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北海道情報公開審査会の意見陳述

最終更新時間:2006年04月25日 10時39分27秒

2006年4月24日(月)午後1時から北海道庁別館において標記審査会での意見陳述が行われました。

この参考人意見陳述は、札幌の市川守弘弁護士が対処している北海道警察本部生活安全部銃器対策課の「公文書一部開示決定処分」に対する審査請求の過程で、原田・齋藤が参考人として意見陳述することになったものです。

稲葉元道警警部についても同審査会は意見聴取を予定していましたが、本人が応じない意向を示したため実現しませんでした。

以下、原田・斎藤氏の意見陳述書。


意 見 陳 述 書

北海道情報公開・個人情報保護審査会御中

原 田 宏 二

 1 裏金システムの実態と情報非開示の真意

私は、平成7年2月、38年間勤務した北海道警察を退職しました。その間、平成3年10月から2年間、北海道警察本部防犯部長(現生活安全部長)として勤務した経験があります。

当時防犯部では、旧銃器対策課が所管していたけん銃摘発の業務は保安課が所管しておりましたが、平成5年4月に銃器対策課の前身である銃器対策室が発足しました。

当時、防犯部各課には裏金システムが存在していました。

各課で作られた裏金の一部は、防犯部長経費として上納され、防犯部長のヤミ手当て、各種会合の費用、餞別などに当てられていました。

裏金の財源は、国費捜査費、捜査用報償費、旅費などの予算で、カラ出張、架空の協力者謝礼の支払いなどの方法で裏金が作られていました。

裏金は、次席が現金を保管し裏帳簿で出納管理をしていました。支出先は、幹部のヤミ手当、官々接待や部内の各種会合の費用、餞別、各課の運営費などです。なお、こうした裏金システムは、防犯部だけではなく道警全体のものでした。各課の庶務係は、次席の指揮の下に、不正を隠蔽するため課員の出勤簿の管理、架空の会計書類の作成など会計検査院等の検査に備えることが重要な仕事でした。

私は、銃器対策室の発足にともない、協力者や捜査費の管理の抜本的な見直しが必要と考え、保安課の幹部にその検討を指示したことがあります。

前任地の旭川中央警察署での体験から、裏金システムの存在に疑問を感じ始めていましたし、けん銃の摘発を強化するためには、情報の収集管理体制の整備と捜査費を本来の使途に有効に使うべきだと考えたからです。

当時は、警察内部には金を使って情報を買うといった発想が希薄でしたし、協力者の獲得や運用は、現場の捜査員の力量に任されているのが実態でした。  

こうした現状を放置することは、情報収集活動に違法な取引を生み出す恐れがあり、将来必ず問題が起きると考えたからです。

元来、日本人の多くは、警察に協力して報酬を受け取るといった考えを持ってはいません。

警察としても、ある組織を裏切って警察に情報を渡してくれる相手を作ることはそう簡単なことではありません。

相手に報酬を受け取らせる、つまりその組織を裏切らせるまでには、相当な時間がかかりますし、そのための技術が必要なのです。

協力者の組織的な管理運用と捜査費を実際の捜査に使うようにするためには、部内の意識改革、裏金システムの解消、捜査員の技術の向上などの改革が必要でした。

そのきっかけを作るため防犯部の会議で餞別の廃止を提案したこともありました。

しかしながら、こうした考えは少数派であり、裏金システムが道警全体の問題であったため、防犯部だけで是正することは困難でした。結局は実現することはありませんでした。

退職してからの平成15年11月に旭川中央署の裏金疑惑が発覚し、在職中に存在した道警の裏金システムがいまだに続いていたことを知りました。

残念ながら、その後の道警の内部調査、監査委員の監査、そして裁判などでも次々とその実態の一部が明らかになりました。

しかし、これは氷山の一角で私が体験した警察の裏金の実態とはほど遠いものでした。  北海道警察は、会計書類の一部非開示の理由として、「捜査上の支障」を理由としています。

 しかし、その真意、非開示の最大の理由は、裏金システムという犯罪行為が発覚することを防ぐためであることは明白です。

 それは、会計書類に記載されている内容が事実とは異なる虚偽の内容だからです。

 私の体験でも、予算経理の監査、特に会計検査院の検査の際は、組織を上げてその準備に取り組み、裏金が発覚することを防いでいました。

会計検査対策で何が行われていたかは、先に発覚した道警北見方面本部警備課の隠蔽工作の例を見ても明らかです。このやり方は、決して北見方面本部警備課だけで行われたものではありません。道警の全所属で行われたことなのです。

私も在職中には、防犯部生活課長として架空の事件をでっち上げ会計検査院の検査などをごまかしました。

会計検査院も捜査費の使用先の調査までは踏み込んでくることもなく、不正が発覚する心配はありませんでした。

検査対策の指導に当たっていたのは、警察庁の会計課であり、道警本部、方面本部の会計課であることは言うまでもありません。

道の監査委員による監査は、形式的で書類さえ揃っていれば問題はないとされていました。実質的な監査は行なわれていませんでした。

つまり、道の予算に関してはほとんどノーチエック状態で執行されていたのが実態です。

ところが、全国各地で警察の裏金疑惑が発覚して、市民オンブズマンなどによる情報公開請求が頻繁に行なわれるようになり、こうした裏金システムの実態が次第に白日の下に暴かれつつあります。

