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高知県警察本部の不正捜査費を特別監査した高知県監査委員の奮闘記

最終更新時間:2006年10月03日 13時14分40秒

高知県議会が平成17年7月7日に(地方自治法第98条第2項)、その翌日に高知県知事が(地方自治法第199条第6項)同時期に、特別監査を請求するのと県警会計課職員の立会要求を拒否して捜査員を一人一人個別に喚んで事情聴取したのは全国で初めてです。

そして、市民オンブズマン高知も持っている資料とノウハウを監査委員事務局に提供し、意見交換をしました。これで、捜査員の本音を聴取する事が出来て、県警の監査に対する非協力にもかかわらず一定の事実関係を明らかにする事が出来ました。

今回この様な特別監査が出来た背景として、捜査一課員から内部告発で「捜査費執行状況等一覧表」の提供があり、又、高知地方裁判所平成15年(行ウ)第18号公文書非開示処分取消請求事件(捜査費支出文書)で平成17年5月27日の原告一部勝訴の判決があり、捜査一課の捜査費支出文書を公開せよとの判決が大きく影響している。

今後、警察の不正捜査費を監査請求する時は、監査委員任せではいけません。警察は、あの手この手の監査妨害と色々な骨抜き策をやってきます。我々の市民オンブズマン活動で蓄積した資料とノウハウを積極的に監査委員事務局に提供して、側面から協力する事がよりよい監査結果を導く事になると思っています。

今回、2006年7月5日に高知県監査委員事務局から「奮闘記メモ」をFAXで頂きました。以下に掲載致します。


2006年7月5日8時46分 高知県監査委員事務局 

 平成18年2月22日付けの高知県監査委員の取りまとめました、県警捜査費にかかる「監査結果報告書」についてご評価いただいた由にて、ご要請に基づき、マスコミ発表したことの範囲で且つ、地方自治法198条の3にありますように、‘公平不偏の態度’を以って記述いたします。

 17年7月7日に県議会の議決に基づき議長から“県警本部、高知署の14、15年度の県警捜査費執行について特別監査を行い、12月議会までに報告するよう”要請がありました。翌7月8日には、知事から“県警本部、高知署の12年度から15年度までの県警捜査費執行について特別監査を行い、12月議会までに報告するよう”要請がありました。

 早速、監査委員と監査事務局で情報の収集と事務方針の策定に取り掛かりました。先進県であります北海道、宮城、愛媛県に手分けをして訪問し、許される範囲で手法、要領、体制など勉強さしていただき、その後に大変役に立ちました。一方、16年度の県警本部、高知署の定期監査は特別監査と同様の随時監査として行う事とし、通算5ヵ年の特別監査をする事になりました。

 7月27日の監査委員会議では今後の監査について“県警本部の協力が不可欠”との認識のもとに県警本部長に協力を申し入れしました。ここからが実質の出発点でした。

 マスコミ発表は個社別にはせず、まとめて行う事に努めました。

 8月1日のマスコミのインタビューで、事の始めに大事なことと思い2つの宣言をしました。1つは‘捜査員の面談聴取に県警の立会いは認めない’ことでした。捜査員が発言しやすい環境を作り、自由な発言を期待しました。2つ目は‘面談聴取の場所は監査委員が主体的に決める’でした。捜査員に安心感を与え、本音を期待したためです。

 続いて監査の姿勢、方法をはっきりさすために、8月3日の監査委員会議で“特別監査要綱と実施要領”を議決しました。内容は 1:悉皆監査をする。(抽出でなく出来得る限り全部監査に努める)。2:説明責任を果たし得る透明性の確保。3:守秘義務の再確認 4:警察本部等の協力を求めること。(本部の協力なくしては、監査はスムーズに運ばない)。以上を‘基本原則’としてお互いに確認し合い、迷う事があれば、ここに戻って再出発することにしました。

 また、‘監査の主眼’として 1:捜査費が法令等に基づく適正な手続きによって執行されているか。2:領収書等の証拠書類が適正に保管されているか。3:執行された捜査費が支出の目的に沿って適正に使用されているか。4:執行された捜査費が正当な債権者に支払われているか。の項目を掲げました。

 8月4日‘特別監査プロジェクトチーム’を立ち上げ役割分担を決めました。

 8月18日に上記の‘特別監査要綱’と‘実施要領’をマスコミ発表しました。

 8月22日から特別監査の実施に取りかかりました。まず、県警監査資料の提出を求めました。8月26日に延べ9日間かけて県警本部実地監査を開始しました。

 10月17日に監査委員会議を開催し、実地監査の報告と今後の方針について協議し、現状把握と方向性の確認をしました。

 10月19日に店舗調査に入るためのマニュアルを決定し、知事部局から96名の応援を頂き、順次説明会を開いて調査姿勢の確認と意思統一を図りました。

 10月24日にマスコミに対し、‘今後、店舗調査に入るが調査店舗に迷惑をかけないため、写真撮影や追跡取材をしないよう’に要請しました。これは、十分守っていただき心配したような混乱はありませんでした。

 10月31日から店舗調査を開始しました。

 11月10日に全都道府県監査委員協議会連合会にて特別要請に基づき、県警特別監査の状況について支障のない範囲で発表しました。

 11月28日から捜査員に対する聞き取り調査を開始しました。捜査員に対しては、面談の冒頭で「ここで話したことで個々の捜査員の氏名が特定されるような報告書にはしないし、上司にも報告はしない。自由に本音を話してもらいたい」。と宣言、説明した。一方マスコミに対しては、「捜査員のプライバシーの保護及び円滑な監査の実施のため、写真撮影や個別取材はしないよう」要請し協力を頂きました。

 以上、この間の警察との調整についての最大の問題が、‘マスキングのオープンを含めた全面開示’でありました。監査委員の守秘義務を説明し、全面開示をするように口頭での申し入れを2回、文書持参で3回致しましたがすべて拒否されました。従って、マスキングが外れないままの書面監査、聞き取り調査となり、隔靴掻痒の感を免れませんでした。また、資料の取りまとめ、分析、面談の遅れなどで12月議会には間に合わず、議会、知事双方に2月議会までの報告延期を申し入れ、了承されました。

 18年2月22日に議会、知事に監査結果報告書を提出し、同日の議会本会議にて発表しました。

監査対象          13,789件 51,418,636円 支出の実態がないと判断するもの   85件     777,966円 支出が不適正と判断するもの    115件     691,693円 支出が不自然で疑念のあるもの 3,178件 16,450,222円 合計            3,378件 17,919,881円                            (34.9%)


参考資料

・高知県警国費捜査費情報公開訴訟 高知地裁判決 05/5/27http://www.ombudsman.jp/policedata/050527.pdf

・高知県警捜査費(国費)情報公開訴訟 高松高裁判決 06/9/29http://www.ombudsman.jp/policedata/060929.pdf

・高知県監査委員「監査結果報告書」 平成18 年2月22 日http://www.pref.kochi.jp/~kansa/toku.pdf

・高知県警「調査結果報告書」06/9/20http://www.i-kochi.or.jp/hp/kenkei/keimu/sousahimondai.htm

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