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岩手県公安委員会 裁決書

最終更新時間:2005年04月25日 09時04分08秒

平成17年4月19日付で、岩手県公安委員会は、開かれた行政を求めるいわての会(市民オンブズマンいわて)の審査請求を棄却しました。これは岩手県情報公開審査会が一部開示の答申を出していたものです。審査請求書はこちら(市民オンブズマンいわてのページ)

 裁決書

平成17年4月19日 岩公委発第31号

住所 盛岡市内丸6−15 EST21ビル2階佐々木法律事務所内

不服申立人 開かれた行政を求めるいわての会

会長 井上 博夫

平成16年7月2日付で申立てのあった審査請求(平成16年5月21日付け岩捜一第223号、同日付け岩捜二第73号、同日付け岩鑑第73号、同日付岩手務第99号及び同日付け千務第123号による行政文書部分開示決定処分に係る審査請求)について、次の通り裁決します。

主 文

本件審査請求は、これを棄却する。

理 由

別紙の通り

平成17年4月19日

岩手県公安委員会


別紙 理由

1 審査請求に対する岩手県情報公開審査会答申の趣旨

岩手県警察本部長が審査請求人に対して行った処分のうち、次の部分については開示すべきであるが、その他の部分については非開示が妥当である。

平成13年3月31日以前に作成し、又は取得した行政文書を除き、

  • (1)現金出納簿の非開示とした部分のうち、月分の捜査費(報償費)の受入に係る年月日欄、摘要欄、収入金額欄、支払金額欄及び差引残高欄の記載事項並びに月分計及び累計に係る摘要欄、収入金額欄、支払金額欄及び差引残高欄の記載事項及び締めに係る印影
  • (2)捜査費証拠書中の捜査費総括表の非開示とした部分のうち、「前月より繰越額」等各金額記載欄の金額
  • (3)捜査費証拠書中の捜査費支出伺の非開示とした部分のうち、勤務課署名及び取扱者欄、補助者欄、出納簿登記欄の印影
  • (4)捜査費証拠書中の支払精算書の非開示とした部分のうち、宛名、勤務課署名及び取扱者欄、補助者欄、出納簿登記欄の印影

2 岩手県情報公開審査会答申における判断理由

情報公開条例(平成10年岩手県条例第49号。以下「条例」という。)第7条第2項第2号(公共の安全等に関する情報)の解釈・運用に当たっては、本号に規定する情報に該当するかどうかについての公安委員会又は警察本部長の第一次的な判断を尊重し、その判断が合理性を持つ判断として許容される限度内のものであるか(「相当の理由」があるか)否かについて審理・判断するのが適当であるとして、以下の理由により開示することが妥当であるとした。

 (1)現金出納簿

1の(1)の部分については、捜査費(報償費)支出入額(月額)の推移が、当該課署の捜査活動の活発さをある程度反映していると考えられるが、その増減の状況から、被疑者等事件関係者が逃亡又は証拠隠滅等の対抗措置を講じるなど犯罪捜査に支障が生じるおそれがあることや、謝礼等の多寡が知られることにより情報提供者等との協力関係に悪影響を及ぼすなどのおそれがあるとまで認めることはできない。

 (2)捜査費証拠書のうち、

ア 捜査費総括表

1の(2)の部分については、前述2の(1)と同様に、犯罪捜査に支障が生じるおそれがあるとまで認めることはできない。

イ 捜査費支出伺

1の(3)の部分については、それぞれの担当者が、一般的な会計処理の決裁あるいは確認をするため押印しているものと認められ、公にすることにより公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれが生じるとは認められない。また、これらの欄の決裁あるいは確認は、警部以上の警察職員が行っていることが認められるが、職務の遂行に係る情報に含まれる職員の氏名については、行政の責務として、県民の要請に応じ公表することとしていることから、個人に関する情報としては非開示とされないものである。

ウ 支払精算書

1の(4)の部分については、前述2の(2)イと同様に開示とすることが妥当である。

3 公安委員会の判断

 (1)岩手県警本部長が審査請求人に対して行った処分のうち、岩手県情報公開審査会が、答申において、非開示が妥当とした部分について

答申における審査会の判断と同様、当公安員会においても、非開示が妥当とした情報については、公にすることにより、特定の事件の捜査状況が把握され、被疑者等事件関係者が逃亡や証拠隠滅等の対抗措置を講じるなどの可能性を否定できず、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると警察本部長が認めることにつき相当の理由があるとした原処分が妥当と判断した。

 (2)岩手県警察本部長が審査請求人に対して行った処分のうち、岩手県情報公開審査会答申において開示すべきであるとされた部分について

諮問実施機関は、非開示部分について、平成16年8月4日付で提出した「理由説明書」により、その非開示理由を述べているが、答申においては、開示すべきが妥当であるとの結論の前提となるべきこれらの説明等に対する当否の具体的判断理由が述べられていない。