法律の執行者としての警察、正義の味方を標榜する警察としてはあってはならないことです。

裏金システムの隠蔽、これが、情報開示請求に対して、警察が閉鎖的な態度をとる最大の理由です。

更に、北海道警察が会計書類を非開示にせざるを得ない根本的な理由があります。

北海道警察は、何をもって捜査費の支払対象である捜査協力者とするのか、「捜査協力者」の定義を具体的に明らかにしていませんでしたし、その存在を明らかにすると生命などに危険が及ぶ協力者(危険な協力者)がどのくらい存在するかなど、「捜査協力者」の実態を一切明らかにしていません。

実は、そうした「危険な捜査協力者」は、捜査書類にさえ登場しません。時には裁判で偽証をしてまでも隠そうとします。「危険な捜査協力者」は絶対に会計書類には登場しません。

私は、元来こうした「危険な捜査協力者」と「一般の協力者」とを同じ会計処理原則で扱うこと自体に、根本的な問題があると考えています。

こうした問題を解決しない限り、適正な会計書類が作成されることを期待することはできないと考えています。

仮に、こうした「危険な捜査協力者」が存在すると主張するなら、しかるべき機関、例えば情報審査会のような機関、による厳正な審査を経て、極めて限定された限度で非開示を認めるような制度が必要であると考えます。

無論、これとてあくまでも警察が国民の信頼を得ているという前提に立ってのことです。現在のように、道警が予算執行に関して3億9000万円もの使途不明金を出すようでは、これさえ認められません。何故なら、捜査費はその執行を道民から委託された税金だからです。

平成18年3月2日、東京地裁で外務省が不開示とした報償費(外交機密費)についてほぼ全面開示を命じる判決が出されました。

この判決は、外務省による「外交上の支障」という理屈が認められなかったことを示しています。

警察が、「捜査協力者」の全てを「危険な捜査協力者」のように喧伝し「捜査上の支障」という大網を被せて公開しないのは、時代錯誤であり間違っています。警察が捜査費の執行が適正に行われていると主張するためには、「捜査協力者」の定義を具体的に明らかにし、謝礼の支払基準や非開示にすべき「危険な捜査協力者」の範囲を限定するなどの措置が必要でしょう。

予算執行の透明性を高めるべきだとする要求は、警察だけを例外とすることが許されない時代になったことを表しています。もはや予算を使う側だけの恣意的な基準で非開示にすることは認めるべきではありません。

 2 警察官の氏名を非開示にすることについて

犯罪捜査において、警察官は顔をさらして捜査しています。被害届けの受理、現場での聞込み、被疑者の逮捕、捜索・差押、取調べなどあらゆる場面で捜査の利害関係者と面接しています。

時には、相手に名刺を渡して協力を依頼することもしばしばです。

 暴力団犯罪などの組織犯罪を摘発でもこれは全く同じです。

捜査対象になった組織では、その事件の捜査担当者が誰であるかは知っています。秘匿することは不可能なのです。

 私は、警察官が捜査対象者などから危害を加えられたという事実は知りません。ましてや会計書類から警察官の氏名等がもれ、その警察官に危害が及んだことなどは一度も聞いたことがありません。

 仮に、捜査の対象になった個人や団体が警察官に危害を加えることを意図するなら、いつでも警察官の氏名等を知ることが可能です。会計書類を見る必要などはありません。

 会計書類に記載されている警察官の氏名などを非開示にする理由は、別のところにあります。

開示請求した相手、例えば、マスコミや市民オンブズマンなど、がその警察官個人を裏金追求の対象にしたり、訴訟で証人出廷を求められると困るからです。

先に行われた道の監査委員の監査では、当初、道警は捜査員に監査委員が事情聴取することを拒否していますし、宮城県警は、知事が要求した捜査員からの事情聴取を拒否しています。

道の監査委員の監査では、多くの現場の警察官が裏金システムの実態を監査委員に話していますし、先に公表された高知県監査委員の監査結果では、監査委員が捜査員からの事情聴取から多くの矛盾点を指摘しています。

