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捜査費開示請求結果まとめ

最終更新時間:2004年09月17日 16時35分55秒

2004/8/28,29に行われた全国大会で発表した資料です。

捜査報償費関係文書情報公開請求結果のまとめ

全国市民オンブズマン連絡会議

 1, 全国一斉情報公開請求

 捜査報償費の不正支出疑惑が明らかになって以降、全国市民オンブズマン連絡会議では三件の捜査報償費関係文書の一斉公開請求を行った。請求1は1998年度-2003年度までの捜査報償費の支出に関し、どこまでの情報が公開されるかを調査したが、請求2は、不正支出疑惑の中心となった偽名領収証に関する公開請求であり、請求3は捜査報償費の適正支出についての調査をどの程度の県警で実施しているか、を調査することを目的とした請求である。

請求1  県警の3つの課の捜査報償費の公開請求

  • 実施日:2004年4月7日
  • 公開請求対象情報:1998年度から2003年度までの県警捜査1課・同2課・同鑑識課の捜査報償費の支出関係文書

請求2  偽名領収証の公開請求

  • 実施日:2004年6月7日
  • 公開請求対象情報:1998年度-2003年度に警察本部(全課)で支出した、捜査費(国費)・捜査報償費(県費)の領収書のうち、当該捜査費または捜査報償費を受領したもの以外の氏名または住所が記載されたものと情報公開請求日現在で実施機関において認識しているもの

請求3 捜査報償費の調査結果の公開請求

  • 実施日:2004年7月1日
  • 公開請求対象情報:県警本部で支出した捜査費(国費)・捜査報償費(県費)に関し、適正に支出されたかどうかの自主調査に関する一切の資料

 2,開示結果

(1)全体の傾向

 捜査費に関してこれほどまでに疑惑が指摘されていながら、結果は情報公開制度の名に値しない。とりわけ、請求1-請求2は非公開のオンパレードである。その傾向は次の三点に集約される。?情報を公開しないために、開示決定の延長からはじまり、却下などの「門前払い」の方法を含む、あらゆる手段を用いること。?古い支出ほど、公開度をやや上げること。?不正支出を認めた場合についてのみ、その一部のみを公開すること(北海道警では弟子屈署のみ一部公開した。)。しかし、公開度を上げる、とか、一部公開した、などと言っても、開示された資料では捜査費支出の相手方を窺い知ることは、まず不可能である。

(2)請求1(3課の捜査報償費の公開請求)について

 支出先を公開したところは皆無であった。最も公開度の高いところでも、捜査報償費の受入額と支払額のそれぞれ各月の総額を公開する程度であり、平成13年度以降の捜査報償費について各月の受入額と支払い額を公開してきたのは宮城県のみであった。 非公開の理由はいうまでもなく「捜査上の秘密」である。しかし、月毎の総額を明らかにすることがなぜ捜査上の秘密を害することになるのか、理解できない。 なお、島根県警は捜査報償費全体については決定を今年(2004年)12月末日まで延長してきている。同県警は偽名領収証についてはすでに非公開決定を出しているのである。これは世論の沈静化をねらった、とみることが自然である。

(3)請求2(偽名領収証)について

? 開示結果

 47都道府県中、一部でも情報を公開したのは、北海道警の弟子屈署の文書のみであった。14県は却下または拒否・不受理などの門前払い。福岡県は10月22日まで公開を延長してきたため、開示決定すら出されていない。 公開対象文書の指示文言を全国共通として請求したにもかかわらず、結果はばらばらである。しかも、なぜこの理由でこのような処分が許されるか、珍処分と言って差し支えないようなものも多い。このような処分は、情報を公開しないことを第一に考え、理由はあとからつけた結果ではないだろか。以下、結果を詳しく指摘する(()内は都道府県の数。)。

  • 【一部開示(1)】北海道(弟子屈署のみ)
  • 【全面非公開(不開示・非開示)(27)】岩手・茨城・群馬・埼玉・東京・富山・福井・山梨・岐阜・静岡・愛知・三重・滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山・鳥取・島根・岡山・山口・香川・愛媛・熊本・大分・沖縄
  • 【不存在または文書不存在を理由とする非公開(5)】北海道(弟子屈署を除く)・宮城・新潟・長崎・鹿児島
  • 【却下(11)】青森・秋田・山形・福島・栃木・千葉・石川・長野・広島・佐賀・宮崎
  • 【拒否・不受理(3)】神奈川・徳島・高知
  • 【決定延長(1)】福岡

? 全面非公開の内容

 全面非公開とした27都府県についても、形式上の不備を理由とするものと捜査上の秘密などの実質を理由とするものとが存在する。

  • 【全面非公開A 形式上の不備】

請求内容を特定していないなど、形式上の不備を理由とした府県(23)岩手・茨城・群馬・埼玉・富山・福井・山梨・岐阜・静岡・愛知・三重・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山・鳥取・島根・岡山・愛媛・熊本・大分・沖縄しかし、「請求が特定されていない」という形式上の不備があるかどうか以前の問題として、そもそも、請求が特定されていない場合にどのような条例上の根拠で全面非公開処分に至ったのか、十分な理由が付記されているとは言い難い処分例が多い。最たるは愛媛県である。愛媛県は条例上の根拠を全く示さないまま、非公開、とする暴挙に出た。なんと乱暴なことか。

  • 【全面非公開B 実質的な理由】

請求が特定されていることを前提として、非公開とした都県(4):東京都・滋賀・山口・香川

? 情報公開請求の対象文書の特定について

 偽名領収証の公開請求に対する決定の多くは、対象文書を特定していないことを理由とする非公開(23)、却下(11)、拒否・不受理(3)である。

 しかし、単に「偽名の領収証」の公開請求をした場合ならともかく(偽名かどうかを選別するためにはあらたな調査を要する)「当該捜査費または捜査報償費を受領したもの以外の氏名または住所が記載されたものと情報公開請求日現在で実施機関において認識しているもの」という請求をしたのである。かかる文書の存在を実施機関が認識していない場合には、文書不存在、となるだけであって、対象文書を特定していない、ということにはならないのではないか。

 また、却下、拒否、不受理、といった処分についても、却下、拒否、不受理とすることが実際に条例に定められていなければ違法な処分になる。

(4)請求3

 請求3については、監察の調査中間報告の一端を公開してきたのは福岡県、調査の内容は別として、なんらかの自主調査資料を(一部)公開してきた県が新潟県、静岡県、香川県、愛媛県の4県でしかない。

 反対に自主調査していないことを理由に情報を公開しない都県は岩手、秋田、群馬、千葉、東京、佐賀の6都県、調査結果を作成していない、または調査結果を県警で取得していない(または自主調査の資料がない)と答えた府県は茨城、栃木、埼玉、神奈川、富山、福井、愛知、三重、大阪、兵庫、奈良、和歌山、大分、沖縄の14府県である。少なくともこれら20の自治体は捜査報償費の適正な支出の調査自体に対してきわめて無関心と言わざるを得ない。

 3 まとめにかえて

 これほど捜査報償費についての問題が指摘されていながら、多くの県警は特別な調査をしないまま、世論が通り過ぎるのをじっとまっている状況にある。 この体質を支えているのが情報の非公開であることは明らかである。不正が市民の目に触れないことがなおざりな調査を許容し、情報が公開されないことが不正の温床となる悪循環を生じさせている。 警察の不正を問題とするためには、他の様々な方法とあわせ、警察情報の公開をすすめるために、違法な処分に対しては、果敢に取り消し訴訟(情報公開訴訟)で非公開の壁を破ることが必要ではないだろうか。 以上

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