トップ 履歴 一覧 ソース 検索 ヘルプ PDF RSS ログイン

20040331国家公安委員会申入書

最終更新時間:2004年05月20日 10時01分09秒

警察庁・警視庁の組織ぐるみ不正経理の是正を求める 申 入 書

2004/3/31付けで、国家公安委員会委員長に以下の申入書を提出しました。回答は5/18づけできました。


2004/03/31

国家公安委員会委員長 小 野 清 子  様


警視庁国費捜査費ネコババ事件弁護団

東京市民オンブズマン

弁護士  堀 敏明

同 清水 勉

同 谷合 周三

同 佃 克彦


警察庁・警視庁の組織ぐるみ不正経理の是正を求める 申 入 書


警視庁、北海道警、静岡県警、高知県警、福岡県警等々、警察組織の不正経理病は全国的、かつきわめて深刻です。

昨年3月、私たちが警視庁の拳銃捜査費=国費の不正経理問題で東京都=警視庁に勝訴したとき、警視庁は「当方の主張が認められなかったことは遺憾である。」とコメントしました。今年1月、最高裁が上告不受理決定を出したときは、「最高裁が不正経理事実を認定したわけではない。」と言いました。

そうでしょうか。

ひとりの警察官は法廷で次のように証言しています(証人調書11頁)。

【問】(略)その下の「警部」というところ、それから氏名の「下野強」というところ、これが手書きになっていますが、これもあなたの筆跡に似ていますか。【答】そのとおりでございます。【問】それから、印のところなんですけれども、甲第2号証の1と2の「下野強」の後に「下野」という、これは三文判かと思うんですけれども、判こが押されているんですが、まあ、厳密には難しいと思うんですけれども、当時あなたが職務上使っていた三文判に似ていますか。【答】まあ、いろんな印鑑を使っておりますので、これだったかどうかについては断定しかね ます。【問】じゃあ、否定もしきれないということですね。【答】(うなずく)

私たちが裁判で使った不正経理内部文書=支払精算書と、証人尋問のための宣誓書に手書きされている警察官の署名をごらんください。宣誓書はまちがいなく警察官本人が自署したものです。方や、支払精算書の方は同文書の真性自体が裁判中ずっと曖昧のままだったものです。これが同一人物の筆跡に見えないものでしょうか。ふつう、これを見た人は100人中100人が同一人物の署名ではないかと感じるはずです。少なくとも、このような証言をした警察官については直ちに参考人聴取がなされて当然だったのではないでしょうか。そしてそこからさらに次の捜査をおこなう。今西刑事(※)だったら、きっとそうするでしょう。それが現実の警視庁となると、「当方の主張が認められなかったことは遺憾である。」「最高裁が不正経理事実を認定したわけではない。」となるのです。誰の目にも警視庁は組織的“犯罪”をもみ消そうとしているように見えます。  ※松本清張の小説『砂の器』の中で、殺人犯・和賀英良を追い詰める正義感の強い捜査熱心な刑事。

拳銃捜査費を警視庁にわたしてきた警察庁は、警視庁の組織的不正経理が本当なら騙された被害者になるはずです。しかし、不思議なことに、まったく動きません。ごく最近になって警察庁は、「捜査協力者の氏名は実名で」と言い出しましたが、そういう次元の問題ではありません。そんなこともわからないほど警察庁は無能なのでしょうか。無能でないとすれば、警察庁も警視庁と一緒になって警察の組織的不正経理を隠蔽しようとしている“共犯”です。所詮は税金。幹部個人の財布からカネが盗まれたという話ではないというわけです。もはや、警察庁と警視庁に自力更生を期待することはできません。

『警察刷新に関する緊急提言』では、「1 閉鎖性の危惧」の項で、「(2) 組織内部の過度の身内意識は許されないにもかかわらず、馴れ合いによって、監察が十分な機能を果たしていないとみられる。」と指摘し、「4 刷新の方向性」の項の「(1) 透明性の確保と適切な是正措置のための方策」の項で、「○ 警察における監察の強化」を挙げています。

これを受けて、2000年(平成12年)8月、貴委員会及び警察庁は『警察改革要綱 −「警察刷新に関する緊急提言」を受けて−』を公にし、その中で、「(3) 警察における厳正な監察の実施」という項を立てました。そこには、以下のとおりあります。

  • 警察庁、管区警察局及び都道府県警察における監察体制の整備(警察庁−監察官の増配置、管区警察局−総務監察部の設置、都道府県警察−主席監察官の格上げ等)
  • 警察庁及び管区警察局による都道府県警察に対する監察の強化

さらに、『別紙』の『警察法の一部改正に盛り込むべき事項の概要』の「3 公安委員会の機能強化と活性化」では、次のとおりになっています。(1) 公安委員会の監査点検機能の強化 ア 公安委員会による具体的・個別的な監察の指示 イ 指名された監察担当委員による監察状況の機動的点検 ウ イの事務を監察担当委員の命により監察調査官が補助する仕組みの新設

確かに、私たちが裁判で問題にした“事件”は1997年(平成9年)3月のものですから、上記要綱よりまえのものです。しかし、“事件”はだれが考えても、個人的偶発的なものではありません。“事件”の背景や原因を調査することは現在でも十分に意味のあることです。その意味では、上記要綱の「警察における厳正な監察の実施」は無力であることが明らかです。

警察の不正経理問題では検察庁も沈黙しています。高知地方検察庁では、不正経理問題で刑事告発された現職警察官を被疑者として取り調べましたが、そのときの取調べ検察官の態度は、「はなから『適正に執行してますよね』という調子で、疑ってかかる様子がまるでなかった。県警と話ができていると思った。」と、取り調べてを受けた警察官は、『高知新聞』のインタビューに答えています(2004年(平成16年)3月10日付け朝刊『高知新聞』)。検察庁にも調査活動費という組織的不正経理問題があるから、このような及び腰、否、馴れ合いになるのです。

私たちは一国民として、警察の組織的な不正経理がない方がうれしいに決まっています。しかし、いまや、警察組織に不正経理がないと信じる国民はほとんどいません。にもかかわらず、警察庁も警視庁も検察庁も警察の組織的不正経理を根本的に糺す考えがありません。警察庁という国家機関に対しては、地方自治法で規定されている住民監査請求や住民訴訟の制度がありません。いま、警察庁の組織的不正経理を糺せるのは国家公安委員会を置いてほかにはありません。

 私たちは以下のことを貴委員会に申し入れます。

  1.  警視庁国費捜査費ネコババ事件の東京高裁判決及び警察官の証人調書を検討すること
  2.  1の証人警察官2名について事情聴取をおこなうこと
  3.  2に基づいてさらに必要な調査をおこなうこと
  4.  組織的不正経理の防止策として外部監査を検討すること
  5.  1ないし4についてその経過ないし結果を、2週間以内に文書で東京市民オンブズマンあてに回答すること
  6.  1ないし4についてその経過ないし結果を、報道関係者に公表すること

Counter: 239985