最近、捜査費の執行に関連する訴訟で、警察官が裁判で証言したことからも裏金の実態が徐々に明らかにされています。

警察はこうしたことを避けたいのです。

 私は、現場の警察官が現場では堂々と顔を晒して仕事をしているのに会計書類の名前が開示されることを避けるのは矛盾していると思います。

警察官の階級によって氏名を明らかにしたり、しなかったりする理屈も理解できません。

時には、警察官の仕事に危険が伴うことは事実です。警察官は、そのために特殊な訓練を受け、武器を所持しています。

平成15年12月の仙台高裁は、食糧費・旅費などの文書警部補以下の氏名の開示に関して「捜査上の支障があるとはいえない」との判決を出しています。

警察官が捜査費等の公金を使って仕事をするときには、公金の使用者として、その執行に関して責任を持つべきであると考えます。

現場の警察官は、身の危険があるからという理由で責任を回避するようなことはしません。捜査費を適正に使っているなら、どこででも、誰にでもきちっと説明できるはずです。

警察が、捜査費を使った警察官の名前を隠すのは、裏金システムを隠蔽するためであります。

 3 銃器対策課・平成の刀狩りの実態について

私が在職中の平成4年頃から、警察庁の指示で全国的にけん銃の摘発が強化されました。

全国の都道府県警察では、なりふり構わないけん銃の摘発が繰り広げられました。私はこれを平成の刀狩りと名づけています。

平成7年には警察庁長官が狙撃されけん銃摘発はピークに達しました。そして、道警の元銃器対策課稲葉警部が逮捕された平成14年で終止符が打たれました。この間、全国で稲葉元警部をはじめ、多くの警察官が違法捜査の責任を問われ職を追われました。

けん銃の摘発は、警察の仕事の中でも最も難しい仕事の一つです。

捜査の対象のほとんどは暴力団ないしはその関係者やその周辺にいる人物であり、けん銃は深いヤミの中に隠匿されているからです。

こうした相手からけん銃に関する情報を取るのは至難の業です。いかに多くの協力者を確保して、情報を入手するかが勝負になります。

警察に情報を提供する協力者は、その組織を裏切るスパイですから、警察としては、協力者の秘密を守り生命の安全を確保する必要があります。

協力者に渡される謝礼の額は、相手の地位、生活程度、情報の価値、危険性の度合い、事件検挙の可能性などで決ります。

危険性の度合いによってはそれに見合った安全保障が必要です。そのために捜査費が使われることもあります。

ところが、私の在職中は、こうした基準はありませんでした。

それは、先に述べたように情報を買うといった発想がなく、捜査費が裏金に回されていたからですが、現場の捜査員に捜査費が潤沢に行き渡らないとなると、現場では情報提供者の違法行為を見逃すという取引が行われることになります。この事例は、枚挙に暇がありません。

稲葉事件の裁判でも、稲葉元警部は、違法なけん銃摘発と捜査費の運用の事態を詳しく述べています。

銃器対策課では、捜査費は、1丁摘発したときはいくらという実績支給であったことを明らかにし、生活安全部各課の予算の15%が部長経費としてピンはねされていた、と述べています。

北海道新聞の取材に対して同課に在籍した複数の捜査員が「捜査費の大半が裏金になっていた」と話したとされています。(平成16年3月1日 北海道新聞)道警の内部調査でも平成10年度、11年度、12年度に不適正な予算執行があったことを認めています。

このほか、こうした実態については、私が書いた「警察内部告発者」や曾我部司氏の「北海道警察の冷たい夏」に詳しく書かれています。

銃器対策課で横行していた違法なけん銃の摘発の中で捜査協力者はどう扱われていたのでしょうか。

銃器対策課で捜査したいわゆる「小樽事件」(平成9年11月、けん銃の不法所持でロシア人船員を逮捕したが、捜査員たちが、現場にいた捜査協力者のパキスタン人は現場にはいなかったと後の裁判で偽証。事件は起訴猶予)の事例は、捜査員が、偽証してでも協力者を秘匿することを示しています。そしてそれは銃器対策課の幹部も承知のうえで、組織的に行われたのです。

先に述べたように「危険な捜査協力者」の名前などは意図的に捜査報告書などに記載しないという顕著な事例です。

無論こうした隠ぺい工作は銃器対策課の上層部も承知して行なわれました。

銃器対策課の捜査協力者の氏名などが捜査に関係のない会計職員の目にとまることになる支出関係書類に記載することはありません。

警察の外部に知られることよりもまず内部に知れることを恐れます。

しかし、一方では銃器対策課の幹部が、堂々と捜査協力者の結婚披露宴に出席しているなど、捜査協力者と警察の関係を公然化している事実もあります。このことは銃器対策課の捜査協力者の管理が極めて杜撰なものであったかを示しています。

さて、銃器対策課が中心となって作り上げた道警の拳銃摘発実績は、平成10年(34丁)、平成11年(39丁)、平成12年(32丁)、平成13年(57丁)、平成14年(12丁)となっています。

稲葉元警部は、そのほとんどが、ヤラセ捜査による「首なし拳銃」であったと述べています。平成14年が、激減しているのは、稲葉元警部がこの年の7月に逮捕されたためです。

「首なしけん銃」とは、実際のけん銃の所持者を隠してけん銃だけを押収するやり方で摘発したけん銃のことを言います。

ときには、他府県の事例では、捜査協力者である暴力団員などに拳銃を買わせて押収するなど違法捜査もありました。

警察庁の音頭で展開された平成の刀狩りでは、銃器対策課では実績を挙げるため多くの違法捜査を行なったのです。

警察の裏金システムの特徴は、全ての捜査費等や旅費を実態のない架空の内容でいったん裏金化することにありますから、会計書類に銃器対策課で運用していた捜査協力者の名前が載ることはありません。

