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北海道公安委員会に対する公開質問状

最終更新時間:2006年06月23日 18時56分34秒

北海道公安委員会に対する公開質問状

私たち「明るい警察を実現する全国ネットワーク」(以下警察ネット)は、平成16年10月に警察官、同OB及び弁護士らで組織された団体で、現場の警察官が安心して働ける職場環境を実現するため、全国で活動しています。

私たちは、これまでも警察官、OB、その家族(以下警察官等)の悩みごとについて個別に相談に乗ってきましたが、さる5月20日から28日まで全国9箇所で「警察官のためのなんでも相談」を開設し、今現在における警察官等が抱えている悩みの相談に応じたところです。

相談の中で最も多かったのは、時間外勤務手当等の支給に関する問題と職場におけるいわゆる「ノルマ」に関する問題でした。

これまでも、警察ネットに対して現場の警察官等から「幹部から過剰なノルマを示されている」などの苦情が寄せられていましたが、今回の電話相談でも同じような苦情が寄せられたのです。その概略はおおよそ次のとおりです。

「日常の仕事や警察内部で取り組まれる『職務質問強化月間』などの各種の月間等に際し、幹部から警察官個々に努力目標と称する具体的な数値目標が示される。それを達成するために過労死寸前まで時間外勤務を余儀なくされているが、数字の実績が上がらなければ時間外勤務手当も満足に支給されず、数字の実績を上げると署長が時間外勤務手当に一定額を加算したり、別に褒賞金が支給されている」といったものでした。

そもそも市民の生活の安全のために日夜その命をかけて働いているはずの現場の警察官に対し適正な時間外勤務手当が支給されない、あるいは時間外勤務手当等は、本来、稼働時間に応じて公平に支給されるべきであるのに、数字の実績を上げるため幹部によって現場の警察官に圧力を加えるための道具として使われているとすれば誠に憂慮すべき問題です。加えて、単に件数を増やすためのノルマは、安易な職務執行や不適切な職務執行を生み出す温床になる恐れがあり、警察が道民の信頼を失う結果にもつながります。

時間外勤務手当の問題については、平成16年3月16日の道議会総務委員会において、当時の道警本部の加藤猛雄会計課長が、蛯名大也議員(自民党・道民会議)の質問に答えて、「2003年度の(道警全職員の超過勤務は)一人平均42時間で、(時間外勤務手当の)支給率は38.4%。5年前は33時間で50.5%だったが、近年、犯罪や交通事故が増加し業務量が増えているおり、労働時間は増えている半面、予算の制約上から支給率は低下している」と述べています。

また、平成16年12月3日の道監査委員の要求監査結果の記者会見で北海道代表監査委員徳永光孝氏が「監査の課程において、現場の捜査員からは、多くの苦悩や改善を求める意見が出されている。その例として、時間外勤務手当の支給率が低いこと、各種手当の見直しを求めること、(以下省略)である。道警察においては、(途中略)職員の働きやすい職場の構築のために、現場の声に耳を傾け、改善等検討に取り組まれることを切に望むものである」と異例のコメントをしました。

このような事実は、前記した「警察官のためのなんでも相談」に寄せられた警察官等の相談内容が真実であることを裏付けるものです。    そこで、私たちは、道民の安全確保のため、また現場の警察官の労働条件の適正化のために、北海道警察を監督する貴公安委員会に対して、以下の質問をします。貴公安委員会の真摯な回答をお願いします。

なお、参考まで、末尾に元弟子屈警察署次長齋藤邦雄氏の「在職中の時間外勤務手当等の支給に関する体験」を添付します。


1 平成9年度以降平成18年度までの、「北海道地方警察職員の給与に関する条例(以下条例)「時間外勤務手当」、「休日勤務手当」、「夜間勤務手当」(以下「時間外勤務手当等」に関して

  • (1) 各年度ごとの予算額
  • (2) その積算根拠
  • (3) 各年度の支給率の推移
  • (4) 過去において、時間外勤務手当、休日勤務手当、夜間勤務手当、各予算で補正予算を組んだ事実はあるか。あれば、時期、理由、要求額、補正金額

2 支給方法について(各年度によって異なる場合は各年度ごとに)

