最終更新時間:2006年10月26日 19時26分50秒
高知県警の捜査費裏金疑惑の不起訴処分に対し、市民オンブズマン高知が検察審査会に申し立てしていた件で、高知検察審査会は06/10/18に「不起訴不当」の議決を行いました。全文はこのページの下に載っています。PDFは以下。http://www.ombudsman.jp/policedata/061025.pdf
県警の裏金疑惑につき検察審査会で「不起訴不当」が出たのは北海道警に続き2件目です。(「起訴相当」は静岡県警で出ています。)
これは、高知県警の内部文書とみられるものに、捜査第1課の警察官が捜査協力者に現金を渡していたことが書かれているのに、渡されたはずの人は受け取っていなかったり、すでに死亡していたということで、市民オンブズマン高知が2003/7/24に高知地検に県警捜査一課長らを虚偽公文書作成・同行使、詐欺の疑いで告発していた件です。高知地検が05/8/22に不起訴処分にしたことにつき、検察審査会に異議申立を行っていました。
高知検察審査会は以下のように述べ、検察官の捜査には不足があると言わざるを得ず、不十分な捜査結果に基づく不起訴処分には納得できないとしています。
1.申立人らが入手した捜査費執行状況等一覧表は、県警本部の内部資料ではないかという疑いは払拭できない。よって、作成経緯を明らかにする必要がある。
2.検察官は、情報提供者に対し、事情聴取する必要性がないと判断し、実施していない様子。しかし、一人の提供者に対しても面談等実施せず、真に提供料が支払われているか確認していないのは納得できない。
3.情報提供料を捜査員に交付する手順に関し、いささか疑問。また、情報提供者から得た情報が、捜査にどの程度反映されたか等も明らかにされておらず、検証の必要あり。
4.捜査費が平成12年度から急激に減少している理由を調査することで新たな事実を見つけられるのではないだろうか。
5.検察庁での取り調べの際、一部の被疑者について、研修中の県警職員が同席していたのは圧力をかけるためとの疑いもぬぐえず、供述内容に疑問が残る。
6.県の特別監査は、「?支出の実態がないと判断するもの、?支出が不適正と判断するもの?支出が不自然で疑念のあるもの が数多く見られた」と結論づけられている。国費捜査費もほぼ同じ執行状況と考えられるから、再度検討を加える余地があると思われる。
7.県費捜査費について、県警は平成18年9月、再度の内部調査結果で不適正支出があったと認めた。本件でも再度の検討で新たな事実が判明するのではないか。
8.氏名不詳の被疑者につき、人物を特定するための捜査を行い、本件に関与したか否かを検討する必要がある。
9.いわゆる県警捜査費文書開示訴訟の控訴審判決において、平成14年当時、広く県警の組織的不正経理疑惑が存在していたとの指摘がある。 検察の真摯な捜査を望みたいところですが、北海道警で出た「不起訴不当」の再捜査の結果、06/9/29に再び不起訴がでて、06/10/5に札幌検察審査会に再審査の申立を行っております。
高知県警の問題では、検察が再度捜査して、真実が明らかになることを望みます。
・捜査費執行状況等一覧表(市民オンブズマン高知が入手したものを一部修正)http://www.ombudsman.jp/policedata/kouchinaibu.pdf
・高知県警 年度別・所属別捜査費執行状況一覧表(国費・県費)http://www.ombudsman.jp/policedata/kouchi12-16.pdf
・高知県警捜査費(国費)情報公開訴訟 高松高裁判決 06/9/29http://www.ombudsman.jp/policedata/060929.pdf
・高知県監査委員「監査結果報告書」 平成18 年2月22 日http://www.pref.kochi.jp/~kansa/toku.pdf
・高知県警「調査結果報告書」06/9/20http://www.i-kochi.or.jp/hp/kenkei/keimu/sousahimondai.htm
平成18年10月25日
審査申立人 森 武彦 殿
高知検察審査会
議決の要旨について(通知)
被疑者壬生澄雄外10名に対する虚偽公文書作成、同行使,詐欺被疑事件につき された不起訴処分の当否に関する審査事件について,当検察審査会は平成18年10月18日に議決しましたから,その要旨を別添のとおり送付します。
なお,あなた以外の申立人には送付しておりませんので,よろしくお取り計らいください。