そこには架空の人物か、実在していても捜査とは全く関係のない人物が書かれることになります。

加えて、銃器対策課のけん銃摘発のほとんどが違法捜査によるものであるとすると、それに関与した協力者の名前が会計書類に登場する可能性は皆無です。

このように、違法捜査を支える協力者の管理と裏金システムに組み込まれた捜査費の管理は、分離せざるを得なかったのです。

これが、道警の銃器対策課の実態であります。

更に付け加えるなら、銃器対策課の実績が、「首なしけん銃」によるものがほとんどであったならば、銃器対策課で長期の内偵捜査といった本格的な捜査が行われていたとは考えにくいことです。

平成14年4月以前、つまり今から4年以上も経過した現在も被疑者の逃亡、証拠隠滅等の対抗措置等が行なわれ、捜査上に支障が生じるケースを私はにわかに想像さえできません。

殺人事件などの捜査本部事件ないざ知らず、けん銃の摘発で4年以上も未解決のままというのは考えにくいところです。

もし、そうした事件が存在するならば、可能な範囲でその実態を明らかにし、その事件に関する捜査費が適正に運用されていたことを主張するべきです。

 4 旅費について

 私の体験では、旅費は裏金の最大の原資でした。裏金対象になっていた予算費目のうち道費の83% 国費の70%が旅費でした。

これらの旅費は、正規に執行するときには旅行命令簿により所属長が決裁することが必要です。

私は、署長や課長職を何度も務めていますが一度も旅行命令簿の決裁をした経験がありません。いったん全てを架空の旅行命令簿を作成して裏金化して、その所属のNO2の次席や副署長が管理していました。

 捜査などで部下を出張させるときには,その裏金から必要な経費を渡していました。それも正規の金額を下回る打ち切り旅費でした。

 その後、旅費は警察官の個人口座に振り込みされるようになりましたが、それでもその預金通帳をその所属で管理したり、振り込まれた旅費をバックさせるなどの方法で裏金にしていました。

このことは、銃器対策課に在籍した稲葉元警部の預金通帳で明らかにしています。

 さて、捜査員が捜査のためどこかに出張した事実が、事後に外部に知れたときに捜査上どんな支障があるのか、私には理解できません。

私は、捜査員を出張せることが事前に漏れることにより、犯人に逃走されたり,マスコミに察知され記事になることを、常に意識して秘匿するようにしていました。

しかしながら、旅行命令簿の全てが架空の出張ですから、その旅行命令簿が外部に漏れても捜査上の支障が生じる懸念は全く無いのです。

 仮に、正規の出張をさせて正規の旅行命令簿が作られたとしましょう。旅行命令簿には、捜査上の秘密にわたる事実が書かれているとは思えません。

書かれているのは、旅行した警察官の氏名、旅行日時、行き先の都市名、旅行手段、旅費の金額くらいでしょう。いったいどこに捜査上に秘密が書かれているのか理解できません。ましてや、旅行は終り捜査も終わってしまっています。

旅行命令簿には、旅行先で捜査員が接触した協力者の名前が書いてあるわけではありません。

 何故、警察は旅行命令簿の開示を避けるのか。その理由は、最大の裏金の原資である旅費の執行実態が明らかになるのと困るからです。

 旅費の裏金化については、道の監査でも明らかになっていますし、静岡県警でも、ごく最近では宮城県警の総務課で明らかになっています。

旅費関係書類の非開示の理由は、出張したことになっている捜査員に直接調査の手が及ぶのが一番困るからです。それ以外に理由を私は見つけることが出来ません。

 5 捜査裵雑費について

私の在職中はこうした捜査裵雑費の制度は在りませんでした。したがって私の体験としてお話することは出来ません。

これまで現場の捜査員から聞いたことを中心にお話します。

平成13年度から捜査裵雑費制度がつくられて、現場の捜査員に現金の交付が行われるようになったのは事実のようですが、それが現場で実施されるようになったのは、旭川中央署の問題が発覚した平成15年度以降のことだと現場の捜査員は話しています。

以来、突然のように現場に捜査費が渡されるようになり、それを使う側の捜査員に戸惑いがあります。

それは、捜査費を渡すべき捜査協力者とは何かが現場には説明されていないことと、金で情報を買うという発想も技術も現場にはないからです。

捜査裵雑費は、主として捜査員の交通費、携帯電話の通話料、協力者への手土産代、協力者との飲食代などに使われているようですが、私が会った何人かの捜査員は、地下鉄のウイズユーカードを仕事に使うものと私的に使うものとを区別したり、仕事に使うケイタイを別に用意して管理していました。

物品を協力者に謝礼として渡す場合は、物品の購入した際のレシートでよいことになっているため、捜査員の中には、私的な品物を購入したり、捜査員の仲間同士の飲食に使われたり、家族が購入した品物のレシートを利用している者もいるようです。