  • (1) 各所属に対する予算配分の方法、配分額決定の根拠、事実上の決定者
  • (2) 各所属における時間外勤務等の実績把握の具体的方法
  • (3) 予算の「追加配分要求」の理由、要求先、方法
  • (4) 各所属における支給額を決定する実務上の決定者
  • (5) 各所属における支給額の決定方法
    • ア 職員個々の時間外勤務手当等における勤務1時間当たりの給与額(条例第21条)にそれぞれの時間数に乗じた額が支給されているか
    • イ 時間外勤務手当、休日勤務手当、夜間勤務手当はそれぞれ区分されて支給されているか
  • (6) 支給額の調整について
  • ア 予算との関係で全額支給できないときの調整方法に関する基準の有無、各所属における調整の方法と実態
  • イ 全額支給ができないときの職員に対する説明の有無

   

3 時間外勤務手当の支給といわゆるノルマの関係について

  • ア 貴公安委員会は、「努力目標」あるいは、いわゆる「ノルマ」という数値目標(以下「ノルマ等」)が、現場の警察官に示されている事実を把握されているのか、把握しているのであればその種別、内容等
  • イ 時間外勤務手当等が、「ノルマ等」とリンクされて支給されている事実を把握されているのか、把握しているのであればその方法、内容
  • ウ いずれも把握していないのであれば、前記2点について調査を実施するつもりはあるか

4 時間外手当等の支給に関する職員からの苦情などの有無及びそれに対する道警本部及び貴公安委員会がとった対応について

                                    以上


 添付資料

齋藤邦雄氏の在職中の時間外勤務手当等の支給に関する体験

齋 藤 邦 雄

私が

  • 釧路警察署防犯課長時代  (昭和 62年4月から平成元年3月まで)
  • 西 警察署防犯課長時代  (平成 元年4月から平成 4年 2月まで)
  • 旭川方面本部地域課次席時代(平成 9年4月から平成12年3月まで)
  • 弟子屈署次長時代     (平成 12年4月から平成13年 3月まで)

に行っていた「時間外勤務手当」等の支給調整は以下の通りでした。

1 所属への配分額と署(課)員への支給額の決定作業

所属への配分額は、方面本部警務課に実績報告をしても実績の30%前後の配分率でした。管理職の署(課)長や次席(長)に支給されることになっている「管理職特別勤務手当」の科目はありましたが、要求してもゼロ回答(管理職手当で我慢せよ、というところでしょうか?)でした。

署(課)員に対する支給額の決定作業は次のようなものでした。

私が警察署の課長の時には、警部補以下の課員(警察官と一般職員)の時間外勤務手当や休日勤務手当の支給額は、警部である私が副署長から示された支給額を勘案して、課員が申告した時間外勤務の実績と仕事の成果などを調整し事実上決めていました。次席(長)の時は、自分が署(課)の配分額の80〜90%を署(課)員が申告した時間外勤務の実績を勘案して調整して支給額を決定し、残る10〜20%は、署(課)長が調整額としてあらかじめ配分予算から控除して、その月に担当する仕事の実績を上げた者に支給額を上乗せして支給していました。つまり、時間外勤務手当の支給額は、仕事の実績とリンクされて運用されていました。

2 「休日勤務手当」の運用実態

休日勤務手当は、祝祭日に勤務する地域警察官が主な交付対象ですが、警察(方面)本部の計らいで、本来は休日勤務手当の支給対象ではない警察官や職員まで支給する予算が配分されました。地域警察官以外に支給するときは、あらかじめ休日に勤務を命じたように命令簿に記載して支給したのです。実にいい加減・適当で本部の匙加減一つでした。

休日勤務手当の1時間の時間外勤務手当の単価は給料によって個人差がありますが2,000円から4,500円くらいでした。だから地域警察官や三交替制勤務の警察官は、祝祭日に年次休暇をとる者は皆無に近かったのです。例えば2,000円×16時間(当直日)=32,000円が黙って給料のほかに加算されるのです。年配の地域警察官であれば4,500円×16時間(当直日)=72,000円という破格の手当が1回の当直勤務で加算されるのです。あまりにも金額が多かったので休日勤務手当が支給されない刑事・生活安全・交通・警備・警務・会計の職員からすれば『三交替制の地域警察官や交通警察官(交通機動隊や高速道路警察隊)ばかり優遇する休日勤務手当』は不公平感を増幅する最たるものでした。

私は、こうした不公平感をなくすため、旭川方面本部地域課次席、弟子屈警察署次長時代は、休日勤務手当の支給されない警察官には、休日勤務をしたように勤務命令簿に記載して休日勤務手当を支給したり、時間外勤務手当の支給額を底上げして、署(課)員の不公平感をなくすようにしていました。

本来はほめられたことではなかったのですが、そうして不公平感を排除しなければならなかったのは、あまりにも時間外手当の支給率が低かったためです。

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