示の要請は至極当然のことであり、県警に対しては全面開示するよう強く求めるべきと考えます。

一方で報道によれば阿部徹代表監査委員は「監査委員が協力者と会わないで支払の事実を確認する方法があるか県警と話し合いたい」と述べたとされています。

しかし報償費の支出の事実を確認する最も確実かつ直截な方法は捜査協力者と直接面談して受領の事実を確認することです。これは誰にでも分かる理屈なはずです。仙台地裁判決も、被告が監査結果において違法又は不当なものが見当たらなかったから報償費は適正に執行されていると主張したのに対し、「支出関係書類の一部が目隠しとされ、中でも現金出納簿、捜査費支出伺、支払精算書、支払伝票、領収書のうち、具体性のある事件名、情報提供者・協力者の氏名、接触場所のような、情報提供者・協力者特定の資料となるものは目隠しとされたことが認められ、これによれば、情報提供者・協力者への支払が実体のあるものであるという確認まではされていないとみるべきである。」と判示してその主張を排斥しています。つまり判決は、監査委員に「情報提供者・協力者特定の資料となるものは目隠しとされた」ので、監査委員は情報提供者・協力者への支払が実体のあるものであるという確認ができなかったと言っているのです。これは、監査方法として情報提供者・協力者を特定してその者から支払が実体のあるものである確認がとれないような監査によって、違法不当なものが見当たらなかったとされたとしても、それで支払実体が確認できるものではないという趣旨と解されます。協力者と会って事実確認をしないというのは判決の論理に反するものであり、監査の名に値しないと言わざるを得ません。

 4、最後に

本来県警を管理する公安委員会が機能していれば、警察自らの手でこの問題を解決できたのです。

しかし公安委員会は単なる名士の集まりに形骸化し、議会も警察問題には踏み込まない、マスコミも警察発表が頼りなので遠慮がち、そのような中でいつの間にか警察は、アンタッチャブルな存在になってしまいました。自分が見せたくないと思う情報は知事であれ監査委員であれ誰にも見せない。内部監査もおざなり。公安委員会をコントロールして情報公開審査会の答申も無視する。裁判所の判決も気にしない。このような誰の批判も受け入れない傍若無人の姿勢は、自らをアンタッチャブルな存在と位置づけているとしか考えられません。

検察庁は調査活動費について同じように裏金疑惑を指摘されました。表向きこれを否定はしましたが、実際には調査活動費を10分の1以下に減らして裏金作りをやめたようです。しかし警察はこれだけ全国的に裏金が発覚したにもかかわらずなお裏金作りをやめようとはしません。警察の裏金問題は正に警察の体質の問題なのです。

監査委員が判決後直ちに特別監査の意向を示したことに敬意を表すると共に実際の監査に当たっては県民の付託に応えて毅然としてその職責を果たされることを願っています。

なお本日の報道によれば県警は監査委員の全面開示の要請を拒否する方針を固めたとされていますが、そのような「対応は法に則ったものとは言い難い。」との司法判断がなされたにもかかわらずなお改めようとしない姿勢はあきれるほかありません。県警が監査委員に対しそのような対応をとり続けているという事実自体から不正支出の疑いを認定することは可能なはずです。監査結果の公表に当たっては単に全面開示を受けられなかったから判断できないではなく、それが何を意味するのかについて踏み込んだ判断が示されることを希望致します。

1 監査請求の特定性を認めた

「個々の報償費支出の日時,支出金額,支出先等が個別的,具体的に摘示されていなくても,本件監査請求の特定性に欠けるところはない。」

2 報償費の不正支出を認定した

「総合すると,平成12年度の宮城県警本部の報償費の支払いの相当部分が実体がなかったものと推認する余地がある。」「鑑識課の平成12年度の報償費の支払いのすべて(総額123万円分)について,実体がなかった疑いが強いというべきである。」

3 不正支出認定根拠も詳細で説得力がある

報償費が使い切られていること,不自然に平均的な執行状況であること,鑑識課に協力者がいるはずはないこと,報償費が短期間で配分がされなくなっていること,警視庁における不正疑惑(大内証人),北海道警の不正(原田証人),宮城県情報公開審査会の答申,宮城県による定期監査と知事要求の監査に対する県警の違法な対応(一部目隠しとした),知事の要求を拒否する県警の対応,などを逐一判断し,上記認定に至っている。

4 宮城県による定期監査と知事要求の監査に対する県警の対応を違法と判断した

「宮城県警の上記の対応(書類を一部目隠しして提出したこと)は,法に則ったものとは言い難い。」

5 出納局長が書類を自らの保管に移す権限があることを認めた

「宮城県出納局長は,必要があればいつでも書類を自らの保管に移すことが可能であると解する余地がある。」「宮城県警側が挙げる情報提供者・協力者保護の必要性,・・・・を理由として宮城県知事側に書類の提出を拒むことを財務規則に予定していない」

6 個人責任は否定

「仮に,平成12年度の報償費の支払が実体がなく違法であるとしても,それは被告のした支出命令後の,・・・執行行為に帰因する違法というべきもの」

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