部下にレシートを集めさせ、それを使って裏金を作りプールしている幹部もいると聞いています。つまり、それまで、上層部が行っていた裏金つくりを現場がやっていることになります。

捜査裵雑費制度がなかった平成12年度以前は、捜査費等(捜査報償費を含む)は、全額裏金化され、そのごく一部が現場の捜査員に「何に使っても良い金」として渡されていました。

いわばヤミ手当てのようなものです。警部1万円、警部補5千円、巡査部長3千円などその金額は所属によってまちまちでした。警察署では係りごとに一括して渡されていました。それが、現在の捜査裵雑費に当たります。当時は、現場の捜査員は、その見返りにニセ会計書類を作らされていました。

ところが、平成13年度以降,捜査裵雑費制度が導入されて以来、それまで領収書が必要であった捜査協力者に支払われていたとされていた協力者謝礼が、わずか2割前後になり、8割が捜査裵雑費の支出になったのです。捜査裵雑費はレシートだけで執行が可能で、支給した相手の領収書は不要であると聞いています。

つまり、架空の協力者に支払ったとされていた協力者謝礼は、たとえニセ領収書ではあっても、領収書が必要でした。領収書の要らない捜査裵雑費の執行が、捜査費等の予算の8割となると捜査費等のほとんどが領収書なしで執行されることになります。

ところが、道警では捜査諸雑費のレシートについても公開すると具体的な捜査情報が明らかになるとして、非開示にしているようです。

これはどうして理解できません。レシートと捜査員の名前を見て捜査の内容をどうして知ることができるというのでしょうか。

このことに関連して記憶に残っていることがあります。

それは、平成18年2月に明らかにされた高知県監査委員による捜査用報償費の監査結果に示された事実です。

この監査では、レシートが開示されました。

それに基づき監査委員が支払先の店舗等の裏づけを行なった結果、捜査の内容が明らかになったのではなく、捜査用報償費が適正に使われているかどうかが疑われるような多くの矛盾が明らかになったのです。

道警が、捜査裵雑費のレシートの非開示にする理由は、捜査費の会計書類の非開示と同じように、「捜査上の支障」ではなく、開示することによって矛盾が露見し、不適正な執行が明らかになることを危惧しているからにほかなりません。


意  見  陳  述  書                               

北海道情報公開審査会 御中                                    齋 藤 邦 雄                             私は、昭和41年4月から平成13年3月までの35年間、北海道警察に勤務していた者ですが、在職中にいわゆる「警察裏金」の不正経理に関与したことがあり、その体験を次の通り申し述べます。

 1 警察本部防犯課時代

私は、昭和59年4月から昭和62年3月までの3年間、北海道警察本部防犯部防犯課(現在の生活安全部生活安全企画課)で庶務係長(警部補)として勤務しました。

防犯課での主な業務は、課の庶務全般と防犯部長の秘書的な仕事のほかに影の仕事として裏金に関する偽証拠書類作成も重要な業務の一つでした。ここの部署で、それまで知らなかった裏金作りのノウハウを全てマスターしました。

裏金の原資の一部である捜査費(国費)と捜査用報償費(道費)の証拠書類は、3年間分「情報提供協力者の住所・氏名、交付年月日・交付金額、執行捜査員」は、全て自分の創作でした。

裏金の原資の一部と申し上げたのは、旅費や需用費、消耗品に至るまで多くの科目から裏金を捻出していたのは紛れもない事実であり、捻出担当者は分業化されていました。

従って現在、北海道警察が抗弁している「捜査協力者」は個々人の捜査員は持っていても、組織として運用し正規に情報提供謝礼を支払った「捜査協力者」は存在しませんでしたから、当然、この者達に支払った情報提供謝礼は一件もありません。

経験上からして、どこの所属においても正規に情報提供謝礼を支払ったケースはない、と断言できます。

そして、百歩譲って仮に正規支払いが存在して虚偽の書類中に混在していたならば、証拠書類の作成現場は大混乱となり、受監時には多くのミスを露呈したと思われます。

ましてや「こんな予算執行はおかしい」と口に出したとたん、その警察職員の警察人生は終わると言っても過言でなく、これほどの裏金システムが生き延びて来たのは、無言の締め付けが効を奏していたからだと思います。

当然、裏金を口にすれば「組織に楯を突く人間」としてのレッテルを貼られ左遷人事に遭い、一生浮かび上がれないのは、警察職員であれば誰もが知っていることです。

(1)  動態表

  • ア 当時、防犯課の庶務係は私以下5名(警部補の私、一般職(主任)3名、非常勤1名)であり、さらに防犯部経理主幹【防犯課・少年課・保安課(後に「銃器対策課」と「薬物対策課」に分かれる)・生活課の4課の予算等を担当するほか、防犯部各課庶務係が行う裏金捻出偽造書類の指導も行う】が机を並べていました。
  • イ そして裏金作りのベースとなる動態表は、一般職の女性主任が毎月分を早め早めに作成していました。この動態表は、防犯課長以下課員全員の毎月の動きを正確に記載するものです。例えば、正規の会議出張や課員の当直、学校入校等、動かしがたい事実をはじめに記入して行きます。
  • ウ 続いて、彼女が「カラ出張」を動態表の中に適宜埋めて行くのですが、カラ出張の関係書類捏造は、彼女が全てを担当していました。
  • オ また私が証拠書類全てを作成した後に、ある課員が年次休暇を取得しているのに支払精算書等が作成されているため改ざんが無理であれば、平然と正規に取得した年次休暇を没にしていました。動態表が私に渡された後に年次休暇が提出されて、連絡の不徹底から私の把握漏れが生じ、偽造書類改ざんができないため没にした年次休暇は計り知れません。