また、答申では、審査会の判断は、仙台地方裁判所が平成15年1月16日に言い渡した判決と同旨であるとしているが、同判決については、宮城県の条例に則したもので、本件とは異なる事案についての判決であり、本件処分の妥当性の判断に当たり、同判決によらなければならないというものでは必ずしもないと考える。

したがって、当公安委員会として、これらの部分に関する条例第7条第2項第2号の該当性について、公共の安全と秩序の維持に関する情報の開示、非開示の判断に関し、犯罪等に対する将来予測としての専門的かつ技術的判断を要する特殊性があることから、実施機関に第一次判断件が付与されていると解すべき事をも踏まえ、当該第一次的な判断が合理性のある判断として許容される限度を超えるか否か、すなわち、当該処分が裁量権を逸脱又は乱用したと認められるか否かについて、改めて検討した。

以下、答申において開示すべきとされた点について述べる。

ア 現金出納簿の非開示とした部分のうち、月分の捜査費(報償費)の受入に係る年月日欄、摘要欄、収入金額欄、支払金額欄及び差引残高欄の記載事項並びに月分計及び累計に係る摘要欄、収入金額欄、支払金額欄及び差引残高欄の記載事項及び締めに係る印影について

現金出納簿は、現金経理である捜査費について、受入と支出の明細を明らかにするため、執行順に記載している文書であるが、各課署別の捜査費(報償費)の支出入額(月額)の推移が、当該課署の捜査活動の活発さをある程度反映していると考えられることから、これら月別の捜査費執行額を開示すれば、被疑者等事件関係者が、月分の執行額と被疑者等事件関係者自らが有する情報、報道その他の情報等とを比較・分析することにより、捜査状況等について推察される可能性が相当程度高まることは否定できないものと認められ、これらの情報を公にすることにより、犯罪捜査に支障が生じるおそれがあると実施機関が判断したことが著しく不合理であるとは言えないと考える。

イ 捜査費証拠書中の捜査費総括表の非開示とした部分のうち、「前月より繰越額」等各金額記載欄の金額について

アで述べたとおり、当該所属の月ごとの執行状況が明らかになれば、被疑者等の事件関係者、暴力団組織、過激派組織等の捜査対象者からすれば、特定所属の担当部門の捜査活動の活発さ、進展状況の動向を推察することができる有益な情報となるもので、発生した犯罪の内容は報道振り及び被疑者等の事件関係者が持つ犯行の具体的内容、犯罪における経験則から抱く情報とを比較・分析することにより、自らが持つ情報の確実性を増大させ、結果として逃亡及び証拠隠滅等の対抗措置を講じるなど、犯罪捜査に支障を及ぼすおそれがあるものと認めた実施機関の判断が著しく不合理とは言えないと考える。

ウ 捜査費証拠書中の捜査費支出伺及び支払精算書の非開示とした部分のうち、勤務課署名及び取扱者欄、補助者欄、出納簿登記欄の印影について

原処分においては、捜査費支出伺及び支払精算書を公にした場合、犯罪捜査に支障が生じるおそれがあると実施機関は判断しているものであるが、これらの文書の個々の記載事項について、各事項の非開示情報該当性を網羅的に取り上げて示すことはしていない。これは、捜査費支出伺及び支払精算書のそれぞれに記載された事項が独立した一体的な情報をなすものと解しているからであり、決定においては当該一体の情報が記録されている文書の中に非開示情報に該当する情報が含まれていることを示せば足りることから、決定の内容自体は妥当なものと認められる。

したがって、独立した一体の情報の要素たる記載事項の個々についてこれを公にするか否かについては、決定の内容と言うよりも、決定に基づく当該文書の提示の様態の問題と言うべきである。

そこで、部分開示について定める条例第8条に即して検討すると、捜査費支出伺、支払精算書、支払精算書の添付書類としての領収書等は、それぞれの文書に記録されている各事項が独立した一体的な情報をなすものとして、作成されているものである。条例においては、第7条第2項第2号の非公開事由に該当する独立した一体的な情報をさらに細分化し、その一部を非公開とし、その余の部分にはもはや非公開事由に該当する情報は記録されていないものと見なして、これを公開することまでもを実施機関に義務づけているものと解することはできないため、条例第7条第2項第2号に該当する独立した一体の情報を記録した文書である捜査費支出伺及び支払精算書全体を非開示としたことが違法であるとは言えない。

このような場合に、実施機関において、情報を細分化して各事項ごとに非開示情報該当性を判断し、各事項ごとに墨塗り、被覆等するなどして文書を閲覧等させる措置が可能な時に、任意にこのような措置を講ずることは差し支えないと考えるが、取扱者欄、補助者欄、出納簿登記欄の印影及び捜査費の勤務課署名について、仮に、あえて情報を細分化してこれらを開示することとしたとしても、慣行として公にされている公知の事実を公にするにとどまることを合わせ考えれば、これら情報を細分化して各事項を任意に開示して提示しないことが不当であるとは言えない。

上記を踏まえ、岩手県公安委員会は、答申によって開示すべきとされた上記の各項目について、実施機関の原処分が妥当と判断する。

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