添付書類
議決の要旨(1部)
平成17年高知検察審査会審査事件(申立)第13号ないし同第23号
申立書記載罪名 虚偽公文書作成・同行使,詐欺
検察官裁定罪名 虚偽公文書作成・同行使,詐欺
議 決 年 月 日 平成18年10月18日
議決書作成年月日 平成18年10月25日
議 決 の 要 旨
- 審査申立人(氏名) 森 武 彦
- 同 田 所 辨 蒔
- 同 高 橋 正 雄
- 同 松 岡 由紀彦
- 被 疑 者(氏名) 壬 生 澄 雄
- 同 不 詳(県警本部で捜査費の会計事務に係わった者)
- 同 川 村 誠
- 同 矢 野 敏
- 同 中 内 典 明
- 同 高 橋 努
- 同 中 矢 元 久
- 同 西 川 秀 樹
- 同 田 村 昭
- 同 小 林 弘 道
- 同 前 田 年 昭
- 不起訴処分をした検察官
- (官職氏名) 高知地方検察庁 検察官検事 蜂須賀 三紀雄
上記被疑者らに対する虚偽公文書作成・同行使,詐欺被疑事件(高知地検平成15年検第1−1643号ないし同1653号)につき,平成17年8月22日上記検察官がした不起訴処分の当否に関し,当検察審査会は,上記申立人らの申立てにより審査を行い,次のとおり議決する。
議決の趣旨
本件不起訴処分は不当である。
議決の理由
1 被疑事実の要旨
被疑者らは,本件当時,いずれも高知県警察本部捜査一課勤務の警察官で あったものであるが,共謀の上,平成14年4月4日から同年10月28日 までの間,42回にわたり,真実は情報提供者からの捜査協力や情報提供が なされていないのに,その対価等として支払ったもの,あるいは支払うもの のように装い,内容虚偽の公文書である「捜査協力費」「情報提供謝礼」等 の支出名目での請求申請書類を作成し,同県警本部の会計機関に対し真正な もののように装い提出行使して捜査費合計196万円の支払を請求し,同会 計機関の担当者をしてその旨誤信させて支出決定させ,捜査費名下に現金合 計196万円の交付を受けて詐取した。
2 検察審査会の判断
本件不起訴記録及び審査申立書等を精査し,慎重に審査した結果は次のと おりである。
(1)申立人らか入手した捜査費執行状況等一覧表(以下「一覧表」という) は,県警本部の内部資料ではないかという疑いは払拭できない。よって, 作成経緯を明らかにする捜査を行う必要があると思われる。
(2)検察官は,情報裡供者に対し,事情聴取をする必要性がないと判断し, 実施していない様子である。しかし,一人の擾供者に対しても面談等を実 施せず,真に提供料が支払われているか確諷していないのは納得できない。
(3)情報提供料を捜査員に交付する手順に関し,いささか疑問が生じる。ま た,情報提供者から得た情報が,捜査にどの程度反映されたか等も明らか にされておらず,検証の必要があると思われる。
(4)捜査費執行額について,平成12年度から急激に減少している理由を調 査することで,新たな事実を見つけられるのではないだろうか。
(5)検察庁での取調べの際,一部の被疑者について,研修中の県警職員が同席しているが、暗に被疑者に圧力をかけるため同席したとの疑いも拭えず、供述内容に疑問が残る。
(6)県の特別監査結果は,県費捜査費の執行について、「支出の実体がない と判断するもの,支出が不適正と判断するもの及び支出が不自然で疑念の あるものが数多く見られた。」と結論付けられている。国費捜査費につい ても,ほぼ同じ執行状況と考えられるのであるから,再度,検討を加える 余地があると思われる。
(7)県費捜査費について,県警は,平成18年9月,再度の内部調査結果で 不適正支出があったと認めるに至った。本件においても,再度,検討を加 えることによって,新たな事実が判明する可能性はあるのではないかと思われる。
(8)氏名不詳の被疑者につき,人物を特定するための捜査を行い,本件に関 与したか否かを検討する必要があると考えられる。
(9)いわゆる県警捜査費文書開示訴訟の控訴審判決において,平成14年当 時,広く県警の組織的不正経理疑惑が存在していたとの指摘がある。 以上の点を総合して判断すると,検察官の捜査には不足があると言わざるを 得ず,不十分な捜査結果に基づく不起訴処分には納得できない。 よって,検察官に再考と更なる捜査を要請すべく,上記趣旨のとおり議決す る。
平成18年10月25日
高知検察審査会
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