(2) 嘘の「支払精算書」「領収書」

  • ア 前記ウまでの作業を終えた動態表コピーを自分が受け取り空白箇所に、防犯課員が情報提供謝礼を支払ったように嘘の支払精算書や領収書の下書きを作成します。
  • イ 支払精算書の書類は、防犯課の警部補以下の捜査従事者に、領収書は支払精算書を書かない他の防犯課員にそれぞれ作成して貰います。捜査に携わらない警部・警部補・巡査部長・一般職員にも偽領収書を作成して貰うのは当たり前という慣習でした。いずれにしても支払精算書と領収書の作成者を色分けするのは、監査時に筆跡で不正が発覚するのを防ぐためです。
  • ウ 毎月配分される捜査費(国費)と捜査用報償費(道費)は、カラ出張経費と合わせて全て防犯部管理官(階級は警視。防犯課の次席であり、かつ、防犯部各課の次席を取り仕切る者)が自分の机中の小型金庫で管理していました。いわゆる「裏金」です。
  • エ 自分は、庶務係主任(女性)から毎月の捜査費(国費)と捜査用報償費(道費)の配分額を教示されるのみで、この金額にほぼ一致するように架空の書類作成に従事しました。年度末の国や北海道への返戻額は、極めて少額(200〜300円程度と記憶している。)にするよう恣意的に行ったのを覚えています。この時、管理官の金庫から国庫や北海道に返納する現金を数百円戻して貰います。
  • オ 証拠書類のチェックと修正 情報提供謝礼の領収書は、必ず一件の支払い精算書に1枚が添付されるが、偽領収書にあらかじめ押印して作成依頼したため、押印した印影の上に署名される場合がありました。すると本番の監査を上手くすり抜けるための事前の監査では、
    • ・ 不自然なその領収書(日本人は署名後、押印が一般的なため)
    • ・ 日付や金額、氏名の間違い領収書 を指摘されて新たに作り直すことになります。特に現金出納簿の記入ミスがあれば1年間分の出納簿を書き直すなど修正のための労力は莫大なものでした。

(3) 架空の捜査協力者

  • ア はじめに苦労するのは、架空の捜査協力者の住所・氏名をどうするかです。
  • イ 氏名は、防犯課に保管していた数百本の印鑑(現在もあると推察します。過去に勤務した課員や何らかの形で集まった所有者不明の印鑑)から勝手に決めます。ただし、注意しなければならないのは、連続して同一印鑑を使用してはならないということです。当然、何年何月に使用したかを明記して別封筒に分けて保管したのは言うまでもありません。姓はさほど苦労しませんが名では苦労しましたし、どうしても似通った名になったのを今でも覚えています。
  • ウ 住所は、次の方法で勝手に創作しました。
    • (ア) 札幌市内 札幌勤務が長かったので土地鑑もあり、適当に作成していましたが、そのうち北海道警察本部会計課の指導で電話帳の活用を始めました。
    • (イ) 北海道内、本州 コピーされた電話帳(道内では、網走や北見地方のものがあったのを覚えています。)と「全国の警察署位置所在地・管轄区域」を記載した本(全国の都道府県警察にある)を多用しました。特にこの本に記載されている警察署管轄区域蘭には、全国の警察署が管轄する住所が克明に掲載されており、活用の頻度は高く重宝しました。当然、前述のカラ出張や正規の捜査出張に連動した嘘の「支払精算書」「領収書」を作成したのは当然です。本州では、東京・大阪などやその周辺の住所・氏名を適当に創作しました。
    • (ウ) 捜査員が正規に地方(道内外)出張しても、正規に情報提供謝礼を支払ったものは、一件も存在しません。逆に正規出張事実を知った自分は、それに合わせて架空の情報提供謝礼を組み込みました。

(4)

防犯部全ての課が同様のことを行っていましたし、捜査費(国費)と捜査用報償費(道費)の予算執行できる全ての所属が同様のことを行っていました。とりわけ今回問題となっている銃器対策課の前身である保安課時代の裏金関係書類は誰が担当していたかも全て私は知っております。詳細は後述しますが、平成15年11月まで北海道警察全体で同じことが続いていたことは間違いありません。

 2 弟子屈警察署次長時代

平成12年3月31日から平成13年3月30日までの1年間は弟子屈警察署次長兼警務課長として勤務し平成13年3月30日付で勧奨退職致しました。主な業務は、署長の補佐と警察署全般の業務・人事管理です。ここの部署では、北海道警察本部防犯部防犯課で裏金作りのノウハウを全てマスターしていたため、難なく処理できましたし、また裏金の原資である捜査費(国費)と捜査用報償費(道費)の証拠書類は、1年間分、全て自分の創作でした。北海道警察本部防犯部防犯課時代と同様、「捜査協力者」に支払った正規の情報提供謝礼は一件もありません。

(1)  動態表

  • ア 弟子屈警察署では、会計係が3名おりました。
  • イ そして動態表は、一般職の男性係が毎月分を作成していたのです。この動態表は、署長以下全署員の毎月の動きを正確に記載していましたが、内容は、防犯課時代と同様であり説明を省略します。
  • ウ なお「カラ出張」は弟子屈警察署時代、1件も部下に作成させませんでした。

(2) 嘘の「支払精算書」「領収書」

  • ア 前記イまでの作業を終えた動態表コピーを会計係から自分が受け取り空白箇所に、署員のうち刑事係・生活安全係・交通係・警備係員が情報提供謝礼を支払ったように嘘の「支払精算書」の下書きを渡して作成させます。
  • イ 支払精算書の書類は、警部補以下の捜査従事者に、偽領収書は支払精算書を書かない課長や署員に作成して貰います。小規模警察署のため領収書作成者にも限界があり、会計係長を介して他所属に依頼させたこともあります。後日知ったことですが、その所属は、釧路方面の本別警察署でした。当然ギブアンドテイクで後刻、同本別警察署からも同様の依頼が会計係長にあり、勤務の合間を縫って自署員に偽領収書の作成を依頼したと聞知していますが、その時点では私への報告もなく、またその必要もない警察組織としては、口外のできない恥部の仕事でした。
  • ウ 毎月配分される捜査費(国費)と捜査用報償費(道費)は、全て私が自分の机中に封筒に入れて管理していました。小型金庫もありましたが、一度も活用はしませんでした。
  • エ 北海道警察本部防犯部防犯課時代と違い、次長の立場で現金の管理もしていたところから、その使途は別途提出する裏金メモで明らかにします。なお私が退職時に署長に渡してきた現金(裏金の残金)61,687円は、後任次長が着任後、警務・会計係とともに宴会を催して全て費消したと聞知しています。
  • オ 作為的に減少できる領収書 北海道警察本部防犯部防犯課時代、情報提供謝礼の領収書は、必ず一件の支払精算書に1枚が添付することになっていました。ところが、弟子屈警察署に着任してそれまでの証拠書類を確認したところ、
    • ・ 協力者が後難を恐れて領収書の提出を拒否
    • ・ 名前の出るのをイヤがり領収書の提出を拒否 等、偽領収書問題が外部に漏れるのを防止するための対策が取られていました。要は偽領収書は、極力少なくて済む方策が取られており、北海道警察本部主導の恣意的な領収書減少対策を知ることになりました。
  • カ 設定書の存在 加えて、平成8年度から11年度までの「設定書」なる書類があり、内容を精査すると監査をすり抜けるため関連簿冊チェック時に威力を発揮するものが新設されていることも知ることになりました。 とりわけこの設定書には、署員の誰が国費の警備関係固定協力者(架空)に成りすまして偽領収書を作成するかまで克明に記録化されていました。 私は、この残されていた手書きの設定書をベースにして、弟子屈警察署勤務当時、仕事の合間を見てワープロで作成していたので、この設定書も別途提出しますが、平成12年度分は私が作成した設定書です。 途中で作成が中断していますが、その理由は、このようなことに労力を使うことが馬鹿らしくなり「後任者が監査時に汗を流して作ったら」的な気持ちとなり中途で止めたからです。 なお、平成10年度分は、国費と道費の分が2件づつ私物のフロッピーに文書登録されており、平成11年度分はコピーミスで存在しません。あわせて設定書の存在を北海道警察本部が、悉皆知悉していることを裏付ける通達資料(国費会計事務に係る実地監査の実施について(通知))のコピーも同様に提出します。

(3) 架空の捜査協力者

  • ア 弟子屈警察署では、電話帳をベースに活用しました。
  • イ 印鑑は、北海道警察本部防犯部防犯課当時と同様に数百本が保管されていたので、勝手に活用しました。
  • ウ 住所は、(ア)弟子屈警察署管内 (イ)釧路市内 を創作し、番地はそのままあるいは若干変えて作成、氏名は「姓」はそのまま、「名」はそのままもあるし若干変えて作成したものもあります。

 3 警察組織の抗弁に対する個人的意見

(1) 捜査協力者保護の視点

捜査協力者に迷惑がかかる、捜査上の秘密だ、と警察庁は言うが確かに一理あります。と言うのは、偽領収書を書いてくれる警察職員も彼らのいう捜査協力者です。開示を拒む理由は、

  • ・証拠資料を開示したら「架空の協力者」がばれ、警察職員にも多大の迷惑をかける。
  • ・電話帳等を参考にしたので、これを開示すると「無関係な市民」に迷惑をかける。
  • ・旭川中央警察署のように訴訟を起こされても組織としては対応に困まる。
  • ・証拠書類の協力者氏名は、ほとんど全部が捏造した「架空の協力者」であり、自分たちの嘘がばれる。

だから開示できないのであり、警察組織の言う情報提供者の保護は、それに藉口して「全国の警察組織ぐるみ不正」を隠蔽するための言い訳に過ぎません。

(2) 捜査費の執行率減少理由等

  • ア 平成17年6月14日 参議院内閣委員会で警察庁安藤官房長は「情報収集に優れたベテラン捜査員の大量退職やインターネット活用等で捜査手法が多様化した。もっと使えるように努力する。」と、この場に及んでも強がりの答弁を展開しています。 しかし減少の最たる理由は、警察裏金問題が全国的に表面化してきたため、現場が執行出来なくなったことを意味しています。事実、北海道警察では、平成15年11月末に旭川中央警察署問題が発覚するまで平然と不正を継続させていたことは、複数の道警現職が私に語っています。そして北海道警察の執行率は、平成15年11月末を境に激減しているのは間違いないことです。ただ、今後の展開・方向性としては執行率をゼロにする訳にはいかないでしょう。裏金は減少しても、信頼のおける警部昇任可能性の高い警部補や警部・警視の幹部で、偽領収書作りは続けるであろうし、支払精算書も同様幹部のみの作成になるであろうと推認されます。 また、平成13年度(私の退職直後)から導入された捜査諸雑費という科目で小銭をかき集め裏金化する手口も見逃せない、と思います。
  • イ 一方、愛媛県警察は県警捜査費問題で、粟野友介県警本部長が平成17年7月5日の県議会一般質問において不正支出を一部認めた2001年度の捜査費をすべて対象にして内部調査することに対しては「自らの問題は自らの手で解決するとの強い決意を持って行う」と北海道警察と酷似した発言を行い、外部調査の必要性をあらためて否定しました。

また04年度の捜査費執行額の減少率が全国最大だった理由を情報提供者が、存在が公になることを恐れ、謝礼を拒むようになったことなどの結果である、と説得力のない答弁に終始して外部監査を恐れていますが、これも全国の警察組織共通の現象です。

(3) 私的流用問題

警察は、私的流用発言組織を離れての私的流用は確認されなかった、との横並びの答弁に終始しています。私が提出した「裏金メモ」でも明らかな通り、当時の署長に毎月現金を手渡していたのは紛れもない事実であるにもかかわらず北海道監査委員による追及は甘く、平成17年5月に行われた北海道監査委員の確認監査でも約3億9千万円の使途不明金が存在しながら、その解明取り組みは曖昧なままの状態です。ちなみに私が退職時に署長に渡した裏金61,687円は、新次長・警務・会計係が飲食店での懇親会費に全額費消したと聞知していますが、道警の裏金問題が噴出する以前のことですから、このようないい加減な税金使途がまかり通っていたのです。

(4) 2006年度以降、監査委員には開示の逃げ切りモード

平成17年9月14日の新聞「河北新報」の掲載記事によれば『犯罪捜査報償費の支出関連文書の扱いをめぐり、宮城県警の近藤善弘本部長は13日、2006年度以降の執行分に関しては、捜査協力者に接触・確認しないことを前提に県監査委員に原則全面開示する方針を明らかにした。ただ05年度分までの文書は「協力者から了解を得ていない」と述べ、従来通り、住所、氏名などは黒塗りとする考えを示しました。しかし、私の経験則からすれば、「捜査員と協力者の間で氏名などを部外に明らかにしないとの約束」はしたくてもその捜査協力者自体が存在しません。情報提供謝礼を支払う協力者がいないのに宮城県警では、2006年度から監査委員に資料開示すると発言していることは、2006年度からの逃げ切りモード、これまでの不正を隠蔽するための諸準備態勢が整ったと読み取れます。

(5) まとめ   

北海道警察においては、組織ぐるみの不正を「不適正な予算執行」と言葉をすり替え、また不正の実態・その手口を道民の前に何一つ明らかにすることなく、恣意的に返還額を決めて国及び北海道に不適正執行額を返還しました。本件においては、北海道警察が開示決定書で「(警察官などの氏名を開示すると)警察を敵視する個人や団体からいやがらせを受けるなど警察活動に支障を来す恐れがある」と表現に微妙な変化を見せておりますが、これは支払精算書を作成した警察官が監査などで追及された場合、言い逃れができないことを恐れての口実に他なりません。これまで述べてきた私の体験からすれば、捜査員等は予算執行実務担当者の依頼により機械的に支払精算書や偽領収書を作成しているだけであり、北海道警察が非開示とする保護法益は全く存在しません。北海道警察をはじめ警察庁・全国の都府県警察は、もはや「捜査上の秘密」や「捜査協力者の保護」を人質にして逃げ回っている時勢にはない、とも思います。

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